映画「ALWAYS 三丁目の夕日 '64」を観ました
昨夜(2月10日)、映画「ALWAYS 三丁目の夕日 '64」を観ました。 前作「ALWAYS 続・三丁目の夕日」について、私自身が拙ブログでどんなことを書いていたのだろうと、カテゴリ「西岸良平」をクリックしましたら、2007年11月26日に観た映画「ALWAYS」の続編についての感想が最初に出てきました。その感想では、「妻と一緒に外出するときなどは、前をスタスタと歩く彼女の後姿を追いかけるのにいつも一苦労している始末です」と書いており、私の足腰が弱っていることと関連させて涙腺も弱っているためか「泣かされっぱなしでした」とコメントしています。 それから4年以上たって映画「ALWAYS」シリーズの第3作目を観たのですが、私は2008年4月に大病し、足腰と涙腺はますます弱まったためか涙を流し続けておりました。特に鈴木オートの六子ちゃん(堀北真希)や茶川家の淳之介(須賀健太)の鈴木家や茶川家から巣立ってそれぞれの新たな人生に飛び立っていく行く姿には滂沱の涙を流してしまいました。上映時間が2時間20分以上もあったのに、映画に見入って(魅入って)しまい、私にはこの映画の上映時間がとても短く感じられました。 この映画は前回までの作品と同様に安心して観られる予定調和的なハッピーエンドものなのですが、前作で川渕康成(小日向文世)が茶川竜之介(吉岡秀隆)の書いた作品「踊り子」を批評して、それがハッピーエンドの終わっていることに対し、「現実はこうはいかない。願望だな。実に甘い」と痛烈に批判していました。そうですね、確かに川渕康成の言う通りでしょう。しかし、だからこそ映画では登場人物の幸せな笑顔を観たいと観客は思うのですね。この映画の観客は夕日町の鈴木オートや茶川商店という架空の空間で演じられるドラマに一時ではありますが心を大いに癒されているのですね。 ところでこの映画は「幸せとは何か」ということを真正面からストレートに問いかけていました。私のような足腰も涙腺も弱ったポンコツおやじには、「幸せとは何か」なんて冗談めかしてしか答えられない気恥ずかしくなるような問いかけなんですが、しかし映画の登場人物たちの「幸せ」な姿や「幸せ」を求める言葉に自然と納得させられましたよ。茶川ヒロミ(小雪)や鈴木トモエ(薬師丸ひろ子)は愛する夫たちのそばにいるだけで幸せそうですし、六子ちゃんが好きになった菊池医師(森山未来)は治療代も払えないような貧しい人々のために無料診療を行うことに喜びを感じており、淳之介くんは茶川竜之介(吉岡秀隆)から「小説家なんか志しても俺のように苦労するだけだぞ」との言葉にも「僕から書くことを奪わないでください!!」と叫び、大好きな小説を書き続けようとします。 しかし、同じ映画のなかで宅間先生(三浦友和)が「お金や出世が幸せじゃない」とも言っていましたが、それは逆に現実社会では「お金や出世だけが幸せだ」「いい学校に進学していい会社に就職することが幸せだ」とする考えが当時すでに蔓延しているからですね。映画のラストの方で、鈴木オートの社長(堤真一)が六子ちゃんの結婚式の後、夕陽を見上げながら、明日を担う若い世代の未来を想う場面が出て来ましたが、映画でその若い世代として描かれているのが六子ちゃんや淳之介くん、それに鈴木オートの一平くんたちです。彼らは私と同じ戦後の第一次ベビーブーム時代に生まれた団塊(だんかい)の世代です。彼らの親の世代が三種の神器として家電の白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫を持つことに「幸せ」の目標を置き、それがさらに新三種の神器としてカラーテレビ、クーラー、自動車 の耐久消費財を持つことに「幸せ」の目標をアップさせて頑張ったように、彼ら団塊の世代も「揺りかごから墓場まで競争だぞ」と脅かされてお互いに競い合いながら親たちと基本的には同じ価値観で社会の坂を上って行きました。でもその坂の上には何があったのでしょうか……。 おっと、私には似合をないようなことを考えてしまいました。それより、団塊の世代の私にとってこの映画のもう一つの楽しさは、やはり1964年に開催された東京オリンピックに沸く人々とその時代の風景が描かれていたことです。特に女子バレーボールの日本とソ連の決勝戦のテレビでの実況中継に熱中する人々の姿にはなんとも言えぬ懐かしさを感じてしまいました。その頃は高校生だった私もこの決勝戦の実況中継を固唾を呑んで見守ったものです。また学校ではある先生が授業時間にソ連のルスカル選手の強烈なスパイクをしのいで金メダルを獲得した日本選手の奮闘ぶりを熱く語っていたことも懐かしく思い出されました。しかし、映画では決勝戦開始直後に茶川ヒロミの陣痛が始まり、バレーボールの試合どころではなくなってしまいます。でも、ヒロミが無事に出産したとき、夕日町のみんなが万歳をして喜んでいましたが、前回の映画にも出てきた中島巡査(飯田基祐)がパトロール中にその声を耳にして「日本が勝ったんだな」とつぶやいていたのもとても印象的でした。