『PLUTO ・プルートゥ』　5巻　浦沢直樹　作　(手塚治虫 原作)　感想

私の年末のお楽しみ、『PLUTO ・プルートゥ』を読みましたので、感想です。 表紙はヘラクレス。 さすがに一年に一冊ペースだとストーリーうる覚えで、冒頭で命乞いする男のシーンで、「あれ?、私、4巻買い忘れてたっけ?。」と思ってしまいました。 ゲジヒトはアドルフと言うKR団(ロボット人権法廃止を唱える極右団体)のメンバーを守る任務につく。 ゲジヒトはアドルフの兄・連続幼児ロボット殺人者・ルドルフを殺していた。 その失われていた記憶が蘇るゲジヒト。 何らかの操作が行われてゲジヒトは覚えていなかったんですが、記憶を消されたと言うことではないと思うんですよね。 人口知能矯正キャンプに収監されている殺人を犯したロボット・ブラウ1589に会いに行った時に、ブラウから「記憶チップを交換した時にすぐに分かった。」と言われているので。 ロボットなのでデーター削除で、記憶も消せるなんて簡単なことではないのかなぁ。 アドルフはKR団から裏切り者として殺されようとしている。 暗殺者からゲジヒトが守るシーンがカッコ良い!!。 イヤ、今巻は、ゲジヒトが本当に色んな意味で素敵な巻でした。 アドルフにゲジヒトは問う、「人間の憎悪は消えますか?。」と。 ゲジヒトがルドルフを殺したのは憎悪からだった。 ゲジヒトが一番恐れていたのは、憎しみを持ってしまった自分自身。 前後しましたが、プルートゥと戦うロボット・闘神ヘラクレス。 それを見守るエプシロン。 さすがはヘラクレス、プルートゥに怪我を負わせるが、死んでしまう。 エプシロンが素敵で。 7体の世界最高水準のロボットが次々と殺される状況で、残りはゲジヒトとエプシロンだけになってしまいましたが、もう死んで欲しくないな、両者とも。 アトムが死んで悲しむウラン、彼女は悲しみを感知することが出来る。 強い悲しみを辿ってみると、天馬飛雄の墓に、それは天馬博士の息子だった。 ウランは超能力者じゃなくて、ロボットな訳ですので、人や動物の悲しみをどう感知しているのかをちゃんと描いて欲しいなぁ。 御茶ノ水博士が修復作業をしても目覚めないアトム。 天馬博士が更に作業をするが、御茶ノ水の施術は完璧だった。 何故目覚めないのか?。 天馬は一つの話をする。 請われて作った完全なロボット、天馬はそれに世界の人口と同じ６０億の人格を分析してプログラミングした。 しかしそのロボットは目覚めない、複雑すぎた。 目覚めさせるには混沌を一つの方向に統率すれば良い。 偏った感情を注入する。 そんなことをすれば、怪物が生まれてしまうかも知れない。 アトムは怪物になってしまうのか?。 私は原作の方の手塚アトムには思い入れがないんですが、さすがに子供の頃見ていたアニメの主人公が化物になっちゃうのは悲しい。 でもそうなった方が物語としては面白い気がする。 ゲジヒトもそうなんですが、憎悪の感情を消去するんじゃなくて、記憶に残したまま、乗り越えると言う強さが人間にはあると思うのですよ。 完全なロボットが、即ち人間と同じ感情を持つと言うのなら、憎しみに捕らわれても、そこから立ち直ると言う選択肢もあると思うなぁ。 天馬博士は子供を亡くしているのですが、そっくりのロボットを作った。 ロボットは人間の為に作られているものなので、ネガティブな感情は持たない。 飛雄が嫌いだったものも「好き。」と言うし、飛雄はそうじゃなかったと教えれば、「これからはそうする。」と応える。 飛雄は厳しかった自分を嫌いだったはずだと天馬は思っている。 この「嫌い」のネガティブさがロボットにはなくて、それゆえ天馬は人間に近付けるのなら、それもまた必要と思ったのか?。 エプシロンからヘラクレスとプルートゥの戦いの事を聞いたゲジヒトは、戦犯として収監されている元ペルシア王国国王・ダリウス14世に会いに行く。 彼は裁判の時に、ロボット大量虐殺を犯した張本人とされながらも、ロボットこそが人間に取って代わる新たな種と発言している。 虐殺は進化の過程である、と。 監獄の壁に描かれた花畑、ダリウスは「これがプルートゥだ。」と言った後、舌を噛み切って自殺を図る。 ゲジヒトがエプシロンから見せられた、ヘラクレスとプルートゥとの戦いの際の、憎しみとは別のほんの一瞬だけの画像。 それは花畑の中で微笑む男。 すっごく人の良さそうな笑い顔の男なんですけど、これがプルートゥなんでしょうか。 プルートゥの憎しみは凄まじいものと今まで何度も出て来てますので、この人がそうだとするのならば、よほどの事があったことは想像に難くないです。 で、また来年かぁ・・・。 浦沢さんのマンガって長いの多いんですが、このペースで１０巻、２０巻となったらキツイなぁと思ったりする。 表紙は左の一巻から、ゲジヒト、アトム、ウラン、天馬博士。