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しかたのない蜜

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2005年12月23日
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カテゴリ:映画
 明け方、目が覚める。

 腹部にズド~ンとした痛みが……。

 体を二つに折り曲げて(痛くて背筋を伸ばせないのです)、トイレに駆け込んでも治らない。

 布団に戻っても、あいかわらずまだ痛い。

「もしかして救急車を呼ばねばならないのかっ?」

と思い、ダンナに「お腹が痛い……」と訴える。

 寝ぼけ眼でダンナは、

「また赤子が大きくなってるんじゃないのか?」

と答える。

 この「赤子が大きくなる」というのは何かと申しますと、妊娠初期の
二ケ月ごろ、私はよくこういう腹痛を感じてたんです。

 産婦人科に行ったのも、妊娠検査役が陽性になったからでも、
生理が止まったからでもなく、腹痛を幾度も感じていたからでした。

 それをお医者さんに話したら、「妊娠かもしれませんね」って言われて、
本当に妊娠だったんです。


 なぜ腹痛が起きるかという理由を、私とダンナが二人で考えたところ、

赤ちゃんがお腹の中で大きくなるために領土拡大していて、その刺激が腹に痛みとして伝わるのではないか

という結論に達しました(医学的根拠はまったくありませんが)。

 それが今、また起こったということは、赤子がより成長を遂げようとしているのではないだろうかと。
 だって一ヶ月で二倍近く大きくなっちゃうんだもんね。
 また大きくなっても不思議はあるまい。

 ダンナにそう言われると、なんとなくほっとしてその後眠ることができました。


 あいかわらず引きこもり妊婦生活、続いてます。

 外は寒波なので、外出する気になれません。
 

 そこで、先日借りてきたレンタルビデオで映画を観ました。

 タイトルは「モンスター」。

 主人公・アイリーンは貧しくすさんだ家庭に生まれ、13歳のころから
体を売って生計を立てることを余儀なくされます。
 そんな生活に嫌気がさして自殺をはかろうとした彼女は、ふらりと立ち寄ったバーでレズビアンの少女・セルビーと知り合います。
 自分になついてくれるセルビーに、生まれて初めて人の優しさを見ることができたアイリーンは娼婦をやめて、まっとうな職業につこうとするのですが……。
 


 正直、この映画をレンタルで借りるかどうかかなり迷いました。
 観た人ほとんどすべてが「いい映画だけれど、あまりにも救いがなさすぎる」といった評価を下しているからです。
 でも以前から観たかった作品だし……と思ってレンタルしました。


 ファーストシーンで登場する幼少期のアイリーンは、どこにでもいる
夢見がちな少女です。

「学校で教わった通り、信じて努力すればどんな夢でも叶うと思った。
 人生で大切なことは愛と自分を信じることだと思っていた」

 そんなアイリーンは、生活環境の劣悪さから、娼婦への道をたどることになります。あどけない笑顔で客に媚びるアイリーン。

「アメリカンドリームを信じていた私は、マリリン・モンローになれるのだと思っていた。客の誰かが私のすばらしさを認めて、違う世界に連れて行ってくれるのだと思っていた」


 現在、本屋に行けば山ほど自己啓蒙本が売られています。
 そこに書かれていることは、アイリーンの信じていることとほぼ同じです。
「努力すれば必ず道は開ける」
「夢は必ずかなう」

 こんな言葉を鵜呑みにしたアイリーンを、誰が笑うことができるでしょうか。
 8歳でレイプされた彼女は、そんな夢を信じていなければとっくに自殺していたでしょう。


 アイリーンを嫌うセルビーの叔母は言います。

「この世の中には生まれながらの落伍者がいるのよ。あの人たちはいつだって間違った道を選ぶの」

 でも、誰がアイリーンに正しい道を教えてくれたでしょうか。
 親からも棄てられ、学校にもロクに通うことができなかったアイリーンに。

 現在、日本は児童虐待が横行しています。
 また貧富の差が拡大しているといいます。
 これからの日本はアイリーンのような境遇の人間が増えるのではないか、
と思いました。

 クライマックスで、アイリーンはようやくセルビー以外の人間の善意に触れることができます。

「どんな問題でも解決できるよ。君に手を貸そう」

 そう手をさしのべた人物に対してアイリーンは……。
 
 このシーンで、私は泣きそうになってしまいました。

 観た後、ずしりと胸に来る映画でした。

 精神的に余裕がある時の鑑賞をおすすめします。


モンスター <通常版>


モンスター <通常版>

モンスター <通常版>

 





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最終更新日  2005年12月23日 23時20分55秒
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