テーマ:寂寞の中で(1008)
カテゴリ:ショート・light&serious
優しく啄ばむ様なキスから今度は唇をそっと噛み、少し開いた所で玲人の舌先きが麻由美の口の中に滑り込んで来た。
束ねた髪の毛のシュシュをそっと抜きながら髪の毛を梳かす手と舌を絡め取るような深いキスに麻由美は胸が張り裂けそうな程高鳴った。 角度を何度も変えて麻由美の唇だけで無く身体の全てを喰らい尽くそうするようなキスに麻由美は頭も身体も痺れたような感覚に落ち、 沙希が言っていた 「玲人は本当に愛している女性にしかキスをしない」 という言葉が全身を包んだ。 玲人は麻由美の身体の力が抜け落ちてしまった頃に唇を離した。 何度も啄ばむようなキスをしながら 「麻由美さんと初めて会ったのはあの雨の日では無いんです。 もっと前に・・ 10年前、僕が事故を起こした夜、麻由美さんはあの時そこに居たんです。 あの時は僕は気が動転してしまい訳が分からなくなって何も出来ずにいたのを麻由美さんの一言で助けられました」 玲人は麻由美をぎゅっと抱きしめて髪の毛に頬ずりしながら話しを続けた 「麻由美さんが僕に『大丈夫ですよ、落ち着いてください』と、 そして彰子に『怖がらないで、大丈夫ですから』そう言って彼女を抱きしめて落ち着かせてくれたんです。 その時は頭が真っ白でしたので麻由美さんの名前すら聞かないでそのままになってしまったのですが、 後からあの時麻由美さんが声を掛けてくれなければどうなっていたのかと思い・・・」 麻由美はその事故をおぼろげに思いだした。でも、自分には関係の無いことだったし、早く自宅に帰りたい一心だったのでよく覚えていなかったのだ。 あの時、泣きじゃくっていたのが彰子だったんだ。助手席の女性はただ驚いて何か叫んでいたようだったけど、玲人を庇うことなどしていなかったように思えた。 「僕はあれから麻由美さんを探しました、彰子の我儘に付き合いながらね。 彰子は二十歳を過ぎた頃、僕と結婚したいと言いだしたので慌てました。 僕の婚約者はあの後すぐに僕の元を去っていったのは話しましたよね。 それから僕は麻由美さんを探していたのですから、 結婚を断念させるために賭けに出ました」 「それが担当者を・・・」 「そうです、彰子は大変に興味を示して喜んで賭けに応じました」 ふぅっと大きな息を吐いて玲人は続けた 「最後の5件目の式場で麻由美さんが担当になるなんて驚いてしまいました。 賭けに勝たなければ彰子の要求を飲むことになるし、 勝つと言う事は麻由美さんを傷つけることになる。 僕の気持ちは揺れ動きました」 名簿を貰いに行った時泣いたのはその為だったと麻由美は知った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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