文春新書『英語学習の極意』著者サイト

2010/10/05(火)22:35

笹本玲奈 Dinner Live @ 大手町マンハッタンブルー (10月2日)

映画・演劇(とりわけミュージカル)評(243)

10月2日には、ぼくも31名の読者に浜松町駅ちかくの島嶼会館にお集まりいただき、講演+αのイベント を行いました。 ミュージカル関連では、「モーツァルト!」 の 「星から降る金」 をぼく自身がドイツ語から訳した新訳を、ドイツ語版の上演CDに声を重ね歌ってご披露させていただきました。 自分のイベント準備を進めていたころ、笹本玲奈さんの 「ディナーライブ」 が同じ10月2日の夜に開催と発表され、図らずもとても忙しい土曜日になりました。 自分のイベントの参加者のうち有志10名との2次会に途中まで参加してから、ビジネス街ど真ん中にある 「大手町マンハッタンブルー」 に文字通り駆けつけたのでありました。 笹本さんのディナーライブは、ファンクラブ・イベントそのままに気持ちを語ってくれるトークと、舞台で歌ってきた曲をはずして新鮮感たっぷりの歌の数々。たのしいコンサートでした。 黒いドレス。お芝居のときとは違う、アイシャドーをきかせた化粧。長い髪をときどき右にかきあげる笹本さんは、大手町という場所柄もあってか、ふとした瞬間に 「エレガントなビジネスパースンのアフター・セヴン」 のよう見えました。 今回は選曲に英語の歌が多かった。やや練習不足ではらはらした曲もあったけど、おおむねきれいな発音。チャレンジに好感です。 そんななか、ミュージカル Hairspray の冒頭の曲 Good Morning, Baltimore は、笹本さん自身が大好きで聴きこんできた曲だから、もう、完璧の出来でした。 ぼくも笹本さんにぜひ歌ってほしいとファンクラブ・イベントでリクエストしたこともあった曲なので、今回その夢がかないました。 演目: 1.Cinema Italiano (ミュージカル 「NINE」 より、英語で) 2.早く王様になりたい (ミュージカル 「ライオンキング」 より) 3.鉄道猫の歌 (ミュージカル 「CATS」 より) 4.彼らの心は天国に (ミュージカル 「Jesus Christ Superstar」 より) 5.Till I Hear You Sing (ミュージカル 「Love Never Dies」 より、英語で) <15分の休憩> 6.もう一度 (竹内まりや さんの持ち歌) 7.ただ泣きたくなるの (中山美穂さんの持ち歌) 8.Tomorrow (ミュージカル 「アニー」 より、英語で) 9.チャイナ・ドール (ミュージカル 「マルグリット」より) 10.Good Morning, Baltimore (ミュージカル 「Hairspray」 より、英語で) 11.ワイルドフラワー (スーパーフライの持ち歌) <アンコール曲> 12.So Close (映画 「魔法にかけられて」 より、英語で) バランスのとれた、いい選曲でした。 Tomorrow は、日本語で歌っていたかもしれません。チケットの裏に書いたメモをもとにご紹介しています。 (演目表のコピー1枚、あとで配ってほしかったな…。演目 4. は英語だったかも。記憶があやふやです。) 4人のバンドが演奏する Cinema Italiano とともに登場。 この曲は華麗でいて、ひとを突き放すようなパワーがあって、ぼくも大好きですが、なにしろ歌詞が早口なのでむずかしい。 笹本さんもところどころ苦戦していましたが、納得できるまで演じ込んでから上がる舞台とはちがう緊張があったことでしょう。 トークが 「ピーターパン」 の話になりました。 「子供のときに演じたピーターパンのほうがよかったと言われるのが不安だった」 と笹本さん。 (きっとそういう気持ちがあるにちがいないと思って、「ピーターパン」 初日にファンクラブが用意した横断幕には、大人になって演じるからこそ生まれるせつなさがお芝居ににじみ出ていたことを書いたぼくでした。) 「よく、男の子みたいとか、男前! なんて言われること、ありますけど」。 I’m Flying か Neverland を歌うかな……という展開で、彼女は 「でも、ピーターパンの歌はもう歌いません。卒業しました。これが最後と言ってファンクラブ・イベントで歌ったし、高畑充希(たかはた・みつき)ちゃんやさらに若いひとたちがピーターパンを演じてゆくわけですから」。 「男の子」 が歌う曲として歌ったのが、「ライオンキング」 から 「早く王様になりたい」。 そして 「CATS」 「J. C. Ss.」 からと、劇団四季の演目からの曲が続いたところで笹本さんは、10年ほど購読している劇団四季会報 La Harpe で、「オペラ座の怪人」 の続篇ミュージカルのストーリー紹介を読んで複雑な思いになったことを話します。 「え、ラウル、それでいいのかよ。クリスティーヌ、それでいいの? って」。 その続篇ミュージカル Love Never Dies から Till I Hear You Sing を歌ってくれました。第1部は、この曲がいちばんよかったなぁ。 * 第2部のメインは、去年の1週間ウィーンひとり旅の話。 笹本さんがヒロインのマリー・ヴェッツェラを演じた 「ルドルフ」 の、現場に行ったときの寒々とした思い。 ルドルフ と マリー の愛の自死の場所、マイヤーリンクの別荘はいまでは修道院になり、ふたりが亡くなった場所には礼拝堂が建てられているのです。 ウィーンに着いた初日にハンドバッグの引ったくりに遭って、大好きなお父さんに泣きながら電話した話とか、 ザッハトルテが生まれたホテル・ザッハーでトルテをいただこうと思って行ったのに、係のひとにコートを渡してチップを払う習慣を知らなくて、ホテル・ザッハーのカフェの応対に戸惑って出てきてしまった話とか、 それから…。 と、落ち込んだ旅の間も笹本さんの心を明るくしてくれたのが、ニューヨークでお父さんと見た Hairspray の音楽。 笹本さんは、とある対談で 「ヒロインのトレイシー役をもらえるなら、役作りの肥満ダイエットをしてもいい」 という発言をしていて、若いみそらで森公美子さんに変身するのだけは止めてほしいと ぼくは思っているわけですが、でも Good Morning, Baltimore の Oh, oh, oh, woke up today, feeling the way I always do… という明るくはずむ歌詞は、いちど笹本さんが歌うのを聴きたくて、これまでもリクエストしてきました。 それが、今回のコンサートでかないました。うれしかった! 次の笹本CDの演目には、Good Morning, Baltimore をぜひ加えてほしいな。 あと、Marguerite の China Doll もぼくの心酔する曲で、ロンドン版を聴くと涙が出てくるんですが、今回のコンサートも前奏がかかったところでうるうるしてしまったのでした。 いい選曲でした。しっとりとした歌声でした。この歌も、また聴かせてほしい。 * これから、12月にはシアタークリエ 「プライド」 でオペラ歌手志望の音大生を演じ、来年3月にはシアターコクーン・こまつ座 「日本人のへそ」 で東北から集団就職で上京して踏み外してストリッパーになりかけて…という役を演じます。 「4人劇のプライドでは、2曲歌って、オペラのシーンもあるんですが、自分がいまオペラを歌うと美輪明宏さんみたいになっちゃうので (笑)。でも、新妻聖子ちゃんとの初共演で、とっても楽しみです。 聖子ちゃんは来年のレ・ミゼではファンティーヌ役ですから、エポニーヌ役のわたしとそこでも共演です」 「東北辯(べん)はまったくできないし…。でも、最近は方言がしゃべれる人って、カッコいいじゃないですか。わたしは母が大阪出身なので大阪辯なんですけど、わたしがしゃべろうとすると、それは東京人の大阪辯だ、って言われちゃうんです。 ストリッパーの役づくりもしなきゃいけないんですが、浅草のショーにも行ってみなきゃいけないかな、と (笑)。ミス・サイゴンでビキニ姿まではなったことがあるんですけど、演出の栗山民也先生はどう振り付けなさるのかしら」 うん、ストリップの場面ではたぶん、体じゅうを肌色のストッキング地で包んで、一見ハダカだけど生身の肌は見えてない、そんな準備をしてから脱ぐことになると思います。 ほんとのストリップではないわけだから、胸は肌色のパッドで隠して、パッドの上にウソの乳首を描くはずです。 たしか、このあいだの 「キャンディード」 の来日公演で、そんな扮装があったような…。 若くして、いただける演劇賞を次々に受賞してしまった笹本さんが、さらに深みのある女優として成長するよう、演技の小箱がいっぱい揃うよう、チャレンジの多い役どころを与える演劇界の人たちの温かいまなざしを感じます。 これからも、いいお芝居を楽しみにしています。

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