ザビ神父の証言

2011/01/20(木)21:06

アリゾナの銃撃事件を考える (3)

社会風俗(2014)

アリゾナの銃撃事件を考える (3) ギフォーズ下院議員の襲撃事件は、アリゾナ州で起きました。彼女はアリゾナ州選出の議員ですから、当然といえば当然なのですが、そう割り切ってしまっては先が見えません。 ここで、リーマンショック後のアリゾナ州の状況を検討してみましょう。最近日本のマスコミも少しづつ取り上げるようになってきたのですが、米国の財政状況は、中央政府だけではなく、州財政もまた極端に悪化している州が増えています。私も昨年カリフォルニア州の置かれた大変な状況を、少しだけ記しました。 日本の場合も中央政府だけでなく、地方自治体の財政状況もひどいことになっているのは、北海道夕張市の例以後、かなり明るみに出されてきました。米国も似たような状況にあるのですが、1つ日本とは決定的に違っている点があります。 それは中央の財政と州の財政が、互いに完全に独立している点です。地方交付税とか、中央からの補助金というシステムは、米国にはありません。これは現在休載中の「19世紀のアメリカ」のシリーズの序章に記したことですが、合衆国建国のいきさつに原因があります。出来るだけ地方即ち州の権限を侵さない、緩やかな連邦制を目指すという合意でスタートしましたから、財政自主権は州にあり、州の権限を侵さない範囲で連邦政府の徴税権が認められたのが、米国の租税制度でした。 ですから、財政難に陥った州は、中央政府による救済に期待を寄せることは出来ず、自助努力で財政難を解決しなければならないのです。 そこでどうするか。それが大変ドライなアメリカ的やり方なのですが、出来ないから仕方がないとばかりに、住民サービスその他、お金の掛かることは、次々に縮小または廃止しているのです。 学校の先生、警察官、消防士、清掃作業員などを、バサバサと削り、児童や生徒は学年ごとに日替わりで登校するため、1人の子どもが受ける授業は週に2日だけといった状況になっています。街路にはゴミが溢れ、警官不足による犯罪の増加と続きます。 それだけではありません。年金などの社会保障も大幅に削られています。さらには州議会や州庁舎といった州の資産も次々に売却し、売却先からリース契約で借り受けて、業務を遂行する体たらくなのです。 もちろん、病院や医療も例外ではありません。銃撃犯のロフナーも、アリゾナ州の精神医療サービスに対する予算が、大幅に削られたがために、精神科医によるカウンセリングが「受けられなくなっていたというのです。信頼する医師と面談することも出来ないことから、不安心理を募らせたロフナーは、テレビやネットを通じた悪魔の呼びかけに、大きく心を揺さぶられたであろうことが、推察できます。 リーマンショック後の米国の現状が、今回の事件の底流として横たわっている。このように思えてなりません。                                続く

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