七代目ちぃのブログ

2018/10/14(日)03:08

西村京太郎「七人の証人」

西村京太郎(7)

全編が推理で彩られ、サスペンスに溢れる楽しい楽しいミステリ。 十津川警部は冒頭でいきなり誰かに襲われる。 気が付くとそこはどこかの無人島で、十津川の他にも七人の男女が連れて来られていた。 島には七人の関係する街がそっくりに造られていた。 訳も解らず戸惑っていると、一人の男が猟銃を持って現れる。 一年前、七人が証人として行われた裁判で、強盗殺人の罪で有罪判決を受け服役中に病死した被告の父親だ。 被告は一貫して無実を叫んでいたものの、七人の証言によって有罪となった。 納得のいかない父親が事の真偽を確かめる為に私設法廷を開いたのだ。 十津川は無関係の第三者の意見の為に連れて来られた。 七人の証言は一見決定的なものであったが、父親はそれぞれの矛盾を見事に指摘していく。 それによって証人達が自分にとって都合の悪い事や見栄の為、偽証していた事が明るみに出る。 父親の指摘は抜群に論理的で、本格ミステリとしての愉悦を味わう事が出来る。 しかしそうは言ってもまだまだ犯人は正しく被告であったと思われ、証人達は犯人に対して強い態度で判決の正しさを訴え、正しい証言をしなかった自身の非を認めない。 これが最高に気分が悪い。 七人が七人共にゴミクズなのだ。 犯人は被告であった可能性もそうでなかった可能性もあるとして中立の立場を貫く十津川でさえ七人に辟易としてくる程であるから、それをただ眺めるしかない読者にとっては堪ったものではない。 そんなこんなしていると事件が起こる。 証人の中の一人が殺されるのだ。 十津川は言わずもがな証人達は互いにほぼ無関係で、当然動機の面から父親が疑われるが、彼が殺したという証拠は無い。 そうしてまた一人、また一人と被害者は増えていく。 猟銃を突き付けられている人の中に犯人がいる可能性・・・東野圭吾「仮面山荘殺人事件」も同じような魅力的な謎を扱ったが、解決はこちらの方が断然良い。 十津川が導き出す二つの事件の真相は論理的で見事なものだった。 論理を贅沢に楽しめる最高の一冊である。

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