668756 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

我思う、ゆえに我あり

我思う、ゆえに我あり

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Freepage List

Profile

yukie_yo

yukie_yo

Category

Calendar

July 16, 2008
XML
カテゴリ:仕事
今日は仕事関連でスパイクマン著「平和の地政学」を読み終える。この本は1944年に出版された本。著者自身は前年に亡くなっているのだが、その叡智を埋もれさせるに忍びないと周りの人たちが著者がもともと書こうと思って書いていた原稿や講演内容、ハンドアウトなどを基に書いたのが本著。

著者は、半端なく頭がいい。カリフォルニア大学とはいえ、学士から博士号までたった3年で修了という。通常、学士は4年、いきなり博士号をとりに行くとしても、5-6年。どれほど頭がいいかわかろうというもの。その実イエール大学に教授として迎えられることになる。(通常、卒業した大学と同等あるいは下の大学にいくものだから、よりいい大学にいくのは結構すごいことである)

この本を理解するには、まず地政学の基礎を知る必要がある。地政学が生まれたのは比較的最近である。たかだか20世紀初頭。提唱者は、マッキンダーというイギリスの地理学者。世界地図を見れば、世界の趨勢が理解できるというのが、本来の主張である。

地政学とは、まさに、地理学と政治学のかけあわせである。

で、マッキンダーの時代、それまで大英帝国は空前の栄華を誇っていたが、だんだん陰りが見えてきたころ。で、イギリスでは何が大英帝国の成功要因で何が敗退要因なのかを議論するようになる。そこで、新しい理論として、マッキンダーが世界地図を基に当時の世の中を読み解くことに挑戦する。

このマッキンダーの理論というのがいわゆる、ハートランド理論。この人の一番のせりふが、

「東欧を統治するものは、ハートランドを制す。ハートランドを統治するものは、世界島を制す。世界島を統治するものは、世界を制す」。

ハートランドとは、今のロシア、東ヨーロッパあたり一帯。ここが当時の世界情勢の鍵を握る場所である。なぜなら、大航海時代から、船による運搬量がユーラシアの内陸をてくてくらくだで運搬するより断然高かった。しかし、鉄道ができることにより、船に拮抗できるまでの内陸運搬能力が発達した。すると、ユーラシアの真ん中にあるという事実が、船でユーラシアの端を囲む海をぐるっと回っていくよりも、速くユーラシアのどこへでもいけるようになるから、ハートランドを統治するものが世界島(ユーラシア)を制することができる。

なお、世界をハートランドのほか、内側の三日月地帯(ユーラシア内のハートランド以外)、外側の三日月地帯(ユーラシアに接していないところ)とに分けている。

そして、大英帝国(シーパワー)の目下の敵がロシア帝国(ランドパワー)であることは不可避である。実際、グレートゲームという名前でイギリスとロシアが内側の三日月地帯のあちこちで鉄道を作れば作るほど、戦争すればするほど、必ず相手がしゃしゃり出てきて、パワーバランスが拮抗するようにする時代が、19世紀から20世紀初頭にかけて行われていた。

例えば、オットマントルコ帝国に対して、ロシアが徐々にその領土を侵食し、クリミア戦争がおきると、イギリスがトルコの味方をする。ロシアがコーカサスにまで広がっていた、ペルシャ帝国の領土を侵食して戦争を10年くらいやっていると、イギリスが終戦交渉の仲介をしたりして、しゃしゃり出てきて、シャーを贅沢な生活におぼれさせ、挙句に石油を発見し、現在のブリティッシュ・ペトリアム(BP)の基礎ができる。さらに、アフガニスタンも、両方が介入したために、国王が両大国を天秤にかけて、イギリスに中立を、だがもし他国が攻めてきたら援助することを約束させている。チベットも、イギリスのヤングハズバンドがロシアの介入を防ぐため軍を率いてロシアの影響を薄めている。その一方、イギリスは、インド(当時、パキスタン、バングラディッシュは含まれている)を植民地にし、アヘン戦争で香港租借を清朝に呑ませ、華南を中心に影響力を広げていく。すると、ロシアも、シベリア鉄道を作りながら、満州、朝鮮半島に食指を走らせる。すると、イギリスは日本と同盟を結び、日露戦争勝利後の1905年には同盟の範囲を極東からインド(当然仮想敵国はロシア)を含めさせる。

そんな時代背景からマッキンダーは、シーパワーVSランドパワーの時代到来とぶち上げる。

そして、これらの外交・軍事の主戦場となったのは、ハートランドの周りの内側の三日月地帯。

というのが、それまでの説。そこに、「待った!」をかけるのが、著者である。前置きがだいぶ長くなってしまったが。

大事なのは、ハートランドじゃなくて、リムランド(マッキンダーのいう、内側の三日月地帯に相当)だ、という。そのため、著者の理論はリムランド理論という。

まあ、立場の基点をユーラシアにかすってもいないアメリカにすれば、リムランドを一国によって支配されることを避けるべし、というのが前提となる戦略であるため、ハートランドを囲い込むには、リムランドへの積極的介入が必要である、というところから、大事なポイントの置き方が若干違う。けれど、まあ根幹は同じといえる。後は、このころできた飛行機による、エアパワーについて言及しているところが違うか。

そして、結論、アメリカの国益は、リムランド統一への動きを阻止する国たちと協力関係を構築・維持していくこと。そして、イギリス、ロシアもヨーロッパやアジアに覇権国が生まれることは非常に危険なので、この三国が協力すれば、安全保障の枠組みの基礎が提供できる。

さて、この三国、どこかで見覚えが?そう、ヤルタ会談のメンバー。

他にも、著者は上記の趣旨の論文を出しているので、そのころから話題騒然の主だったようで、当時の政府高官、ジョージ・ケナンなども著者を知っていて、その後の冷戦構造構築の際には大いに影響しているといえる。

つまり、冷戦構造の根幹をなす理論は、封じ込め理論である。ソ連を残りの世界から隔絶すれば、そのうち内部崩壊するだろう、というもの。そして、明らかに資本主義国、共産主義国でなかった、グレーゾーンのリムランドの国々を西側陣営に縛り付ける。一方、ソ連はハートランド(中央アジアなど)を主に傘下に入れる。

これぞ、まさにリムランド理論の応用である。これを使うと、朝鮮戦争、ベトナム戦争、ソ連によるアフガン侵攻なども説明できる。(リムランドの国の行動ではなくて、米ソの動きね)

これを60年前に考え付いてるんだから、すごい。

なのに、そんな議論をすっかり忘れた世界は、冷戦崩壊後、呆けた状態になってしまって、アメリカはリムランドの一部、イラン、イラク、ミャンマーなどを遠ざけている。

本当にこの理論でブッシュ政権を批判できるんだから、すごい。そして、やってはいけないといわれていることをその通りやって失敗しているブッシュ政権は、本気でやばい。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  July 16, 2008 01:19:00 PM
コメント(0) | コメントを書く
[仕事] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.