2008/02/16(土)00:41
なりたいのは「プロデューサー」 舞台セット・衣装は北米から
大好きなミュージカル「プロデューサーズ」。
映画化されたのが封切られたときは、3度も映画館に通った。
日本語版の舞台公演を見てきた。
CDで何十回と聴いてきた軽快なメロディーをオーケストラが演奏しだすと、開通したばかりの列車に初めて乗るときみたいに新鮮でわくわくした。
先に舞台版があって、それをもとに映画が作られた。
ところがぼくにとってはまず映画ありきだった。
それを映画館やDVDで合わせて10回近くも見ているから、舞台の場面が変わるたび
「よくぞここまで、映画のあの場面を舞台に忠実に再現できたものだ……」
と感動する。
似顔絵の本人を見て、
「あ、このひと、あの絵にそっくりだ」
と感心するみたいで、順序が逆ですが。
舞台セットや衣装がまさに映画そのままなので(失礼!)驚嘆したが、じつは大型コンテナー7本でメキシコ巡業のあと日本に運ばれてきたのだ。
日本公演の振付も、オリジナル演出・振付のSusan Stroman さんの助手を務めていた Bill Burnsさんが来日して指導した。
完成度が高いのもうなづける。
歌の、I wanna be a producer! というくだりは、「なりたいの~はプロデューサー」と。
作品も「プロデューサーズ」ですから、ぼくが日本公演をプロデュースするならどの役者さんにお願いするか思い巡らせますとね ――
主役マックス、恰幅のいい、売れなくなったプロデューサーには、林アキラさん。
「マリー・アントワネット」で真っ赤な聖衣のロアン大司教を演った。
藝達者だし、まじめくさっていても不思議におかしみがにじむひと。
相方のレオ、臆病だが調子のいいところもある会計士には、駒田 一(はじめ)さん。
「ダンス オブ ヴァンパイア」では、せむしのクコール。「レ・ミゼラブル」では悪るの酒場主人テナルディエを演じて、身のこなし、心のこなしの軽快さピカ一。
スウェーデン人の美人秘書のウーラは、今回の東京公演の彩輝(あやき)なお さん以上の適任者はいないでしょう。
妖艶と愛くるしさがめまぐるしく立ち交じる。声の質も映画版のユマ・サーマン(Uma Thurman) さん そのまま。もう、大満足です。
ナチスの落人(おちうど)リープキンは、映画版のウィル・フィレルさんのテンションの高さとアクションの切れのよさが、余人を寄せつけませんが、ここは山路和弘さんにお願いすれば、びしーっと決まるはず。
恰幅のいいゲイのロジャー。劇中劇でオカマのヒトラーもみごとに演じますが、これは東京公演の藤木 孝さんがいい味を出していました。
ロジャーを愛するスリムな男性、カルメン。
東京公演の岡幸二郎さん。定評ある歌唱力はもちろん、指先まで美しい身のこなしが、プロ中のプロ。このひとがいるというだけで、舞台は安心して見ていられる。
カルメンの役を吉野圭吾(けいご)さんに演っていただいても面白い。
「ダンス オブ ヴァンパイア」のホモ青年ヘルベルト役が、喋りといいバレエダンスといいアブナイ雰囲気にあふれていましたから。
さて実際の東京公演は、マックスを井ノ原快彦(よしひこ)さん、レオを長野博さんが演っています。
集客力ありき。こういうふうに異分野の藝人さんに横合いからいい役を取られると、長年ミュージカルの舞台で苦労してきた人たちがちょっとかわいそうです。
でも、井ノ原さん、長野さんとも、みごとな出来ばえです。
ビラの写真を見ると、とくに井ノ原さんはマックスを演じるには若すぎて見えますが、いざ舞台では40代半ばくらいには見えた。
陰影のメリハリをつけた化粧と、気合いの賜物でしょうか。
長野さんも身のこなしがよかった。
2人とも歌手ですから、歌も言うことなし。
この舞台、毎日でも見たくなるのは、彩輝なおさんのかわいらしさと、活きのいいアンサンブルのちから。
(彩輝さんは、ビラやパンフレットの写真より舞台のほうがさらにすてきです。)
「プロデューサーズ」、しあわせな気持ちにさせてくれて、ありがとう。
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東京公演は2月17日まで東京国際フォーラムで。
そのあと大阪公演が2月23日から28日まで。