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我思う、ゆえに我あり

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yukie_yo

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February 8, 2008
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カテゴリ:仕事
以前書いていた、キッシンジャー秘録の続きを読んでいた。珍しくアメリカにしては極秘でキッシンジャーがパキスタン大統領の好意的援助で訪中に成功。この際、キッシンジャーは周恩来、毛沢東にかなり感銘を受けたようだ。匹敵するのは、ドゴール将軍くらいだ、という。いずれも、負け気味の長い戦争を国民を率いて勝ち抜いてきた将軍たちだ。さもあらん。

この回想録(秘録なんて大げさだ。原著のタイトルも「ホワイトハウス時代」)を読む限り、アメリカはベトナム戦争で北ベトナムを孤立させるため、ソ連の封じ込め戦略を維持するため、米中関係を樹立した、というのは通説で、実際キッシンジャーもそう書いている。だが、意外と中国の思惑というのはかかれない。中国にすれば、中ソ対立があって、ソ連が国境付近に軍事力増強したがために、アメリカというパワーバランサーを持ち込もうとした。ここで、両者の利害の一致が初めて見られる。

そして、キッシンジャーはニクソンと構想を練ってから、ハノイ支持声明やもろもろの雑音があるにも関らず、絶対中国はアメリカを必要としている、アメリカが話を持ちかければ絶対に乗ってくる、という絶大なる信念があった。そうして、中国側も必死でニクソンからのメッセージを国務省その他からのそれとは区別して、地政学的な観点から、アメリカも中国を必要としているはず、と信念をもって理解してきたろう。もちろん、中国側もイデオロギー宣伝なる、反米姿勢の外交上の常套句をハノイの精神面バックアップのため用いてきている。これをキッシンジャーは、「空砲」と呼んだ。日本も、このくらいのマインドで中国政府による反日声明につきあうべきか。

ニクソン訪中の箇所だけを読み終えたが、本当に回想録はいかに実際にキッシンジャーが行くまで真剣勝負があったかを雄弁に語っている。そして、いくら戦略的に必要性があったとしても、互いの政府内に戦略的に物事を考えられるトップがいないと、物事はうまくいかないことも教えてくれる。

ただ、必然性があるだけでは、だめなのである。

そういう意味では戦略的に考えられる巨頭同士がアメリカと中国にいて、がっちりとスクラムを組んだ結果、といっていい。そのせいか、キッシンジャーと周恩来が会議する場面では、役人が専念する共同声明文などの文言であくせくしている雰囲気では決してない。今後の米中関係がいかなるものになるのか、本質論で戦っている。

著者が謙遜してかいてあるのかどうか分からないが、周恩来は非常に目的に即した現実的対応を迫り、キッシンジャーの方が国内政治で想定できる批判をかわすための小細工的なテーマを持ち出さざるを得ない、印象すら受ける。

本質論とは、ソ連による覇権拡大に反対すること。その他、資本主義だ、共産主義だ、なんてイデオロギー的なことはどうでもよろしい。台湾問題でさえ、本音で言えば別にどうでもいい。(多分途中でばれてもいいように、駐台米軍撤退を議題にあげている)しばらく放置しても大勢に影響はない。中国は米ソで中国に向かってもらっては困るので、それが阻止できるのなら、アメリカと手を組もう。

だが、それで100%親密な友人になるわけじゃない。その他もろもろの相違点は山のようにある。なので、上海コミュニケも素直に相違点を盛り込んだ。

ま、こんなコミュニケは国務省や外務省ではありえない文書、といっても過言ではない。だが、その代わり、彼らの得意な小手先の交渉の跡はない。役所にありがちな、文書を作ること自体が問題なのではない。双方、今後の米中関係を互いの自国民に納得させることを意識した文書作成だった。多少ごり押しや粘りで得をしたとしてもその後の米中関係で覆されることは確実だったから、双方とも、そうした交渉は一切しなかった。

中国も素直に日米関係は大事といった。日本や韓国を攻撃する気は毛頭ないともいった。

なので、米中関係の基本路線を明記した最初の記念すべき文書なのである。

日本にもこうしたことができるようなカウンターパートがいるといいんだけどナ。。。

最後に、以前ブログで書いたとおり、日本が外交関係樹立前のルートとして全く使われていないのはなぜ?と書いた。ちゃんとした理由というのは書いていない。だが、ニクソンショックが世界を走ったとき、当時の駐日大使もやっぱり日米関係を何と心得る!とものすごく怒った。けれど、後で冷静に考えてみれば、自分のキッシンジャーの立場で極秘を通して物事を進める場合、日本はあまりに情報が漏れるからはずされても仕方がないな、と認めている、という。もちろん、キッシンジャー本人も自分が訪中する前に自分の部下を東京に派遣すればよかったと後悔している。だが、大事の前にそうした小事を興奮のあまり忘れたという程度だと解釈できる。

大使というものは、赴任先の国を自国内で弁護するくらいでちょうどいい。が、弁護人にまで言われてしまう日本は、まったく情けない。だから、頭越しになるんです。ちったあ、反省せよ。





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Last updated  February 9, 2008 12:38:04 AM
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