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カテゴリ:小説A
002 私は空を見上げた。いつも見る、星空だった。 月は三分の二ほどは欠けていた。 私はいつもの道を歩く。 「ここも、もうすっかり変わったな…」 数年前、ここには電柱などなかった。 数年前、ここにはコンビニなどなかった。 数年前、ここには優しいおばあちゃんが経営していた駄菓子屋があった。 街は変わっていく。 たったひとり、私を残して…。 わかってたことだけど、それでも悲しい気持ちになる。 そういう気持ちになる度に、私は自分を叱咤した。 あのとき、覚悟は決まっていたはずなのに…。 空を見る。 「昔は、もっとたくさん、星があったのにな…。」 もう、何度めの夜空だろうか、そんなことをふと考えた。 ―――もう何年、この空を見続けてきたのだろうか? 003 「さて、これ、何だと思う?」 「星。」 望遠鏡から俺は目を離して、健一が差し出してきたクリスマスツリーのてっぺんに飾るべき装飾品を見て答える。 「星?」 「星。」 星と答えた俺を健一が残念そうな顔をして見つめたかと思うと、健一は目を見開いて 「こんな形の星などあるかぁぁぁぁ!」 叫びだした。 だって、ねぇ…? これ何って言われたら、星、としか答えれないじゃん…。 「じゃぁ、なんて答えればよかったんだ…?」 「誰が考えたのかわからないが、絶対にそんな形ではないのに、一般的に星型と言われている 形をしたクリスマスツリーの装飾品、略してDZI装飾品。」 「いやいや、なに、DZI装飾品って。」 「誰が考えたのかわからないが、絶対にそんな形ではないのに、一般的に星型と言われている 形をしたクリスマスツリーの装飾品。いやはや、君もまだその程度だったとは。」 あれ、なんか人間的価値が大幅にダウンした気がする。 「というわけで、咽が乾いた故、飲み物をかってくるんだ。」 「なぜに俺?」 「他に誰がいる?」 「お前。」 「愛だよ。」 「愛なのか?」 「愛なんだよ。さぁ、買ってこい。おっとコンビニに新登場のレモントマトがいい。」 そういって千円札を俺に渡す。 自分で買えよと嘆息しつつ、俺は千円札を受け取り、屋上を後にした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年03月08日 14時31分50秒
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