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カテゴリ:その他
今年の文化祭で発表した演劇『ロミジュリ Another』です。 =========================== 【第零幕】 突然だが、皆さんは時間、というものに、興味はおありだろうか? 過去と未来、そして今。 それは、変えられないものであり、また、かけがえのないものなのです。 たとえば、好きになってしまった相手が、お兄ちゃんだった。また、妹だった。お互いに惹かれあっているのに、その恋はいけないことと自負し、隠し、眼を逸らす。それでも、心の底で追い求め、気づけば、既にかけがえのないものになっている。お互いになくてはならないものになっている。 もし、あの時、兄に、妹に恋をしなければ…そして、その恋に気づかなければ…世界は、別の姿を現わしていたのかもしれない。 それでも起こってしまった恋は、仕方がない。気づいてしまっては仕方がない。 手を出してしまってからでは、もう遅い。 このように、過去とは変えることができないもので、また、未来、というものは変えることができないのです。 人生は、選択の連続、というように、その選択をしてしまってからでは、次の選択肢が出るまで未来は順応して動き、また、自分の選択をキャンセルすることもでない。 それが、時間の恐ろしいところ。 それでも、貴方達は、その選択によって、未来の軌道は変えることができるのです。 幸福とするか、絶望とするか。 それは、各々の手によって決められている。つまり、貴方達次第、ということです。 さて、これから始まる物語は、あの有名な『ロミジュリ』で、ロミオとジュリエットが、幸福に暮らしていた、という仮定の下で作られたものです。 実物とは多少異なり、また、実物の印象を壊すものですから、くれぐれも注意してください。 【第一幕】 それは、たった一日のこと。 幸せにロミオとジュリエットは新婚生活を送り、それはそれは見る者に嫉妬という感情を抱かせるほどにすざましいラブラブでした。 (し、仕方なくよ。だってロミが…私と……。あーもう、何でもいいじゃないのよ!ラブラブじゃないの!ロミが私のことす、…好きって言ってくれたんだもん。答えなきゃだめじゃない!そう、義務なのよ、義務。私がロミとこうしているのは、使命なんだわ!) とジュリエットがだれに対してか分からない弁解をします。 ――みんみんミラクル、ミクルンルン♪ 「おっと、メールが来たみたいだ。ちょっと待っててくれたまえ、マイハニー」 ロミオのちょっとアレな携帯メール着信音が流れ、ロミオは携帯画面をのぞきこんだ。 メールの文章を読んで、ロミオは少し頬が緩む。 ジュリエットはマイハニーという単語の余韻に少し浸りながらも、彼女のその鋭いロミオサーチ眼は、ロミオのそのホンの少しの変化に気づかないわけがなかった。 「ねぇ、ロミ。何でさっきから携帯見ながらニヤニヤしてるの?」 途端に不安になったジュリエットは勇気をもってロミオに訊ねた。少し静寂が流れます。 ジュリエットはさらに不安になり、再度、問い詰めた。 一方、ロミオは少し冷や汗をかきながら笑っておどけた。 「別に…に、にやけてなんかいないさ。ハ、ハハハハ…」 (あ、怪しいわ。何なの?私に言えないこと?何で私に隠そうとするのよ) ジュリエットはロミオが大好きだった。 (ち、違うわ!私、じゃなくてロミが、よ!) 公園にいるカップルや、ルックスだけで付き合っている学生交際とは、比べ物にならないくらい、その愛は根強い。 あれだけの苦難の末、手に入れた幸せである。 それを、他の誰かの介入によって壊されるのが怖かった。 だから、携帯を見てニヤニヤされてしまったときは、心が揺らいでしまうのだ。 深い愛があるからこそ、心配になり、すべてを知りたいと思ってしまう。 それなのに、ロミは誤魔化そうとしている。 ―――不安。怖い。この愛が、この幸せが、音を立てて崩れるのが、怖い。 「嘘!今、絶対にニヤけてた(だって、私がロミのこと間違うはずがない)」 だからジュリエットはその他者の介入を阻止しないといけなかった。 (……もし、もしよ。あり得ないけど…そのメールの相手が、アンナの人だったら、どうしよう) あれこれとネガティブ思考が駆け巡る。 ロミを信じたい。心の底から。 そんな彼女の気も知らず、さらにロミオは誤魔化そうと必死になる。 「な、何を言うんだ、マイハニー。この純粋で、純真な目が嘘をついているように見えるかい?」 「じゃぁ、携帯見せてよ。嘘、ついてないんでしょ?」 信じたい信じたい信じたい。 私がロミの一番でありつづけたい。 強欲な願い、だけど譲れない願いだった。 当然、見せてくれる。見せて、無実を証明してくれる。 信じたいのに、けれどもロミは携帯を見せることを拒んだ。 どうしてどうしてどうして? 私が好きじゃないの?愛想つかしたの? 「な、何よ。渡せないってことは…やっぱり嘘、ついてんじゃない」 ジュリエットの声は語尾がだんだん小さくなっていった。 「いや…だから…その…」 必死に言い訳を考えるロミオである。 (こうなったら強行手段ね) ジュリエットは決心し、その場で拳を握る。 「あ、あの、マイ、ハニー?」 くわっ! ジュリエットの目が見開いた、と思ったら、次の瞬間、ロミオの携帯はジュリエットのもとにあった。 一瞬何が起こったかわからず、現状理解を必死にするロミオ。 一秒、二秒。 三秒目、ロミオの甲高い叫び声が、城中に響いたのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年12月17日 20時51分46秒
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