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2022.07.07
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第5章 ドクターグリーン 11


 「ねぇ、キキョウさん、今回は秘書のオブライエン女史を同行させてないけど、スグルさんは困らないのかしら?」
 あたしは、成田を出発した時から気に成っていた事をキキョウに訊ねた。
 「オブライエンさんは御前のビジネス面での秘書でして、今回はニコルクラブ関連なので、彼女が同行する事は有りません」
 「成る程、そう言う事か。それじゃ、彼女は目白の館でスグルさんのビジネスを切り盛りしていると言う訳ね?」
 「ええ、そうです。尤も、田宮さんの方が主に仕切っていますが。御前への報告と指示を仰ぐ役割も田宮さんが行っています」
 セバちゃんがビジネスの代行を?只の執事じゃないとは思っていたけど、やはりスグルが全幅の信頼を置くだけの人物だったのだ。
 「それにしても、オブライエン女史がいないのでは、スグルさんも身の回りの事とか何かと大変だね」
 「そうですね。ですから私に出来る事は、色々とお手伝いをしています」
 「そうかぁ?キキョウさんなら良く気が利くし適任だね。あたしにも何か手伝える事が有ったら遠慮なく言って頂戴ね」
 「有難うございます。それよりも姫、今回の任務は不明な点を幾つか残したままの見切り発車的な面が有ります。セキレイが付いてはいますが、どうか姫もお気を付けて下さい!」
 「分かったわ、十分に気を付ける。あたしなりに覚悟は出来ているけど、有難うね、キキョウさん」
 キキョウは、本当に他人に優しくて思慮深い素敵な女性だ。
 抜群の感性で常に先を読み、さりげないが奥深い気配りを行っている。
 その上、超が付く美人で、屈強な男共さえ瞬殺する事が出来ると言う。
 これ程完璧な女性が、他にいるだろうか?
 あたしが、そんな事を考えてボーッとしていたので、キキョウはあたしに一礼をすると自分の部屋に戻って行った。

 あたしも部屋に戻って、明日は何を着て行こうかと迷っていたら、セキレイから連絡が入った。
 明日の目的地は、シンガポールとマラッカの中間地点に位置するジョホール州のムアーと言う田舎町だそうだ。
 このホテルから車で約2時間半の距離なので、午前中に一度訪問したいので、朝9時にエントランスに集合する事に成った。
 朝が早いので、今夜は必ずモーニングコールを時計とホテルフロントのダブルで掛けておかなければ成らない!
 本当は間宮佳恵に会う前に、髪の毛の色も元のダークブラウンに戻して、目立たない様にして置きたかったのだが、この時間帯では美容室も開いていないので、今の髪で会うしかなかった。
 それも彼女が明日在宅していて、あたしに会ってくれた場合の話だったが。

 翌日、あたしがホテルのロビーに降りたら直ぐにセキレイがやって来て、あたしの手を引くと既にスタンバイをしていた車のドアを開けて、中に座る様にあたしを促した。
 あたしが乗せられた車は、7人乗りのメルセデスベンツGLSだった。
 この車とは別に1台のスポーツセダンが前方に停まっていて、恐らくゲルシアの案内人と思われる人物とジェファーの黒人の彼が乗車していた。
 あれっ?この車はトヨタ車じゃん!レクサスGSFか?
 スグルに出会ってから国産車に乗る機会が無かったので、異国の地で見る国産車にあたしはそこはかとない懐かしさを覚えた。
 レクサスGSFは、ベンツGLSにトラブルが発生した時の為に用意された車だろうが、サーキット走行にも耐えられるスポーツタイプなので、きっと逃走用での使用も想定されている筈だった。
 あたしがシートベルトを締め終わると、レクサスが先導車に成ってあたし達は目的地に向けて出発した。
 「ヒメ、ワタシのコードネームはアゲートです」
 成田から一緒に来たジェファーメンバーの白人の方が、自分のコードネームをカタコトの日本語であたしに告げた。
 運転席のゲルシアメンバーのコードネームはナッツだとの事だった。
 それからレクサスに乗っているジェファーメンバーの黒人の彼はジェード、運転席のゲルシアメンバーはコーンがそれぞれのコードネームらしい。

 ゲルシアメンバーのコードネームはどちらも食べ物の名前で、覚え易いと言えば言えるけど、流石に芸がないかな?
 それに比べてジェファーメンバーのコードネームは、アゲートは瑪瑙でジェードは翡翠と言う宝石の名前なので、ネーミングに拘りが感じられる。
 何れにしても、今回はあたしも同じミッションを持つメンバー同士なので、彼らも自分のコードネームをあたしに知らせた様だ。
 一方、あたしの方は、これからも皆からヒメと呼ばれるのだろう。
 何ならプリンセスでも良かったんだけどな?
 だが正確には、ヒメはコードネームではない。
 マルタイに対して匿名性を担保する為のニックネームに過ぎないのだ。
 ふふふ、ところがどっこい、君達、あたしを舐めたらイカンよ!
 あたしにはこう見えても、エージェントとしてマリカと言うコードネームがちゃんと有るんだからね!ふふふ、でもそれは秘密だけど。
 「姫、そこの店で小休憩するよ」
 セキレイがあたしに声を掛けた。
 その店はドライブインの1階が小綺麗なカフェに成っていて、飲み物を注文するとトイレも貸して貰えた。

 あたし達は、そこから進路を左に取ってマラッカ海峡の方向に車を走らせた。
 ここまでベンツの車体が大きいので怖さは感じなかったが、かなりのスピードで突っ走って来た筈だった。
 彼らはドライビングの訓練を十分に受けているので、ドライバーは涼しい顔で車を飛ばし捲くっていた。
 そのお陰で、小休憩を鋏んだにも関わらず、あたし達は予定した時間にムアーに着く事が出来た。
 ムアーは確かに小都市に違いはなかったが、街の中心部には10階建てくらいのビルが立ち並び、メインストリートの両側にはレストランや雑貨店なども開業している。
 そのメインストリートを抜けると、如何にも南方と言った風情の牧歌的な旧市街地に出た。
 そして、そこから更に10分程車を走らせた小高い丘の中腹に、間宮佳恵の隠れ家は有った。
 あたしは彼女に余計な警戒をさせない為に、ベンツの方は木立ちの中に待機させて、セキレイと二人でレクサスを使って彼女の家の玄関近くまで行った。
 車を降りると、あたし一人で玄関の呼び鈴を鳴らした。
 何度か鳴らしてみたが、中からは全く反応がなっかた。
 「留守みたいだな」
 レクサスから降りて家の周囲を一回りしてきたセキレイも、玄関を手で叩いてみたが、やはり人が出て来る気配はなかった。
 「仕方がないわね。昼からまた出直しましょう」
 あたしはそう言うと、第2班のメンバー達と一緒にムアーの街に一旦、戻った。


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    Last updated  2022.07.08 22:12:33
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