もはや熱を出す力も体に残っていないのだろうか、と思うくらいに
ただぐったりと重力の一部になる他に手の打ちようのない日がある。
このままこの街に私は生きるのだろうか。
ニュートラルなニュアンスで始まった問いが、
徐々に、個人的な政治的様相を帯びてくる。
このまま私はここに居た方が良いのだろうか。
歳をとってゆく家族が、
こんな体とは言えど私が戻ってきたことで
降りかかる災難に鷹揚に立ち向かう力を付けた。
ともすれば過剰に弱気に、過剰にヒステリックになりがちな
老年期の始まりを、私の存在が少しでも和らげられるのなら。
遠い街で仕事に就きそうだという弟からの報せに、
喜ばしくも寂しげな空気を醸し出した居間の中で、
私は身の置き所が、身の置き所を、考えざるを得なくなる。
私はここに居た方が良いのかもしれない。
そんな風に思いが傾きかけてくる。
自分の欲望や夢が、言い訳混じりの思いやりで脱線したのは
何も今に始まったことではない。始まりは14の時だ。
あれから12年経つが、私の根本は変わらないらしい。
人は私の家族を、仲が良い仲が良いと目を細めて口々に。
けれどそこにはそれぞれの努力があることを、
実感として認めながら彼らは、そういった言葉を口にしているのか。
私はここで学業に一区切りを付け、恋人のいる懐かしい街に戻りたい。
その気持ちは今も変わらない。これからしばらくも変わらないだろう。
でも、刻々と家族は老いていくのは事実だ。
自分に向けられた期待の読み取りにばかり奔走してきた。
そうしてそれを叶えては、自己満足と、深い安堵に包まれてきた。
ひとつ乗り切った、それを幾度こなせば私は自由に選べるのか。
自由とは何だろう。
ここにいろ、この街で生きろ。
そうやって是が非でもと足下を掴む手を探している。
ここに来い、俺の傍で生きろ。
そうやって是が非でもと体を包む腕を探している。
今の私には決められない。
決める前に、片付けるべき事務的な学業が山積している。
その間にも、時間は過ぎてゆく。
私は、焦っている。
順調に落ちてゆく体力は別として、
波はあれどゆっくりと下降しはじめた熱。
熱の下りきったところから、新しい方向を考えるのでは遅いのか。
その頃にはもう、既に決めておいた道に進むのが筋なのか。
ああもう、後先もわからないよ。
恩とはなんだ。
「誰かのため」という誘惑的な影を振り払って、
そこに残る私の本音とは一体なんなのだ。
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Last updated
2009/01/25 12:36:10 AM
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