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しかたのない蜜

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2008年02月16日
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カテゴリ:小説
もしそのことを姫子たちが知ったら、どう思うのだろう。第一、「フリーハウス」の管理人を引き受けるとはっきり決めたわけでもないのだ。勇作が提示してきた給料は、ファミレスのアルバイト代よりはるかに高給だった。それでもこの話を受けるかどうか迷ってしまうのは、自分がゲイではないためなのだ。
 それに――長年、兄のように慕っていた勇作が同性愛者で、もしかして自分に恋愛感情を持っていたかもしれないという事実も受け容れがたかった。
 どうか同性愛の話題には触れないでくれ。自分と勇作の関係を問いたださないでくれ。そう願っていた矢先、そのものズバリの質問が姫子の口から出た。
「玲くん、勇作とはつきあって何年になるの?」
 小さく体が震えるのが自分でも分かった。玲の困惑を察知したのだろう。さりげない風を装いながらも、興味津々で答えを待っている姫子たちを勇作が取りなす。
「参ったなあ、姫子ママ。そんなプライベートな質問、いきなり訊かないでやってくれよ。だいたいこいつは……」
 玲本人に代わって、勇作が弁明してくれようとした時。
 野太い声が室内に響いた。
「そいつはね、男なんか全然好きじゃないの。それどころか、ここがゲイ専用マンションだってことも、勇作がゲイだってことも昨日知ったばかりなんだから」
 声のした方を振り向くと、いつのまにかレイが入ってきていた。入念にメイクが施された顔には、皮肉っぽい笑顔が浮かんでいた。

                            つづく




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最終更新日  2008年02月16日 23時34分31秒
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