虎魂悼罪

2021/11/20(土)00:05

領土問題を考える。

歴史系(37)

…というタイトルで今の時期に記事を書くと、十中八九の人が尖閣問題だと思うでしょう。 でもオレの中で、真の意味で「2国間の領土問題」だと認識してるのは北方4島と竹島だけなんだな。 尖閣問題なんてのはね、これは話は簡単だ。 なぜなら、これは戦争によって占領されたものではないから。 過去の条約をみれば日本の領土であることは明らかなのを中国が無理を通して道理を引かせようとしてるだけなので、領土問題ですらない。 それと比べ、北方領土や竹島の場合は違って、更に竹島よりも北方問題の方がもっと根が深く複雑なんですよ。 竹島の方は戦後ドサクサの武力による不当占拠なんで、領土問題ではあるのだが理屈で解いていくと簡単な問題ではあるよね。 ただ、それに対して北方四島は「戦時中に占領された固有領土」なんだな。 ここで、日本とロシアの間の過去の条文や紛争を遡って時系列で北方問題を並べていこう。 8月は終戦の月であり、15日が終戦日なのは日本人なら誰もが知ってますが、8月15日以降も戦っていた日本人がいることを知ってる人はあまりいません。 誰がどこで戦っていたか? 樋口中将指揮下の北方方面軍が日ソ不可侵条約を一方的に破棄して侵攻してきたソ連軍と戦っております。 これだけなら単なる局地戦だけど、問題は15日の段階で日本は敗戦して武装解除を始めてる。 降伏が決まり戦争が終わった直後に千島列島に火事場泥棒的に侵攻してきたソ連軍に対して樋口中将は「ここで武装解除して無血占領を許せば北海道まで奪われる」と判断し徹底防戦を指示しております。 現に当事のソビエト軍の計画では一時は北海道占領計画も持ち上がってたが、アメリカのトルーマンが占領政策へのソ連介入を警戒して拒否した経緯がある。 で、このソ連軍の北方領土侵攻が止まったのが1945年の9月5日。 日本人から見ると、8月15日で降伏同意して戦争終わった後に火事場泥棒的に北方領土を持っていかれた感がある。 ただ、法的には9月2日の降伏文書調印(休戦合意)までは戦争は続いてるという事になる。 まぁ、現実世界のビジネスでも口頭同意しただけじゃ契約は成立しないし、契約書にサインして初めて効果を持つのと同じ。 とはいえ、他の連合国諸国は日本の降伏の意思表示の後は戦闘行為を行ってない。 降伏の意思を尊重して戦闘自粛するってのは昔も今も暗黙了解みたいなもんなので、それに比べればソビエトのやり方は武装解除を始めた日本軍に対してえげつない手法であるのは確かなのだが、法的に違法とは言えないのだ。 ただ歯舞の場合は9月3日から攻撃を受けてるので、これはどう解釈しても不法占拠ではある。 とりあえず時系列で順に追ってみる。 元々は、19世紀初頭くらいまでは日本は何となく択捉島までの4島を自然に支配してて、ロシア側もなんとなくそこまでが自国の境界だろうみたいな認識をしてた。 樺太は当事も日本人とロシア人が混住してて「なんかあれだから今までどおりテキトーに両方住んでる感じで境界も定めないでいいんじゃね?」という今の時代からすればありえないようなテキトーな条約を結びました。 ■樺太千島交換条約 なんとなくグレーだった樺太の扱いが問題なんじゃね?という事で日露で紛争がおき始めたので、樺太ロシアに譲るから千島列島を全部クレという交換条約を締結する。 で…よーく見ると、この「千島列島」の中には俗に言う「北方四島」は含まれてません。 この時既に北方四島は日本の領土だと確定してたんですな。 だってそれまでの条約でも四島に関して触れた条文はないわけだし。 ■1905年 ポーツマス条約 日露講和条約という名の方が俺は馴染みが深いというか、教科書じゃそう習った記憶があるようなないような感じだが、正式にはポーツマス条約と呼ぶそうな。 「日露戦争は日本が勝った」という認識が一般的にはされてます。 世界三大提督とも呼ばれ、今も西洋の海軍学校のテキストに名前まで載っちゃうような東郷平八郎が日本海海戦で当事世界最強と自負してたロシアのバルチック艦隊を「トーゴーターン」で一方的に壊滅させたという、戦史マニアならこれツマミに酒が飲めるくらいの戦果を挙げた戦闘ですが… 当時の日本とロシアの戦力差から考えれば、日本はもうこれ以上戦争を継続する力がありませんでした。 ロシアはまだ局地戦で負けただけで強硬姿勢を崩してなかったが、何とか勝ち逃げしたい日本はアメリカを仲介役にして戦争を終わらせた。 それがこの条約です。 これによって、ロシアは戦後賠償には一切応じない代わりに樺太の南部を日本に割譲するという妥協案が結ばれた。 ~太平洋戦争突入~ ■大西洋憲章、カイロ宣言での連合国側の認識 大西洋憲章は米英はじめとする首脳が、この大戦で互いに領土拡大を目的として戦うのを自粛しましょうみたいな条文。後にたしかソ連も参加してた気がする。 後のカイロ宣言では「領土は拡大しないけど、日本が武力で獲得した土地に関しては日本軍を排除しなきゃね」という確認がされる。 ここでじゃあ「追い出した土地を誰が代わりに統治するか」なんてことに触れてないあたりが問題あるんだが、仮にこの宣言がどう解釈されようが日本は参加してないし、そもそも北方四島に関しては過去一度も日本が武力で占拠した事例がないので対象外だろう。 ■ポツダム宣言 日本に対する降伏の条件として提示された宣言だが、この中で「日本の主権が本州、北海道、九州及び四国並びに連合国の決定する諸島」に限定される。 ここで四島の主権が離れたと勘違いする可能性もあるが、よく考えてみよう。 この当事、まだ日本とソ連は日ソ不可侵条約を結んでる。 そして、ソ連は「日本がポツダム宣言を受諾した後」に千島列島含む北方四島に侵攻してるのだな。 ■サンフランシスコ平和条約 この条約で日本は連合国側からの占領政策から解放され、主権を取り戻す。 この条文の中で「ポーツマス条約で獲得した樺太南部、千島列島に対するすべての権利、権限、請求権を放棄する」という条文があり日本はそれに調印した。 この時点で日本は樺太と千島列島の領有権を放棄してます。 ポツダム宣言で連合国側が示した「日本の主権が本州、北海道、九州及び四国並びに連合国の決定する諸島」の中には樺太南部、千島列島は除外されてます。 そしてあの沖縄も。 沖縄が返されるのはここから更に20年ほどかかりました。 で…この放棄した千島列島の中に北方四島が含まれてるはずだというのがロシア側の主張の一部ではあるんだが、それ以前に まず千島列島の放棄を明記したサンフランシスコ平和条約には当事のソ連は調印してない。 とはいえね、戦争というのは、言ってみればそれまでの条約をご破算にするもの。 戦争以前の条約でどう決まっていようと、戦争になればそれは白紙に戻ったと見るべきだろう。戦争中であれば占領された土地が戦勝者の利益とされてしまっても仕方がない。 そして多くの日本人はあまり意識してないが、今の日本は「どことも戦争してない状態」でしょうか? 「なにをアホなことを」と思うかもしれません。 ただ、時系列で思い起こしてみてください。 日本はサンフランシスコ平和条約で連合国とも平和条約を結んで、戦争状態の失効を確認し領土を逐次返還されてる。 戦争は平和条約が結ばれれば終結だ。 しかしソ連はサンフランシスコ平和条約に署名してない。 その後も日本とソ連、崩壊後のロシアとも平和条約を結んでないので、今の日本はいわば「休戦状態」のまま65年以上経過してる。 「不法占拠された領土が返されるまでは平和条約は結ばない」というのが日本の外交スタイルである。 何故なら不法占拠をされた状態で和平してしまうと、その時点で北方四島のロシア領有を認めることになるから。 だから日本とソ連・ロシアはいまだに休戦状態であって終戦はしていない。 戦争が終わってないのだったら戦争再開に備えて占領地をそのまま保持するのはロシア側からすれば当然である。 要するに北方領土問題というのは、単なる休戦の意思表明を終戦だと解釈したうえに、アメリカが占領していた沖縄が返還されたのを見た日本人が「戦争が終われば占領地は返してもらえるのだ」と脳天気に誤解したことによって起きたものだということになる。 なんでアメリカが沖縄を返還したか?ちゃんと考えた事のある日本人っているのかな? オレがもしアメリカの立場だったら、あんな戦略上の超S級拠点なんか絶対返さないよね。 これは当時の世界情勢を知ればタネは簡単で、アメリカとはサンフランシスコ講和条約によって終戦が成立しており、かつ東西冷戦において日本をアメリカ側の陣営に引き込むための対価として沖縄が返還されただけ。 まぁ北方領土に関しては結論から言ってしまうとだな… 講和が成立してない相手である以上は本気で取り戻したかったら普通の国なら武力で取り返すしかないのだ。 ただ、日本は紛争を戦争で解決する事を憲法で禁じてる。 じゃあ日本は諸外国との紛争や問題をどう解決するつもりなのか? これは憲法にちゃーんと書いてある。 以下、憲法の前文の一部抜粋。 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」 わかりますか? 「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」する事で自分たちの安全と生命を保持すると言ってる。 オレに言わせりゃ底抜けにお人よしの馬鹿である。 この憲法の制定後、『日本が信頼するべき公正と信義を持つはずの諸外国』が何してきたか見てきたか? 憲法作った直後には朝鮮戦争が起きて、東西冷戦が始まり、キューバ危機にベトナム戦争からアフガン、湾岸戦争… この世界に信頼すべき公正と信義を持った国がどれだけ残ってるんだとw しかし日本も憲法は建前で、しっかり自衛隊という軍隊を持ってるけどね。 え?自衛隊は軍隊じゃない? バカ言うな。イージス艦や戦車持ってて世界第二位の海軍力とまで言われて軍隊持ってませんなんて理屈を世界のどの国が信じるんだとw 沖縄から米軍出て行けとかやり始めたら中国に尖閣狙われて、手の平返しで「尖閣は日米安保の対象だって言って欲しいんだけど、いいかな?アメリカさん」とか裏で手を回してんだから、どこが諸国の信義と公正を信用してるんだと。 ところで…集団的自衛権行使を禁じる憲法の改定を狙ってる安部晋三が自民党の総裁になりました。 彼は以前にも「自衛の為の必要最低限であれば核武装を必ずしも憲法は禁じてないと解釈してる」みたいな答弁をしてる。。 オレは戦争肯定論者ではないけれど、戦争を放棄するなら世界最強の外交戦術と狡さを持つべきだとは思ってる。 安保でアメリカを安全保障カードとして使うってのは有りだ。 脱アメリカで日本として真に独り立ちして防衛力増強しますってのも道の一つだ。 ひたすら土下座してでもケンカ避けますってのも失う覚悟さえあるなら道の一つだろう。 核武装はしない、米軍基地は嫌だ、戦争もしない、自衛隊は違憲だ、でも領土は守りたい、日本人としての誇りは一丁前に守りたい。 世界はそんなに甘くねーと思うんだけどな。

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