奇跡的な月曜日

2006/09/14(木)23:38

診断書到来

 吐き気に襲われることもないし立ち上がりざま眩暈が起こってふらつくこともない。こうして向えた禁酒三日目の朝は昨日よりも軽快だ。ただし夜中に何度も目が覚めるのは相変わらずで眠りそのものがもともと浅いからできればもう少し眠くなくなるまで寝ていたいとは思うが、奴隷の身分ではそうも言っていられない。  働き出しても終始快調だった昨日とは違って今日は、朝の眠り足りない感覚を一日じゅう引きずっていた。  今週の月曜から職場が変わった。繁華街に程近い八重洲から、新興ビル群の建設が進む臨海地区に事業所ごと引っ越した。最寄り駅でいうと「品川シーサイド」という洒落た名前がついていて、オフィスビルも周辺施設も真新しくデザイナーズチックだ。しかし名前と外観だけで中味はほとんど何もない。サラリーマンのための居酒屋とOLのためのパスタ屋と、あとはコンビニと歯医者だけあればいいだろう的な、薄っぺらい都市計画に基づいて設計されたような「シーサイドフォレスト」の約中央には、複合娯楽施設「ジャスコ」が寒々と君臨している。当然、ジャスコ食品売り場のフードコートには、サラリーマンやOLらが大挙して群がる。全てがお仕着せで安っぽくて白々しくて、もの悲しくて腹立たしい。コンクリに無理やり植えつけられた樫の木は弱々しく揺れて邪魔なだけで、どこをどう見たらフォレストなのかさっぱりわからない。  そんな僻地というか刑務所のようなところに隔離されている上に、真新しいオフィスビルのペンキが発する化学物質によってアレルギーが出そうになってただでさえイライラして疲れている。 一日中眠いのがこのお寒い「品川シーサイドフォレスト」のせいなのか禁酒のせいなのかはまだ自分では判断がつかない。とにかく一日中ボーっとしていて夢の中にいるようだった。  仕事が終わった後の楽しみはビールではなくコーラを買うことだ。いつからコーラを飲まなくなったのだろう。たぶんビールを飲むようになってからだ。家に帰ってまっさきに飲む飲み物は、とりあえず炭酸が入っていて喉越しがさわやかであればコーラでもいいらしいということに気付いた。最近はいろんな種類のコーラが出ているから、自分に合った銘柄を選ぶのも楽しみの一つ。もちろん炭酸であればいいという点では、カナダドライでもファンタでもいいに違いない。楽しみはつきない。  郵便で診断書が送られてきていた。確かに肝臓の悪性物質を示す数値は平均より高かった。高かったが、なんのことはない前回や前々回の検査の数値とさほど変わらない結果ではあった。そういえば同じような調子で再検査を促す通達が再三にわたって来ていたような気がする。それをことごとく無視して生活を改めなくても、高レベルの数値が並行してゆくだけならなにも深刻に考えなくてもよかったのだ。  しかしきっかけはきっかけとして一度禁酒を始めた以上、再検査の数値レベル減少を目的としてそこまでがんばってみるのも一つの挑戦である。しかも思ったほど苦痛ではないから、あわよくば毎日飲まなくてもいい身体に変われるかもしれないし。  若い頃は漠然とした不安や弱さや寂しさを抱えていて、それを紛らわす技術も経験も知識もなくて、酒に頼ることで自分が強くなったような気持ちになれることもあって、不安を抱えるたびに飲みすぎてそれが習慣化していった、と仮定してみると、今は若い頃ほどの不安も不満もなくなってきているのか、あるいはそういった負の感情を受け入れられるようになってきたのかどうなのかとにかく、精神的依存面はすでにクリアされていると思われる。 あとはこの「ものすごく眠い」という症状が、肉体的依存によるものなのかどうなのか、見極められるものなのかどうなのか。 ちょう眠くなってきた。

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