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2022.06.23
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第4章 ナイトジャスミン 13


 桐谷との話が弾んでいると、ブレックファースト・セットが二人の前に運ばれて来た。
 スリランカ料理と言うので、あたしは勝手にカレー料理かと思っていたら、ホットサンド風の小麦粉のパン生地に炒めた細切りキャベツが挟まれている料理が運ばれて来た。
 ドリンクはパイナップルラッシーだった。
 「これはマッルンと言う料理で、食べ易いでしょ?」
 「そうね、手掴みでも食べれそう。このキャベツはココナッツミルクとカレー粉で炒めたのかしら?」
 「ええ、マスタードも入っています」
 桐谷は、あたしに料理の説明をした。
 もうひと切れの方は、挽き肉の炒め物が挟まれていたが、こちらの方は何種類もの香辛料が効いていてスパイシーだった。
 「それは少し辛過ぎましたか?大丈夫ですか?」
 「ショーゴさん、話し方、変わってないよ!」
 「あっ、そうだった、ゴメン」
 桐谷は、苦笑いをした。

 「ところで、国際AIアカデミー研究所って何処に有るの?」
 あたしは桐谷に訊ねた。
 次回、桐谷と会える時が何時頃に成るのかを探りたかったからだ。 
 「研究所自体はロスに有るのでボクはそこで研究しているんだ。オフィスの方はニューヨークに置かれているんだけどね」
 「若くして、そこの所長さんか?ショーゴさんって凄いんだね」
 「いやいや、親の七光りって奴だから!この研究所は実はケント・マクガバンって言う人とボクの父が創立したんだよ」
 「それでも、研究者としての実力と実績ななければ所長には成れないよね?」
 桐谷は、両手を拡げてアイ、ドント、ノウのジェスチャーをした。
 「ボクの父は根っからの研究者で、その影響でボクもコンピューターに興味を持ったんだけどね」
 「じゃあ、お父さんがニューヨークのオフィスの方を?」
 「色々と事情が有って、今は、創立者の父とケントは研究所との関わりがないんだ。だからオフィスの方はケントの長男をバイスプレジデントに任命して任せている」
 「ふ~ん、なかなか複雑なのね」
 「あっ、申し訳ない!つい自分の事ばかり話してしまって」
 桐谷は恐縮してあたしに頭を下げた。


 「それは全く構わないよ。だけど折角、ショーゴさんと親しく成れたのに、次に会うのは来年のニコル祭かしら?」
 「いや、マリカちゃん、それは違うよ!実はこの後、一旦ロスに戻って準備をするけど、直ぐに日本に行くんだ」
 桐谷は初めて、あたしの事をマリカちゃんと呼んだ。
 「えっ?それじゃ、また日本で会えるね!」
 「うん、アイ―フの直轄研究所で、異次元の画期的なAIが作れる可能性を秘めた技術が開発されてね。その研究をロスで引き継ぐので日本に行く必要が有るって訳!」
 「その新技術って、もしかしたら機械学習を超えたと言う?」
 「ホント、マリカちゃんは何でも知ってるね?只々驚くばかりだ!」
 「最近、あたし、そのAIが搭載されたゲームのテストプレイをしたの」
 あたしは、その時の様子を喋ろうかと思ったが、話が長く成りそうなので止めにした。
 「何だって!そうなの?大袈裟ではなくマリカちゃんとは何か運命的な出会いを感じてしまうよ!ニコル祭を欠席しなくて本当に良かった!」
 「ショーゴさんは、そんな凄い研究をしているのに、ニコル会議には出席しないんだね?」
 「ボクはニコルクラブのメンバーだけど、ニコル会議のメンバーじゃない。ボクから見るとニコル会議のメンバーは、開発した技術を有料で提供するクライアントさんだからね」
 「成る程。バイヤー側はサプライヤーに手の内を晒したくないないって事か?」
 「その通り!」
 口直しのシャーベットを食べ終え、セイロンティーも残りが僅かに成ったので、桐谷との話も次の話題で最後にしようとあたしは思った。

 「形式的でもあたしはショーゴさんの研究所のエージェントだから、ショーゴさんが来日したらお試しであたしに何かミッションを依頼してよ!」
 「マリカちゃん、何て頼もしい事を!」
 「あたしはニコル祭が終わってから、何か国かを回る予定だけど、日本に戻ったらそのくらいの時間は取れると思う。ショーゴさんから依頼が来たら、ジェファーメンバーをバイトとしてコキ使ってやろうかな?ふふふ」
 あたしから、バイトでコキ使われるのはセキレイなのだが、彼の部下のナナシ001~003くらいなら。バイトに狩り出しても問題はなさそうだ。
 「もしボクからの依頼に、ジェファーメンバーを使う場合は、正規の報酬をちゃんと支払うから!心配しないで」
 「毎度あり~!ジェファーの日本支部は、諜報チームがメインなので、内容次第では、案外、役に立つかもよ?」
 あたしは茶目っ気たっぷり笑うと、ちろりと舌を出した。
 こんな小悪魔的な所作も、こうした軽装なら自然に行える事をあたしは初めて知った。
 「勿論、マリカちゃんの会社にも、会社名から推察すると経営コンサルタントの会社だよね?可能な限りボクがクライアントを紹介するよ!」
 「とても有難い申し出なんだけど、あたしはCEOと言う名のお茶汲み係だから」
 「ははは、マリカさんには誰も敵わないね!」
 あたしは、最後のフェアウェルパーティで桐谷とまた顔を合わせるだろうが、そこではゆっくりと話す機会がないと感じていたので、名刺を交換すると、日本での再会を誓い合って桐谷と別れた。

 自分の部屋に戻ると、フルーツの盛り合わせがテーブルに置かれていた。
 英語で書かれたカードにはホテル名が書かれていたので、恐らくホテルからのサービス品なのだろう。
 朝食にはココナッツミルクが入っていたので余り辛さを感じなかったが、次第に辛さで舌が痺れて来た。
 そこで、あたしは慌てて冷蔵庫からハイネケンの瓶ビールを出すと、それを一気に飲んで辛さを紛らわせた。
 その後、あたしは先刻まで一緒だった桐谷について考えた。
 勿論、桐谷にはドバイのニコル祭にあたしが参加する事が出来たから出会えたのだが、その事は別にしてスグルよりも先に桐谷に出会っていたら、あたしはどうしただろう?
 カップルとしての年齢的なバランスは悪くない。
 しかもあれだけハンサムで、頭脳明晰な上に高収入なのだから、桐谷に誘われたら、あたしはきっと尻尾を振って付いて行った事だろう。
 もし誘われなくても、あたしの全身全霊を賭して意中の人に成るべく努力をした筈だ。
 だが、既にスグルに出会ってしまっているあたしは、贅沢にも桐谷に恋愛感情を持つには至らなかった。
 極上のビジネスパートナーに巡り合ったと言う感覚だった。
 あたしは何故、15歳の少年にこんなにも心惹かれるのだろう?
 これまで幾度となく繰り返した疑問を改めて自問してみたが、答えは何時もの通り、好きなものは好き!だった。


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    Last updated  2022.06.25 00:24:18
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