文春新書『英語学習の極意』著者サイト

2008/06/15(日)12:02

栄養不良幼児のための最良の援助物資は

科学技術に驚く(35)

低開発国の飢えたる子供たちへの援助食糧として最良のものは何か。 現状では、栄養強化した小麦粉が援助食糧の主力だ。国際機関による援助で使われる標準品になっている。 栄養からいえば、とりわけ3歳までの子供たちには粉ミルクが望ましいのだが、不衛生な水に溶かしてそのまま飲んだり、溶かしたミルクが腐敗したのを飲んだりすることになり、そのためにかえって命を落とす子供がいる。 ミルクは援助に使えないのか? 10年前にフランス人のアンドレ・ブリアン(Andre Briend)氏が考案した画期的な栄養食品がある。 粉ミルク、すりつぶしたピーナッツ、油脂、砂糖、ビタミン、ミネラル類を混ぜ合わせたもの。 保存も容易で、食べるとき水を加える必要もない。 (宇宙食みたいですね。) パウチ包装から直接食べられるから、栄養不良の子供を入院させることなく、家で養生(ようじょう)させられる。 これが大事なポイントで、救える子供の数が格段に増えるのだそうだ。 栄養不良の子供に与えると、9割以上の子供が回復に向うというからすごい。 まことにいいことずくめなのだが、栄養強化小麦粉に比べてコストがかかることもあって、「粉ミルク+アルファ」のペースト食品を与えるのは栄養不良が深刻化した子供たちに限定するよう、国連も米国も指針を定めているのだという。 低開発国の栄養不良児2千万人のうち、ミルクペースト食品の恩恵にあずかれるのは、わずか3%の60万人だ。 援助食糧の質的向上を図ってほしい ……と、国境なき医師団(Medecins Sans Frontieres, Doctors Without Borders)のスーザン・シェパード(Susan Shepherd)さんが訴えていた。 ちょっと古いが今年1月30日の 『ニューヨーク・タイムズ』 紙。 記事によれば、米国は援助用食糧の世界最大の供給国なのだという。 きっと、援助用の小麦粉の買い上げが、米国では政治的支出として確立していて、今さら品目を変えられないのだろうなぁ。 日本も、国内の酪農農家と米作農家の援助を兼ねて、粉ミルクと米の粉などを混ぜた援助用ペースト食品が作れないものだろうか。 パウチ包装には直接、日本の国旗と AID FROM JAPAN の文字を印刷しておく。 どう横流しされても、パウチ包装から食品を摂取するわけだから、PR効果は絶大だ。 ODA予算を使って、日本国内の酪農家・米作農家・食品メーカーを潤しつつ、製品は政府広報の尖兵としてよく働いてくれるだろう。 いけると、思いませんか。

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