4つ葉プロジェクト

2009/02/26(木)07:57

本気で子どものことを心配している人たちがいる

杉山千佳(子育て環境研究所)(1000)

杉山です。 今、読んでいるのは養老孟司さんの『かけがえのない もの』です。 もちろん、題名にひかれて買いました。 著者が一貫して言っているのは「ものの見方を変えろ」 ということです。 主題は自然と人工、つまり田舎と都会、個人でいうなら 頭とからだ、つまり心と身体である。 いまの日本人は、どんどんと人工社会をつくりあげている。 いわば「脳化社会」。 そこで一番ワリを食っているのが子どもである。 今、手帳に予定を書き込む。 そのことによって、未来がいまになってしまう。 現在がどんどん大きくなって未来を食っていく。 すべてが予定の中に組み込まれていったときに、 いったい誰が割を食うのかということです。 それはもう間違いなく子どもなのです。 なぜなら、子どもというのは何ももっていないから です。 知識もない、経験もない、お金もない、力もない、 体力もない、何もない。 それでは子どもが持っている財産とは何か。 それこそが、一切何も決まっていない未来、 漠然とした未来なのです。 (中略) 私はそれを「かけがえのない未来」と呼びます。 だから、予定を決めれば決めるほど、子どもの 財産である未来は確実に減ってしまうのです。 手入れというのはもともとあったものを認めて おいて、それに何か人間の手を加えていくという ことです。私は子育てがまさに典型的な例だと 思います。 その子どもの扱い方がわからなくなってきたのは、 日常生活の中にこの手入れの感覚がなくなって きたからではないか。 シュタイナーはその具体的な「手入れ」の方法を 「こうではないかなあ」と提示しているし、 河合隼雄さんもたぶん、そういうことをあちこちで 語り、警鐘を鳴らしてらしたんだと思います。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ このところ、息子と濃密な会話をすることが多くて、 「こういうときに大人を使うのよ」 と、わたしは再三言っています。 「あなたのことを本気で心配している大人は、あなたが  本気で助けてと言ったら、いくらでも、喜んで応えて  くれるもんよ。母はそこまで連れて行ってあげる。  あとは自分で『ここを助けてください』と言いなさい。  大人ってのはね、そういうふうに使うのよ」 それは、生の人かもしれないし、本かもしれないし、 映画かもしれないし、音楽かもしれない。 「誠実に助けてくれそうな大人」を選ぶ、選択眼を磨け。 「ここを助けてください」と的確に説明できるようにしろ。 ってなことを、これは息子だけでなく、わたし自身もまた そう思っています。 で、できることなら、年下(でなくてもいいんですが)の 人が「助けて」と本気で来たときに、「そう、これなんです!」 と、その人が喜んで受け取ってくれるような的確なサポートが できる「大人」になっていたい、と、つくづく思います。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ トラックバックをつけてくださった、イノシシさんの 「お二人(養老孟司さんと竹村公太郎さん)の対談は、 「なんか、すごい」のだけど、読んでて元気がなくなっていく……。 私の読み方が浅いのかもしれないけど、 若者や、子ども世代や、孫世代に対しての愛が感じられないというか……。 少子化問題を「万歳!」とタイトルづけて(第三章)、 日本の女性が子供を生まなくなったのは、 今子供を育てるのは危ないという直感があるからではないか、 なんて書かれても、 じゃあ実際に子育てしている私たちはなんなのよ、 という気がしてしまって……。」 というのは、確かにそうで、そこまで言われちゃったら、 子ども産んで育ててるワタシたちって何よ・・・ となっちゃうんだけど、 まずは、「今、そういうことなんですよ」と、教えてもらい、 雰囲気に流されない大人になる、よいテキストになるかと 思います。 だから、今、子どもに対してできることは、上記に 書いた通り。 子どもが割を食わないような環境設定は、今の子育て のなかで、やろうと思えば、できるはず。 応用編としては、養老さん的なスタンスで、世の中を 見てみる、それを子どもや夫などに伝えて、 「あんたの常識が、常識ってわけじゃないのよ」 と、笑い合うってことでしょうか。 『かけがえのないもの』の最後に、 大づかみで世界や人間の概略を書く。それは日本人は苦手 らしい。うっかり書くと、大風呂敷だといわれる。  過去の政治家でそう言われたのは後藤新平である。 とくに女性に申し上げたい。日本女性の平均寿命が延びだ したのは、統計によれば大正八、九年ころからだという。 寿命が延びた理由はなにか。大風呂敷といわれた後藤新平 が、まず東京市から水道の塩素消毒を始めたからである。 以後、女性の寿命はひたすら延びっぱなしである。  なにがいいたいか。女性は後藤新平の銅像を建てたか、 である。それだけ大きな業績でも、知らなければわからない。 「元始、女性は太陽であった」かもしれないが、 女性の寿命を延ばしたのは、まず後藤新平である。 そんなこと、学校では教えてくれない。 自分でものを考えることを、一人でも多くの読者がして くださるようになれば、それは著者の望外の幸せである。 とあって、思わず舌を出しちゃったんだけど、 「すみません、頭でっかちになってました」 って感じで、 確かに「太陽」だったか何だったか知らないけど、 わーわー言ってるだけじゃあねー(笑) と、思っちゃいました。 ちょうど、別件の興味関心で、後藤新平のお孫さんの 鶴見和子さんの本が読みたかったので、 「おお、後藤新平は外せないかも」 と、思った次第です。 おじいさんのDNAで、鶴見和子さんも俊輔さんも 「仕事」をされているわけで。 基本的にわたしは、言ってることより、やってることを 重視するので、彼のやってきたことは、「今」につながっ ていると、直感的に思っています。

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