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2022.07.05
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第5章 ドクターグリーン 9


 あたしとセキレイがホテルの中華レストランでランチを摂り終えた頃、キキョウからセキレイに連絡が入って、後、2時間程でスグルと一緒にホテルに戻るので、外出はしない様にとの事だった。
 勿論、あたし達に外出する予定はなかった。
 昨日はジムで汗を流してプールで泳いだ後、セキレイがあたしのガーディアンに成って、既に街をあちこち散策していたからだ。
 やがて彼らがホテルに戻ると、早速、スグルの部屋でクアラルンプールの報告会が開かれた。
 「やはり、アヤカ女史の行方を知っているのは、あの間宮麟蔵の忘れ形見で有る間宮佳恵嬢の可能性が極めて高い。アヤカ女史の逃亡を手助けしたのも彼女で間違いない様だ」
 「間宮麟蔵と言えば、あのマミヤインダストリーの創業者の?」
 セキレイがスグルに問い質した。
 「そう、あのマミヤインダストリーだよ。第2次世界大戦後、日本の重工業各社はGHQの指導で兵器の製造が制限される中、彼は米国籍を取得するとボストンに渡り、そこで通常兵器に特化した製造メーカーを興して成功を収めた」
 「御前、間宮インダストリーの武器は、インターミヤがブランド名ですよね」 
 「間宮麟蔵が米国に渡った頃は、戦勝国とは言え、米国の人々にはこれまで敵国だった日本に対するアレルギーが相当に残っていてね。彼は仕方なく間宮の間と言う文字をインターと読み替えて製品名にしたんだ」
 「確かにマミヤインダストリーが発表する武器は斬新な物ばかりでしたからね。御前もご存じでしょうが、特に自動小銃と手りゅう弾では独壇場だった時期が有りました!」
 「ええ、インターミヤJSセブンは、世界で初めての全自動射撃式機関銃でしたしね」
 セキレイとスグルの話のやり取りに、キキョウも加わった。
 「そうそう、過去の遺物だと思われていたカービン銃に独自のライフリングを施して命中精度が格段に高く成ったインターマミヤ・カービンファイヤーは、俺が聞いた話では、今でもコマンド系スパイの間では高値で取引されているらしい」
 「実はそのスパイの話なんだけど、マミヤインダストリーの子会社のマミヤインテリジェント社は、その裏側ではスパイ専門の機器メーカーとしてクライアントからの受注生産をしていた様なんだ」
 「あっ、御前、俺もその話はジェファーの訓練所で聞いた事が有りますよ」
 セキレイは、自分が知っている話が出たので嬉しそうな表情でそう言った。
 「それでも、御前がご自身で開発されて、ゲルシアとジェファーだけに提供されているフロリダ研究所のスパイ製品には、遠く及びませんけどね」
 「ははは」
 スグルはキキョウの言葉に、否定するでもなく肯定するでもない、全てを意に介さないと言いたげな明るい笑顔で応じた。

 流石にセキレイもキキョウも優秀なエージェントだけ有って、この種の話には詳しい様だ。
 それに比べてあたしは、彼らの話に全く付いていけなかった。
 やっぱり、客員エージェントの話は辞退しようかな?
 「ところでスグルさん、マミヤヨシエ嬢の話は何時出て来るの?」
 「ごめん、ごめん。前置きの話が長く成ってしまったね。ヨシエ嬢は日本の大学院に留学後、米国に帰国して23歳の若さで、そのマミヤインテリジェント社のトップに就任した」
 「それで、独身主義者として有名だった間宮麟蔵氏に娘がいた事が明るみででたんですよね」
 「そして、その4年後に悲劇は起きた!間宮麟蔵射殺事件だ」
 キキョウの話を引き取る形で、セキレイが物騒な事件の名前を言った。
 「えっ?あたし、そんな事件は知らないよ!日本人の有名社長が射殺されたって話なのに!」
 「それを知らないのは、ミサトさんだけじゃないよ。マミヤインダストリー社が自ら、間宮社長は心臓発作で亡くなったと発表したからね」
 「射殺って本当なの?」
 「本当だよ。凄腕のスナイパーが180m離れた場所から彼を狙撃して一撃で射殺した。一部のマスコミがそれを嗅ぎ付けたけど、何処かから圧力が掛ってそのスクープは揉み消されたんだ」
 スグルがあたしにその時の状況を説明した。

 「その頃は、今ほどSNSも盛んではなかったし、組織の人間ならどこの組織も口が堅いからな!一般の人が知らないのも無理はない!しかしもうあれから10年か」
 今度はセキレイがしみじみとした口調でそう言った。
 口が軽いインコが、組織の人間は口が堅いなんて言えるのか?
 「早いものだね。僕が事業を始めた年だったから良く覚えているよ!」
 そうだった、スグルは5歳で会社の経営に乗り出したのだった。
 「それで、ヨシエ嬢に残された遺産の中には、麟蔵氏が創業した2つの会社の全株式が含まれていたから、父親がいなくては事業の継続が難しいと判断した彼女は、その全てをゼネラル・アーマメンツ社に売却したんだ」
 「姫、ゼネラル・アーマメンツ社はそれまで中堅企業に過ぎなかったのに、それだけではないだろうが、マミヤから買い取った知的財産がヒット製品を生んで、今では全米で7位の利益を誇る大手の軍需産業に成長した」
 セキレイが、スグルの説明を補足した。
 「う~ん、子会社の間宮佳恵前社長は、父親の死は無念だっただろうけど、結果としては大金を得た訳ね」
 あたしの言葉は、そろそろ続きの話はディナーの時にでもと思っていた3人に、新たな話題を与えてしまった様であたしは内心、しまった!と思った。 
 「大金を得たヨシエ嬢のそれからの暮しぶりは質素で、既に過去に人に成っていたんだが、ここからがヤーイン財閥の新情報なんだけど・・・」
 「あのう、お話が盛り上がっている時に申し訳ないんだけど、これからあたしのニコルクラブ入会との関連性の話を聞く事に成ると思うので、その前に一度、頭の中を整理して置きたいから、続きはディナーの時にでもして貰えると有難いわ」
 「そ、そうだよね。実は僕達もそう思っていたところなんだ!だよね?」
 スグルの言葉に、セキレイもキキョウも大きく頷いた。


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    Last updated  2022.07.19 23:15:35
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