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テーマ:日々自然観察(9964)
カテゴリ:昆虫(その他)
体長1.5mm、翅端まで2.3mmと相当に小さい。私の手の指は成年男子としては平均的な大きさなので、上の様な写真を載せれば、虫の小ささが実感出来るであろう。飛んでいるときの直径は2.5mm位、オボロな輪郭を持つ茶色の玉の様であった。
下の写真はやはり手で捕まえたチャタテムシである。最初の写真と同一種と思われる。御臨終とはなっていない様だが、触角の片側が折れている。やはり、手で捕まえるのはダメで、捕虫網を使う必要があることを実感した。 さて、このチャタテムシ、何科のチャタテムシであろうか。一見して、以前紹介した月桂樹の葉裏に居たチャタテムシとよく似ている。月桂樹の葉裏は吸汁性昆虫の排泄物等で汚れていて、翅脈相が良く分からなかったが、今回は下地や周囲が綺麗だから、翅脈がハッキリと見える。これならば、何とか科まで落ちるかも知れない。
しかし、チャタテムシ目の検索は、何れの検索表でも先ず触角の節数から始まる。その後も顕微鏡で見なければ分からない様な微小な構造の差異が問題となるので、幾ら翅脈が良く見えていても、等倍接写程度の写真では検索表を冒頭から引くことは出来ない。 其処で便法を使うことになる。先ず、写真のチャタテムシの前翅翅脈をよ~く見て、北隆館の圖鑑に載っているチャタテムシに同じ様な翅脈相を持つ種が無いかを調べる。・・・有った。マドチャタテ科のヒメマドチャタテとウスイロチャタテ科のクリイロチャタテが同じ様な前翅翅脈を持つ。後者の解説を読むと、クリイロチャタテは後翅の径(R)脈が中(M)脈と1横脈で結合していることでヒメマドチャタテと区別出来る、とある。ヒメマドチャタテでは径脈と中脈は直接接している。 2番目の写真を見ると、写真の虫では明らかに径脈と中脈は1横脈で結合している。この違いが科の違いなのかは分からないが、どうもこの虫はウスイロチャタテ科に属すらしい(ウスイロチャタテ科は以前はマドチャタテ科に含まれていた)。
実は、チャタテムシに関しては「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」と言う文献がInternetで入手出来る。珍しく日本語の文献である。しかし、残念ながらこの検索表では、最初の方で「爪の先端近くに歯を持つ」と言う顕微鏡的な特徴の有無により、マドチャタテ科の属す系列とウスイロチャタテ科の属す系列の2つに分かれてしまうので、この両者を直接比較することが出来ない。 そこで外国のサイトでチャタテムシ目の写真を調べてみる。・・・すると、写真のチャタテムシに翅脈相や外観が似ているのはやはりウスイロチャタテ科以外にはない。かなりいい加減だが、以下は、写真のチャタテムシはウスイロチャタテ科に属す、と言うことで話を進める。
前述のチャタテムシの文献を見ると、ウスイロチャタテ科にはEctopsocopsis属とEctopsocus属の2属しかない。しかも前者はクリイロチャタテ(E. cryptomeriae)1種だけである。この種は翅が赤紫色で、明らかに写真のチャタテムシとは異なる。従って、写真の虫はEctopsocus属に所属すると考えられる。そこで、次は検索表内のEctopsocus属を辿ることと相成る。しかし、此処でもやはり顕微鏡的な特徴の有無が問題となり、此処に載せた写真からの判断は困難である。 外国のサイトを見る限りEctopsocus briggsiと言うのが非常によく似ている。殆ど瓜二つと言う感じがする。東京都本土部昆虫目録を見てみると、この種は皇居で記録があるから、この辺りに居てもおかしくはない。しかし、外見が似ているからと言うだけで種を決めるのは些か無謀に過ぎる。Ectopsocus属は、九大の目録では4種だが、先の文献(此方の方が新しい)には未記載種を含めて8種が載っている。外見のソックリな種が他に居てもおかしくはないのである。 そこで此処では、Ectopsocus属の1種とした。本当は、ウスイロチャタテ科と言うのも余り確証が無いのだが・・・。
それにしても、チャタテムシが空中を浮遊するとは知らなかった。「庭を漂う微小な羽虫」、これは思ったよりも面白そうである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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