2006/05/11(木)15:45
第10回 作詞スクール
これは、ある女子高生の応募歌詞を添削したものです。
添削6
風の強い ある日の放課後
駅へ急ぐ 彼の後ろ姿
時計を気にしてたよね
そんな姿見て はっと昔の恋人思い出す
別れたその日に切った髪も
今はもう こんなにのびたよ
心の中で叫んでも 昔の彼は
もういない
『ある日』は必要ないかも知れない言葉です。
言葉のアイデンティティ(存在意義)を大事にしてください。
どうしても、その言葉でなくてはならない、他の言葉では置き換えることができない、あるいは、その言葉を使った理由、といったことをいつも考えるようにしましょう。
言葉の必然性は、ストーリーに関係する、設定に関係する、テーマに関係する、詞の他の部分と関係するなどで、与えることができます。
今回のように言葉を指定されている場合、まず5つの言葉からストーリーを組み上げるのが、初級者には簡単で良い方法でしょう。
今回は詞が短いのである程度しかたないですが、『風の強い』ことが何を意味するのか、どうして『放課後』なのか、なぜ『駅』へ行くのか、なぜ『彼』は『急いで』いるのかが、詞の2番や3番を通して読み手に伝わるように、考えていかなければなりません。
『後ろ姿』『そんな姿』と同じ言葉がダブってます。
作者は『彼』の後ろを歩いていることになります。
『急ぐ』と『時計を気にしてた』は同じことですので、『時計を気にしながら、駅へ向かう』とすれば、急いでいることはわかります。
『そんな姿見て~』から後半は、アイデアも入っており、詞がよく流れています。
『はっと』は危険な言葉ですが、まあ良いでしょう。
『思い出す』と、その前の『気にしてた』と時制が合っていません。
『別れ』→『髪を切る』は、ありふれた設定です。
『髪も』の『も』ということは、ほかにも伸びたものがあることになります。
『叫んでも』とありますが、その前の『~こんなにのびたよ』は、叫んだようには見えません。
さて、この詞の中には2人の『彼』が出てきますが(今の彼と昔の彼)、このアイデアをいかして、どちらの『彼』が書き手にとって大事なのか、はっきりさせた方が良いと思います。
あるいはどちらも好きなのか…。
この添削を読んで、作詞は難しいと思ってはいけません。
一週間で与えられた課題をサラッと書いて来るだけでも、たいしたものです。
何よりも大事なのはアオキさんの感性です。
あなたが今感じることや、あなたが今人に伝えたいことがあれば、それを言葉にすれば良いのです。
そして言葉に乗ってメロディが聴こえて来ます。
そのことは、一番素晴らしいことなのです。
がんばってください。
添削後の詞
風の強い駅への帰り道
何度も時計を気にする彼の後を
髪を押さえて追いかける
突然思い出した 昔の恋人
別れたあの日に 切った髪が
今はもうこんなに伸びたよ
心の中で呼びかける
どうして2人は いつもあんなに
急いでいたの