2012/05/16(水)08:07
曾我蕭白さんの 「わしを超えよ」 の声が聞こえた
曾我蕭白さん、と 「さん付け」 で呼ばねば気がすまない。18世紀半ばに生きたひとをこれほど近しく感じたことはなかった。
そうなんだよ。東京藝大や多摩美の卒展・修了展にぼくが期待する爆発を、まぎれもなく蕭白さんの作品に見出した。
「きみは蕭白越えしてるか」
上野の 「ボストン美術館 日本美術の至宝」 展に行って蕭白さんづいたおかげで、翌日速攻で千葉市美術館の 「蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち」 展にも行けた。
確かな技を培ったうえで、ひとの予期をうらぎり衝撃を与え続ける。
それはぼくが文章を書くときのあるべき理想でもある。
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それにしても、紫外線に弱い古美術をあわせて1年ちかく公衆にさらす、ボストン美術館名品の巡回展は、LED 照明があってはじめて実現されたのだろう。
千葉市美術館の蕭白展は5月20日までの40日間だ。しかも前期・後期でほとんど全作品を展示替えをするから、一作品を光にさらすのは2週間から20日ほど。
ふつうは、こうなのである。
上野のボストン美術館展は80日間展示替えなし。これだけでも驚きだ。
そのあと名古屋に巡回し、前期・後期の展示になるが、各期3ヶ月ほどのロングラン。
年をまたいで福岡で80日間、大阪で80日間。
紫外線を含まない LED 照明なしには絶対に不可能な企画である。
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蕭白さんの 「雲龍図」 は、正方形にちかい襖8枚のド迫力で、
「わしを超えよ」
というドスのきいた声が聞こえた。
修復後の初公開ということだが、原画の失われた部分を地の紙のままにしておくという手法の修復なので、修復の場所がよくわかり、かつ目立たない。
襖によっては、かなり悲惨な状態だったことも察せられる。
とぼけた俳味がおもいきり高揚しているのが 「商山四皓図屏風」。おおがらの線で仕上げた別世界を支える蕭白さんの修練を想像すると、気が遠くなる。
蕭白さんの作品はボストン美術館展の掉尾をおもいきり華やがせる。
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いっぽう、展示前半の目玉は 「平治物語絵巻三条殿夜討巻」 で、閉館時間になってもこの作品にだけは人だかりがしていた。
ぼくは金曜夜に行って、まず展示後半を楽しみ、閉館30分前あたりから展示前半を貸切り状態で見る作戦だったが、平治物語絵巻だけはその作戦が通じなかった。
絵巻の劇的描写を、天国のゴヤに見せたい。