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2018.10.15
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カテゴリ:海外ミステリ
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乱歩が編んだ傑作集を新訳で年代順に再編集したもの。
まさに「傑作」の名に相応しい作品群である。
特に始めの三作は素晴らしい。
中でもコリンズの「人を呪わば」をベストとしたい。



 エドガー・アラン・ポー「盗まれた手紙」
探偵小説の始祖による一編。
世界初の名探偵C・オーギュスト・デュパンの活躍譚の一つで、中でも最も評価の高い作品である。
或る手紙が盗まれた。
被害者は犯人が解っているし、犯人も亦被害者に知られている事を知っている。
取り返すよう極秘裡に依頼された警視総監は犯人の家を徹底的に捜索するも、件の手紙は一向に見つからない。
デュパンが導き出した手紙の在処は今では当たり前になっている盲点で、このパターンを創り出したのは本当に凄い。

 ウィルキー・コリンズ「人を呪わば」
世界で最初で最大にして最良の推理小説で有名な著者の名短編。
幻想、怪奇、恐怖、不可解等の特色を持っていたミステリに「滑稽味」を加味した最初の作品。
アントニー・バークリーがまだ生まれてもいない頃にこれをやっている。
抜群の一人称と書簡体の使い方だ。
今日の叙述トリックの隆盛の礎とも言えてしまえるのではないか。

 アントン・チェーホフ「安全マッチ」
これまた凄い。
コリンズのものと近いバークリー的作品だ。
徹頭徹尾「所詮は古い時代の作品、論理性に乏しい」と思って読んでいたが、最後でひっくり返された。
かなり無理があり現実味に乏しいトリックであるが、この時代にこのパロディ精神は驚愕の一言。

 アーサー・コナン・ドイル「赤毛組合」
ポーが産んだミステリを世界の潮流にした男。
ミステリはドイルによって市民権を得、そこから短編ミステリの黄金期が始まった。
本作はSirの最高傑作である。
訳の解らない出来事が起こり、それがとても繋がりそうもない意外な事件へと繋がるという型のミステリがあるが、それを俗に「赤毛組合のパターン」等と呼ぶ。
この魅力的な形式を創り出した功績は計り知れない。

 アーサー・モリスン「レントン館盗難事件」
意外な犯人もの。
探偵小説はその始まりであるポーの「モルグ街」からして、反則級の意外な犯人ものであったが、これもまた凄い犯人を創出したものだ。
犯人設定だけなら笑ってしまうようなものだが、三つの事件現場全てに何故かマッチの燃えさしが残っているという魅力的な謎によって、論理性が加味され物語をより奥行きのあるものにしている。
ストランド・マガジンに於いて、ホームズの死んでいる間を埋めたのは伊達ではない。

 アンナ・キャサリン・グリーン「医師とその妻と時計」
今では誤りとされているが、一昔前まではこの人が世界初の女流探偵作家であるとされてきた。
亦、世界初の女性の探偵役を描いた人でもある。
処女作「リーヴェンワース事件」がベストセラーとなり、探偵小説の母として一躍時の人となった氏であるが、今では歴史的価値だけが語られ、その著書は殆ど顧みられる事がない。
そんな彼女の短編小説であるが、隣家の銃殺事件の犯人であると自供する盲目医師の話である。
自分が音を頼りに撃ったと自供するが、動機は無く気の迷いとしか思えないと言う。
医師が犯人である証拠は何も無く、警察は気が狂ったのではないかと推察する。
謎は非常に面白いが、解決は本格ミステリとしては尻窄みだった。
人物をよく描いた作品ではあるが、人物を描く事に偏り過ぎてミステリを疎かにしている気がしないでもない。
とは言え謎の設定は巧いので、機会が有れば氏の他の著作も読んでみたいものである。

 バロネス・オルツィ「ダブリン事件」
本書で初めての二十世紀になってからの作品で、オルツィ女史の創造した有名な安楽椅子探偵「隅の老人」の活躍譚である。
厳密に言うと安楽椅子探偵とは言い難い部分もあるのだが、世界に安楽椅子探偵という概念を広めたのは間違いなく彼女だ。
本作ではダブリンで起こった殺人事件と遺言状偽装事件が描かれている。
これまでの構図がひっくり返る最後は見事な出来。

 ジャック・フットレル「十三号独房の問題」
アメリカが産んだ探偵作家と言えばポー、ヴァン・ダイン、カー、クイーン等が有名だが、この人も忘れてはならない。
氏が創出した名探偵こそがかの有名な思考機械で、本作はその活躍譚の第一作目。
死刑囚の収容される独房から、果たして脱獄は可能かという実験に、思考機械が一週間の期限で挑む。
持ち込むのは靴、靴下、ズボン、シャツ、歯磨き粉、五ドル紙幣一枚、十ドル紙幣二枚。
そして、靴は毎日磨いて欲しいという。
思考機械の狙いは全くもって訳の解らないもので、これでどうやって脱獄出来るのかとわくわくさせられる。
いざ収監されると、ペンもインクも無い筈の独房から手紙が出されたり、一枚しかない筈の五ドル紙幣が何枚にも増えたりと、魅力的な謎が幾つも現れる。
そうして一週間の期限の最終日、思考機械は悠々と脱獄してしまった。
刑務所長や友人達を招いた晩餐会で語られる真相はトリックがふんだんに使われためくるめく脱出劇で、現実にそんな事が出来るか甚だ疑問ではあるものの、思考機械の名に恥じない巧妙なものであった。
因みに著者は三十七歳の若さでこの世を去っている。
あの「タイタニック号」に乗り合わせ、海に沈んだとの事である。
妻は救命ボートに乗せられたらしいが、自身は間に合わなかったという。
そこからも脱出出来ていれば、まだまだミステリの歴史に燦然と輝く傑作を残していた筈だ。





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最終更新日  2018.10.15 07:41:45
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