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2005年10月15日
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カテゴリ:映画
Peach 監督・脚本・撮影 大塚祐吉 1998年 ロサンゼルスインディペンデントフィルムフェスティバル・イン・ジャパン 大賞受賞
アラスジ:雑踏の中、一人醒めた目でチラシ配りをする少女。それを離れて見守る、高利貸しの取り立て屋の男。そのボスである高利貸しは、マッチョでエキセントリックな両刀使い。その愛人の、女と男。彼らがたむろするバーの、ドラァグクイーン。カレ女にヤクを供給する、売人。etc.猥雑な街に集う若者達のエネルギーは、うねり渦巻き……ダンス、ダンス、ダンス!


東葛映画祭にて、松田主演のBATO LOCOを観る為に、その前枠上映であるPeachも観る事になりまして。予定外の鑑賞。
だが、これが拾い物。
実は、映像としては、こっちの方が好みに近い作品だった。
白が勝ったモノクロ映像で、ダンスと音楽が貫き、一切の台詞を排除。
でも、ちゃんとストーリーも判ると言う優れもの。
加えて、出てくるおねぃさんおにぃさんが、大変好ましい。美味しそ…(エ?w)

悪徳と退廃のエッジを疾走しながら、その何処かに純情や情熱を捨てきれないで持ち続ける彼らが、とても愛しい。
台詞を排し、音楽とダンスで構成した特殊な作りは、あざといがスタイリッシュ。
はまる人間には堪らない。
古いディスコナンバーが泣かせる。
しかしぶっ飛んだ設定だ。

男女どっちもいける、ぷちマッチョ変態な高利貸し。
その愛人の、ナヨナヨ男にイケイケ美女。
取り立て屋たち。債務者。娼婦。その客。
フリークじみた配下を従える、臭いフェチな麻薬安売り王。
売人。ヤク中のドラァグクイーン。そのダンス仲間。不機嫌な振付師。

かれらは、キャッチボールのように、そのエネルギーを循環させて踊る。
それは、猥雑でグロテスク1歩手前の熟れた滴りで、観客を魅了する。
彼らは踊り、観客の意識もその環に吸いこまれそうになる。
ただ一人、環から外れたチラシ配りの少女を除いて。
彼女だけは、人の渦から弾かれた自分を証明するかのような醒めた目で、人込みの中心に一人立つ。
彼女に心奪われる、取り立て師の男。
彼の行動規範は暴力に支配されているのに、少女にだけは指一本どころか、近づく事すら出来ないと言う純情っぷり。
少女に惹かれるのに、エネルギーの環から外れ切ることが出来ない彼の葛藤が切ない。

処が、そんな彼を尻目に、一足先にその環から飛び出すのが、意外な人物。
寧ろ、エネルギー循環を最も促進させていた存在である、愛人のイケイケねぇちゃんが、高利貸しの金を盗んでトンズラ。
尤も、この行為は、環からの脱却と言うより、勢い余った上の逸脱なんだけど。
でも、彼女は彼女なりに、何か思うところがあった訳で。
ねぇちゃんと取り立て屋の男の間には、連帯感とも違うが、何となく不思議な空気の繋がりがあって、ラストで味のある邂逅をする。このシーン、好きだわ。
あ、もっと好きなのは、取立て男の同僚である取り立て女(カッコイイ!)が、盗んだ金で踊り狂うねぇちゃんを見逃すシーン。
この取り立て女、グルービーな仲間の中では独り冷静な感じで素敵。
ま、完全に冷静って訳ではなくって、失敗の腹いせを同僚への暴力で発散させるクレイジーさもある人なんだけどね。
そんな彼女なのに、見つかって悄気るねぇちゃんに見せる「馬鹿だねぇ、アンタ」と言った表情が、堪らなく優しい。実は、惚れていたとか?
あ、この映画、恋愛は男女の区別関係ありませんから。

男女見境ないと言えば、悪徳高利貸しのカレ。
…や、やばい。めっちゃくちゃ好みだw
松田さんと正反対なんですが、実は元々は、こう言う“濃い”人がタイプなんだもん。一寸阿部ちゃんが入っている、長めのお顔が素敵。
それが細いのに意外なマッチョで、コートの下はレースの下着にガーターベルトな変態っぷり。やっばーい、益々好みだ。
しまった、自分、悪趣味ぶりを露呈し過ぎ?w
(詳細な情報がなくて確証はないのですが、もしかして、この高利貸しって大塚監督ご自身が演じてます?写真が似てるような。パンフ買えば良かったな。詳しくご存知の方がいらっしゃれば、是非教えてちょ)

悪趣味も極めれば美学。
吐き気がするほど甘くて苦い、濃密な時間がそこにある。
ぐるぐると回り続けるファナティックな彼らは、いつか崩壊すると予感しつつも、その濃密な時間に浸っている訳で。
そんな彼らだからこそ、何か縋るものを持っていたいのだろう。
それが、ダンスであったり、彼らなりの矜持であったり、“愛”であったり。
その存在に縋ったり、目を背けたりして、エネルギーの環は廻り、踊り続ける。

さて、独り醒めていると言うか、他人との関係を拒絶するかのようなチラシの少女。(何と言う女優さんか判らないが、非常に良い顔です)
事実、彼女の世界は、独りで全てなんだろう。
愛人ねぇちゃんの放逐を切っ掛けに、取り立て男も、エネルギーの環からの脱却を図る。彼女に近づく為に。
あまり真っ当とは言えないけど、少なくとも今までの彼の手段であった暴力を介さず彼女の為に考え出した行為は、チラシ配りを受け取るバイトを繰り出す事。
稚拙だけど、なんだか感動的。
その行為が巧くいくか、離れて見守る取り立て男の、少年のように不安げな表情が良い。
作為性に気がつき、戸惑う少女。
彼女も、やっと自分と言う殻を開く行為に出る。
彼に“チラシ”を手渡す。
あのチラシは、彼女の心へ続く道の、通行手形なのかもしれない。
二人を包む空気が、雑踏の中なのに、緑の風吹く木立の中のように澄んでいて、とても美しい姿だと思った。

が、やはりエネルギーは循環し続ける。
ダンスは止まらない。
ドラァグクインも、ビアンもゲイも、ただひたすら踊り続ける。
それはそれで、彼らの道なのだから。
この、男と女、悪と正義、全てを渾然とさせた猥雑な空気もまた、美しい姿だと思う。

純情&ファナティック。
貴方はどちらがお好みか?
いずれも美味しい、滴るPeachを召し上がれ。


大変気に入ったので帰宅して調べたら、この大塚監督って、この東葛映画祭のメイン作品である「妹」のメガホンをとってらしたのですね。
しまった!観れば良かった。
台詞なし、音楽のみのこう言う作品で、これだけの表現を為してしまうのは、凄いと思いましたよ。
これがマグレじゃないか、普通の形態の映画で確認してみたかった。
勿体無い事をしたなぁ。残念。
しかし、“病人監督”(と、自称なさっている)ですか。ウームw
インディーズ作品として、海外で高い評価を得ているとのこの作品。
もし出来るなら、手元においてもっと良く観てみたいと思わせるモノがありました。
そうだな、ダイヤの原石かもしれない。或いは、唯のガラスなのか。
それを見極めてみたいと思いました。





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最終更新日  2005年10月18日 01時05分23秒
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