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カテゴリ:ペットボトル
 
前回の続きです。

インターネットを検索すると、ペットボトルに関する間違った内容が相当広がっているのがわかります。具体的には、
「ペットボトルに熱湯を入れると環境ホルモンであるビスフェノールAが溶け出す」
「ペットボトルを繰り返し使用すると発ガン性物質であるDEHPが溶け出す」等々。
最初に書いておきますが、上の二つは全くのデタラメです。
上に関しては前回書きました。

下に関してはおそらくGIGAZINE、
「水筒」を選ぶとき、どのような点に気をつけるべきなのか? 2008年08月18日

--ここから記事引用--
(略)
気をつけるべきポイントの詳細は以下から。
How To Choose A Safe Reusable Water Bottle. | The Good Human

最新の研究によると、塩素殺菌された水が赤ちゃんの心臓病の原因になるとされているとのこと。そのため、水を入れる水筒の選択もちゃんと考えた方がよい、と。

まず最悪の水筒から。最悪の水筒とは、使い捨てのペットボトル(ポリエチレン・テレフタレート)。

この種の素材は繰り返して使用するとDEHP(フタル酸ジエチルヘキシル)というものが溶け出し、発ガン性物質である可能性があるとのことです。
(略)
--ここまで--

この記事もやっぱりおかしいです。DHEPは医療用プラスチックなどの可塑剤として使われている物質ですが、ペットボトルの可塑剤として使われた例はありません。(そもそもペットボトルには可塑剤は入っていないはず、前回参照)

どう考えてもおかしいということで、記事中のリンク先の The Good Human というページ How To Choose A Safe Reusable Water Bottle. | The Good Human (GIGAZINEの記事はリンク先の英語の記事を翻訳したもの) を読んでみました。その記事でもやはりDEHPがペットボトルから出る、と書いてあります。この点に関してはGIGAZINEの記事に翻訳間違いは無いようです。

How To Choose A Safe Reusable Water Bottle. | The Good Human

--ここから記事引用--
(略)
The worst kind of water bottle is the kind that you only use once - the PET (polyethylene terephthalate) bottle that you find in grocery stores, gas stations, etc, that is used for water, soda and juice. This kind of plastic has been proven to leach DEHP (Bis(2-ethylhexyl)phthalate) after repeated use and is a probable carcinogen. They can also harbor bacterial growth inside any cracks and crevices inside the bottle, which cannot be too good for your health either!
(略)
--ここまで--

繰り返し使用すると発ガン性物質が出る、の部分にまたまた学術論文がリンクされています。こうなったら行ける所まで追いかけようと、この論文も読んでみます。(有料・・・・orz)

The plasticizer market: an assessment of traditional plasticizers and research trends to meet new challenges
Mustafizur Rahman and Christopher S. Brazel, Progress in Polymer Science, Volume 29, Issue 12, December 2004, Pages 1223-1248


これも査読付きの学術論文です。いろいろな可塑剤の産業利用や安全性に関して述べています。しかし・・・いくら読み進んでも、ペットボトルからDEHPが出るなんてことは、全く書いてありません

で、いろいろ調べ回った結果をやっぱり2chに投下
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1220789437/l50 (DAT落ち)

--ここから--

ここから、適当に検索して以下のことがだいたいわかった。
(1) 2001年に、アイダホ大のD. Lilyaというマスターの学生さんが、
「繰り返し使ったペットボトルからDEHAとDEHPが検出された」という卒業論文を書いた。(卒論なので査読なし?)
D. Lilya, Analysis and risk assessment of organic chemical migration from reused PET plastic bottles, College of Graduate Studies, University of Idaho, Moscow, 2001.

(2) この論文に関しては、「可塑剤として使われてないのになぜ検出されるんだ?」という疑問が出て、Swiss Federal Laboratories for Materials Testing and Researchのグループが追試したところ、(これも査読なしのレポート)
確かにDEHAとDEHPは検出されたけど、対照試料として用意した水からも同レベル検出された。つまりバックグラウンドレベルだった。ペットボトルからのDEHAとDEHPの溶出は無い。
Kohler M et al. 2003. Migration of organic components from polyethylene terephthalate (PET) bottles to water. Laboratory of Organic Chemistry. Swiss Federal Laboratories for Materials Testing and Research. Unpublished.
http://www.sodis.ch/files/Report_EMPA.pdf

--ここまで--

結論、ペットボトルからDEHPは溶出しない。

大本の卒論が衝撃的だったので、たちまちインターネット上で話題になった。検索するといまでも間違った卒論に基づく記事が多く見られます。間違いであるという検証は学会で認知されたにもかかわらず、間違った情報が未だに漂っている、というわけです。

しかし、今回は件の The Good Human の記事があまりにも酷すぎる。DEHPが出るという記事の参照として全く関係ない論文を引用している。長い論文ですし、何より有料ですので確認する人はあまりいない、非常に悪質だと思います。インターネット上の記事など、内容確認する読者などいないと考えていたのか?

また、前回も少し触れましたが、このページを転載、翻訳するにあたり、報道機関なら信憑性を確認するべきでしょう。私のような素人でもソースのソースにアクセスできるのだから。英語だからとか有料だからとかは理由にならないでしょう。

で、こういうインチキの記事を読んだ普通の人はどうするか? さすがに英語を読めとか有料のソースにアクセスせよ、というのはあまりに無理な話だとも思います。

そこで、記事にコメントつける、自分で記事を書く、という際には、最低限ソースが日本語でしたら読んでみる、リンク先も日本語だったら読んでみる、というくらいは実行してみてはどうかと思います。リンク先にはそんなこと書いてないぞ、とかリンク先のコメント欄で記事が間違いだと言うコメントがいっぱい付いているぞ、等々の情報が得られることが多々あります。前回紹介しました中央日報のデタラメ記事でも、コメント欄にこの記事はおかしいというコメントが多くつけられていました。

インターネット上では間違った記事でもそのまま漂流しやすいわけですので、間違った情報を放流しないように気をつけたいものです。 (むずかしいけど)

注) 本記事では、DEHPが毒として有害か、環境ホルモンとして有害か、には特に言及しません。





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最終更新日  2015.11.03 17:56:27
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