『白狐魔記・戦国の雲』 斉藤洋白駒山の仙人の弟子となり、修行の後、人間に化け、やがて妖力(?)も使えるようになった狐の白狐魔丸。人間に興味を持ち、日本史上の大きな事件や英雄達と遭遇し、またその近くの人に寄り添って数々の経験をします。 『源平の風』では源頼朝に追われて落ちていく義経一行に同行。 『蒙古の波』では執権・北条時宗の時代。蒙古襲来に立ち会う。 『洛中の火』では室町時代初期。楠木正成と出会う。 4作目の『戦国の雲』では戦国時代に長い眠りから目覚める。 今回も白狐魔丸が心を寄せるのは時代の英雄・信長ではなく、その信長を鉄砲の師匠の敵と狙う不動丸。 シリーズを通して、白狐魔丸は争いを嫌い、殺し合いを嫌っているが、「何故、人間同士は殺しあうのか。」の問いを抱えて、戦の場に近寄る。 その問いの答えをこの本は決して出してはいないし、また殺しあった時代の人たちを責めてもいない。 ただ“殺し合い”の時代に身をおく人たちの哀しさは伝わってくる。 その人たちを白狐魔丸が愛おしんでいる思いが感じられるのが、この本の良いところだと思う。 浅井が実は朝倉を切ろうとしていたが、信長のことを嫌いなお市に頼まれて、信長に対する立場を取ったという設定は、ちょーっと無理があるんじゃないかと思いましたが。 ますます力を持ってきた白狐魔丸のシリーズがこれで終わりかと思うと残念です。 でもこれはあくまで“仙人”や“山の守り主の狐”が人々に信じられた頃の話なんですよね。 江戸とか、明治時代までは何とかなるかなぁ。 白狐魔丸が長い間眠って目覚めたら、そんな時代ではなくなっていました、なんて想像するとすごく寂しい気持ちになりました。 信長の最後のシーンは、やっぱり信長って感じであっぱれ。 ジャンル別一覧
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