死期が当って大先生に祭り上げられたが・・

【鑑定依頼に応じて死期が的中して大先生に祭り上げられたが・・・】

4年前のことになるが、知人を通じて観光農園をしている奥さんから運命鑑定の依頼を受けた。郡部に住んでおられ、またこちらも毎日が多忙なので都合がつかず、すぐには応じることができなかった。しかし、知人が言うには、用事でそのお宅に伺う度に、奥さんから「何故、先生をお連れしてくれないのか」と催促されているとか。

ここで一寸話が逸れるが、占術師としての私の考えを述べておこう。
今まで多くの方から運命鑑定を依頼されてきたが、私自身の考えとして、いくら見料を出すと云われても、すぐに応じたことはない。日頃の生活態度や言動を振り返り、じっくりと自省すれば自ずと解決の糸口は見つかるものであるし、或る程度は時が解決してくれるものである。大事なことは、何事もマイナス思考になっていないか、表情に暗さがないか、性格的に直すべきところはないか、偏った食生活をしていないか、毎日を思いやりと感謝の気持ちで過ごしているか、精一杯努力しているか等々、よく自省してみることが先決である。それをせずに、ちょっとした悩みや困り事が生じたからといって、安易に占いに走る人の相談事には、占術鑑定をする気持ちが湧かないのである。
現在はテレビや新聞・雑誌には欠かさず占いコーナーがあるし、ネット上でも占いのサイトは数え切れないほど氾濫しているが、大半がレベルの低い占いで、それで満足している人が何と多いことか。中には詳しく診てもらいたいということで、結果、占術師から5万円も10万円も取られる、その上、高価な開運グッズまで買わされる破目に陥っていっているケースが多い。それにより少しでも運が良くなれば結構なことではあるが、残念乍らそれだけでは開運に結びつかないのである。このような人達は、じっくりと自分を見つめ直すことが出来ないようで、あちこちの占術師を廻って、占いのはしごをすることになり兼ねない。結局、占いに不信を抱くようになるか、または、占いに振り回されるような人生を送るかのどちらかになり、自らが運を悪い方向へ持っていっているようなもので、到底、開運には程遠い。
じゃぁ、占いに頼っていいのはどんな時かと言えば、毎日を前向きに、希望を捨てずに精一杯努力しても、一向に芽が出ず、どうしょうもない時とか、人生の岐路に立たされた時、もう後がなく切羽詰った状態に追い込まれた時などに、はじめて占いの出番となる訳である。それも、或る程度の人生経験を積み、深く運命占術の研究に携わっている占術師でないと的確な占断はムリである。
最近の、若い女性がOLを辞めて、1年か2年ほど占い教室に通ってある程度、マスターしたぐらいのレベルの占術師では、とても人を鑑定する資格はないのである。また、人一人の運命鑑定をするには、大きな責任が伴うことが分かっていない占術師が多すぎる。それは、占いで告げられた占断結果は、本人は意識しなくても一種の暗示となって、潜在意識に植え付けられるからである。場合によっては、占い師の一言が大きな過ちを犯してしまうこともあり得るからだ。それと、テレビや雑誌などで占い師を見ていて思うのは、多くの占い師が、特に若い占い師が、竹の子族(表現がちょっと古いか)かと見まごうような衣装を纏っていたり、祭壇を設けて何かしら怪しげな神仏を祀っていたりする。私から見れば噴飯ものである。

大分、話が横道に逸れてしまったので、冒頭の奥さんの鑑定依頼について話を戻そう。
どうしても一緒に同行してくれねば、もう奥さんのところへは行けなくなる、と懇願され、とうとう知人の顔を立てるために半年後にようやく同行した。玄関を入った時から何か寒気を感じた。居間に通され、見ると旧家だけに立派な仏壇があり、そのすぐ右上に神棚があった。大変な問題を抱えておられ、家族会議の模様がNHKの衛星放送でも流された。奥さんからいろいろとその大変な問題の経緯を聞いている時、床の間の置物やテーブルの花瓶などが突然揺れだした。車の通行は少なく、また、高圧線の鉄塔もない土地である。地震でもなく明らかに地縛霊の仕業であることが分かった。奥さんに尋ねると、相当以前から此の現象が続いているそうで、突然、部屋のものが揺れたり、時には部屋のみならず、家全体が揺れて家族が気味悪がっているとのこと。今まで、何度もお寺さんや祈祷師に来てもらったりして拝んでもらったが、暫くすると、また揺れが始まると話された。一通り家を見て回って幾つかを指摘し、これから或る事を毎日実行するようにアドバイスした。ある部屋には病人がいるとかで、その部屋は見せてもらえなかったが、奥さんをはじめ家族全員の名前と生年月日を書いてもらい、暫く頭の中で運勢を読み取った。それによると、どうも半年後にこの家から死人が出る卦が出たが、奥さんにはその場では言わなかった。きちんと命式を出して運命因子がどのようなものであるかを鑑定しないことには、うかつに口に出すべきでないからだ。
数日後に鑑定書をお持ちすることを約束して帰途についた。早速、沐浴を済まして机の前に座り、精神を整えて命式の作成に取り掛かった。何と、凶作用をもたらす運命因子が幾つも出てきた。次に、秘術の前世探査をしてみると、幾人かの人物が判明したが、奥さんもお父さんもお母さんも相当に業の深い人であることが判明した。普通だったら救いようがない家族であるが、昭和54年に広島大学の松島竜太郎名誉教授から伝授してもらった、古くからイスラエルに伝わる白魔術の、『秘伝・折り紙によるダビデの星開運祈願法』がある。その秘伝を使えば或る程度は救われる筈だ。但し、三七・二十一日間もの間、一日も欠かすことなく決められた時間にやってもらってこそ効果が出てくるもである。さて次に、卦を立ててみたら、今から半年後の12月頃に家人が亡くなるとの御託宣! やはり間違いはない。4日後に詳しくワープロで作成した鑑定書を持って、知人の車で再訪した。
奥さんに一通り鑑定書の説明をして、「ところで奥さん、今のうちから心の準備をしておいてください。臥せっておられる病人の病状が晩秋から徐々に重くなり、冬の12月頃に亡くなられる可能性が卦に出ています」と告げた。奥さんは、「鑑定書に書いてあることはほとんど当たっており、驚くばかりですが、病人についてはまだ死ぬような様子はないですよ! ちょっと風邪をこじらせて寝込んでいるだけですから・・・」と笑っておられたが、自分の見立てには確信があった。
ところが、それから半年後の12月下旬に「先生の指導通りに開運祈願法を実行しましたら、あれほど頻繁に起きていた揺れがなくなりました。有り難いことです。只、あの時に先生が言われた病人が半年後に亡くなると告げられましたが、やはり先生の言われた通り、今月に入って父の容態が悪化し、先日亡くなりました」と、涙ながらに電話で報告を受けたのであった。
それからが大変である。すっかり信用を得て大先生に祭り上げられ、以後は、奥さんの大げさなクチコミで『とてもよく当たる占術師のパール・やまぐち大先生』と、喧伝されてしまった。そのお陰で、次々と占い希望者を紹介いただいたり、また、自営の遠赤健康シートの普及に努めて下さって、その地方には広範囲にシートの愛用者が増えた。あれから4年を経過しているが、今でも、時折、旬の野菜や果物を届けて頂いている。ただ閉口するのは、未だに電話や知人を通じて「先生のお顔が見たいので家に来て欲しい。いろいろ話を聞いてもらいたい」と、懇願されることである。知人の都合と私の都合があるので、しばしば出向くことは出来ないが、それでも7,8回はお邪魔したであろうか。その度に下へも置かぬ接待を受け、帰りには沢山のお土産までいただくが、お土産の果物や野菜、漬物が知人よりも倍くらい多いので、知人はすっかりむくれてしまい、知人との付き合いが遠のいてしまったことが残念なことではある。


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