お祓い求ム
縁起も景気も良いに越したことはない。ニュースを見ても景気の悪い話ばかりだし、せめて新年からは気分も新たに、と思うのは人情だが、どうも今年は春から縁起が悪かった。 ・・・・・・(~-_-)~ 僕の部署は製品開発部門だが、ある特定の製品分野だけは、ずっと人員が空席だった。一昨年にやっと担当者が見つかり、香港支社で仕事を取り仕切るようになって、ヤレヤレと思っていたら、去年の夏頃になって突然ガンが見つかり、退社してしまった。デキル奴だったから残念だが、仕方がない。 9月の中頃に新たに経験者を部長職で採用し、これで巧くいくかなと思っていたら左に非ず。一月も経たないうちに、「耐えられない」と言って逃げるように退社していった。最近の日本の若者なら知らず、40過ぎのオヤジが吐くセリフだから呆れて二の句が無い。 (大体において、これは本人に問題がある。僕は日本人だし、韓国式のダラダラした「なぁなぁ」のマネージメントは大嫌いだから、部下には一々細かい指示はしない。本人の自主性と能力で結果さえ出せば、仕事のやり方はもちろん、個人にかかわる部分には一切関与しない。訊いてくれば教えるが、何も言わなければ、全て分かっているものとして接する。彼は(否。多くの韓国人は)これが耐えられないらしい。一から十まで指示してやらないといけないし、私生活など個人的なことまでベタベタと干渉してやることが、逆に「情」があるという事になる。上司がかまってくれないから仕事が出来ないなんて、こんな理屈がまかり通るのは、世界広しと云えどこの国だけだろう) ~(-_-~)・・・・・ 11月初めに、また新たに部長職で経験者がやってきた。年齢は僕よりも4歳くらい上だが、組織上は僕の部下になる。前任のお坊ちゃんに比べて、こいつは大分横柄な感じで、自信もあるのだろうが、年下の、それも日本人の上司というのが気に食わない様子が態度から見て取れた。 前の会社では管理職だったかもしれないが、実務を与えざるを得ない。初めのころは、物知り顔で蘊蓄を垂れるだけだったが、例によって僕はゴールと期日を指示するだけだから、12月の中頃になって、ようやっと自分がやらねばならないことに気付いたらしい。休日も出勤してくるようになった。(僕は家が近いから、土日も大抵会社にいる場合が多い) テレビドラマなら、何事か起きる場合はそれなりのBGMが鳴るのだろうが、現実世界では音もなく、ただ淡々と起きるものだ。新年初日の1月5日。4時頃に、翌日の会議で発表する資料について、彼と簡単に打ち合わせをした。それが終わって、ものの10分ほど経っただろうか。トイレから若い部下の一人が駆け出してきた。 「梁部長が倒れました!」 比喩ではなく、文字通り「大の字」に倒れた。脳内出血だった。直ぐに救急車で病院に運ばれたが、あれから1週間。未だに意識がない。出血が多く、手術が出来ない状態だそうだ。聞けば、顔や頭が2倍くらいの大きさに腫れているらしい。 倒れた当日には、病院まで付いて行ったが、つい数時間前まで動いていた人間が、自発呼吸はあれど微動だにせず、半眼を開いたまま瞬きもしない状態なのは、何やら人形を見ている様でもあり、薄気味の悪い事だった。 もともと高血圧で、血圧を下げる薬も飲んでいたらしい。風体がオッサン臭かったから、最初はてっきり50は超えていると思っていたが、まだ40半ばだ。所謂「メタボ」という事になろうか。当日は朝から「頭が重いから、風邪をひいたようだ」と周囲には漏らしていたそうだ。 同情はするし、出来ることがあれば吝かではないが、為す術がない。それよりも、あのポストは何やら憑き物でもあるや知らん。今、冗談抜きで「お祓い」してもらおうかと思っている。 ところで、韓国に「お祓い」ってあるのかしら?