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2007/04/25(水)07:58

ミツバチの失踪@アメリカ 続報

米国のミツバチが原因不明の大量失踪をとげている。 3月3日にブログに書きましたが http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200703030001/ 4月24日の『ニューヨーク・タイムズ』紙に続報が載っていた。 米国にはもともと 240万にのぼるミツバチのコロニー(女王蜂を戴く群棲)がいたのに、 いまやその4分の1以上が消滅。 専門家は colony collapse disorder と名づけていて(訳せば「群生崩壊禍」)、謎の原因をいまだに究明中なのだという。 生物の教科書で 「パスツールが実験で実証するまでは、腐敗の理由が細菌のはたらきだとは知られていなかった」 といった記述を読むと、 なぜそんなことがごく近代になるまで分からなかったのかと不思議な気持ちにもなるのだが、 なんのことはない、ミツバチ失踪の原因がいまだに分からないのも現代人だ。 パスツールの時代を笑えない。 でも逆に考えると、そういう謎がこの現代世界にもまだゴロゴロしているのだと知らされて、なんとなくホッとする。 直接の損害を蒙っているひとたちには申し訳ないけれど。 さまざまな仮説のなかには、「オサマ・ビンラディンの陰謀」なんてのもあるらしいが、 有力説としては (1)農薬説: イミダクロプリド (imidacloprid) という、シロアリ駆除、ゴルフ場などの芝生維持のためにつかう農薬が、 狂牛病ならぬ    「狂蜂病 mad bee disease」    (=ミツバチの方向感覚喪失) を引き起こすとして、 1990年代にフランスで問題となってフランス政府により用途制限をかけられたことがあり、 これがいちばん怪しい。 (2)病原体説(細菌、ないしはキノコの胞子などなど): ミツバチが謎の失踪を起こして空っぽになった巣にガンマ線を照射して殺菌したところ、 再び新たなミツバチの群棲を育てても大丈夫だった。 農薬説が正しいとすると、ガンマ線照射でなぜ問題が解決するのか、説明がつかない。 (3)「ミツバチの餌に問題あり」説: 米国の養蜂業者は大型トラックにミツバチの巣を載せ、開花した農園を求めて米国を縦横に走り回っていて、 そのあいだミツバチが餓死しないように人工栄養を与える。 この飼料の配合に問題があるのではないかという説。 (4)遺伝子組換え作物説: 一時は、遺伝子組換え作物を栽培する畑にミツバチが入り込んだときに何らかの影響を受けるのではないかという説があったが、 現在ではこの線はほぼシロ。 ただし、遺伝子組換えによるトウモロコシからつくった糖分がミツバチ用の飼料に含まれることによりミツバチに影響を及ぼしたのではないかという仮説があり、現在これを検証中なのだとか。 こういうふうにして、現在進行形で謎の解明に取り組んでいる科学者群像を心に思い描くと、なんとなく勇気がわいてくる。 ミツバチさんたちには申し訳ないけれど。

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