まだ今日が始まって一時間だけど。
一時間半くらいお風呂に入ってた。
最近はお風呂で本を読むのがすきで。
かたかたと丸める蓋を顎の下まで閉めて、
バスタオルを半分に折って、
それを横長になるようにもう半分に折ったのを敷く。
その上に肘をついて、水なんかを飲みながら、ぼんやり。
その時に、あたしは死ぬほど本を持って入る。
今日のお風呂の気分が、どんなのかは、
行ってみなければ分からないからだ。
今夜は結局、江國香織に落ち着いた。
お風呂から上がって思い出した。
江國香織の「あたたかいお皿」という単行本を、
その昔、祖父にもらったことがある。
何でもない日の夕飯の後、
お決まりの椅子に座った祖父から。
「読むか?買ってみたけど思ったのと違った」、
確かそんなことを言いながらくれたんだっけ。
考えてみれば祖父は大岡昇平とかを読んでいたから、
祖父の手から江國香織、そのちぐはぐな感覚を覚えている。
祖父は、三年前に亡くなった。
今思えば、あの本は、形見だ。
今度実家に帰ったら、持ってこよう。
もしかして本当はプレゼントだったのかな、
初めて1パーセントくらいそんなことを考えて、
急にぽたぽた涙が出る。
あたしのことを本の虫と笑っていたのは、祖父だった。
だけどあたしが何を読むかはあんまり知らなくて、
それでもあの一冊をきっかけに、
あたしの本棚には江國香織が何冊か増えたんだよ。
本当は買い間違えたんじゃなくてプレゼントだったのかな?
どっちでもいいようなことだし、
もう確かめる方法なんてどこにもないけれど、
そういえば買い間違えるなんて祖父らしくもない。
だけど、もしも。
もしもそうだったのだとしたら。
たまらないなあ、
あのありがとうじゃあちっとも足りなかった。
いろんな人があたしの名前を呼ぶけれど、
どれも違うから、どれも忘れられない。
あたしにとっての誰かの記憶は、
その人が、あたしの名前を呼ぶ声の記憶だったりする。
その声で、もう一度、呼ばれることはないけれど、
頭の中で、心の中で、何度でも、ずっと。
ありがとうね。
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Last updated
2005/02/24 01:31:32 AM
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