2010/05/18(火)10:04
ヒラタハナムグリ
一昨日、ベランダの椅子で一服していると、何か覚束ない飛び方をする5mm位の黒い虫が目の前にやって来た。殆ど空中を漂っている、と云う感じである。何時もの癖でつい左手が出て、隣の人の財布・・・ではなく、虫を捕まえてしまった。
何と、コガネムシの1種であった。恐らくハナムグリの類であろうが、見たこともない小ささ!! 最近は新顔の虫がよく現れる。これは大変結構なことである。
掌で捕まえたヒラタハナムグリ.体長5mm程度と小さい
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(2010/05/16)
さて、撮影を終わってデータをコムピュータに移そうとしたら、アリャ、知らない間に記録形式がjpg形式のBasic size(2896×1944)に変更されている。バッテリーを交換した時に何か妙なことが起こったのだろうか? 何時もはRaw形式(3872×2592)だから、画面の大きさが約1/2になってしまった。
・・・と云う訳で、今日の写真が画質が良くないが(最大幅750ピクセル)、何卒御寛恕被下度候。
小さくてもコガネムシはゴツゴツしていてカッコイイ
鞘翅の上側は名前の通り真っ平ら
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(2010/05/16)
保育社の甲虫図鑑で調べると、どうやらヒラタハナムグリ(Nipponovalgus angusticollis)らしい。コガネムシ科(Scarabaeidae)ヒラタハナムグリ亜科(Valginae)に属す。体長4~7mm、発生は4~8月、殆ど日本全土に分布するが、トカラ列島には別亜種を産するとのこと。
胸背、鞘翅、腹部の上側、或いは、写真の解像力が低くて良く見えないが、脚にも、爬虫類の様な鱗片がある。Raw形式で保存していれば、その部分だけ拡大出来たのだが、残念至極。
正面から見ると平らなことが良く分かる
一見眼の様に見えるのは触角
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(2010/05/16)
名前の「ヒラタ」は、鞘翅の上側が平らなことから来ているらしい。写真を見ると、確かに「平ら」である。
図鑑の解説には、前胸背板の2縦隆条は前半のみ顕著でわずかに湾曲、と書いてある。背面と正面からの2枚の写真を頭の中で合成すると、あまり明瞭ではないが、それらしきものが認められる。
また、前脛節の外歯は5~7とある。下の写真では6本認められるから、この点でも問題ない。
前脛節の外歯は6本認められる
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(2010/05/16)
このハナムグリ、所謂死んだ真似をする。実際はショックで気絶するのだそうだが、下はその最中の写真。ユスリカやチャタテムシ等は、手で捕まえた時に指に挟まれて潰れてしまうことが多いが、甲虫は頑丈な外骨格を持つからその程度は屁のカッパ、全く問題ない。だから死ぬことなど考えられない。
今日は残念ながら、真横から撮った写真がない。と云うのは、このハナムグリ、撮影中にいきなり飛んで逃げてしまったからである。普通のコガネムシやカブトムシは、先ずおもむろに?鞘翅を拡げてから、後翅を延ばして飛ぶ。しかし、ハナムグリ類は鞘翅を殆ど畳んだまま後翅を延ばして飛ぶことが出来る。だから、一瞬の内に逃げられてしまうのである。
「死んだ真似」を演じているヒラタハナムグリ
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(2010/05/16)
これまで紹介した「庭を漂う微小な羽虫」には、今日のヒラタハナムグリの他にも、「ハネカクシの1種」、「デオケシキスイ亜科の1種」等、結構甲虫が多い。勿論、数の上から云えば、アブラムシの有翅虫やコナジラミ、ユスリカなどが多いのだが、これらは浮遊しているところを捕まえても種類が分かる可能性が殆ど無いので無視されているのである。
実は、前から知っていたのだが、野村周平他:「皇居における空中浮遊性甲虫の多様性と動態-2004年度地上FITによる調査」(2006)と云う論文がある。FITとは「Flight Intercept Trap」の略で、垂直に設置したシートの下に固定液のトレイを置いたものである。シートに衝突した虫が固定液に落ちて其処に溜まる仕掛けである。これの論文に拠ると、何と、総計63科、393種もの「空中浮遊性甲虫」が皇居で記録されている。
このWeblogで言うところの「浮遊」とは、普通の移動の為の飛翔ではなく、何らかの目的があってゆっくり飛んでいる、空中を漂っている状態を指している。この装置では「浮遊」ではなく「飛翔」している甲虫も捕まってしまう筈だから、此処で言う「庭を漂う微小な羽虫」には入らない種類が沢山入っていると思う。それにしても393種とは大変な数である。一番多いのはハネカクシ科で76種、次がゾウムシ科52種・・・、「庭を漂う微小な羽虫」シリーズをやっていれば、ネタ不足に陥る心配は無用かも知れない。