テーマ:寂寞の中で(1008)
カテゴリ:ショート・light&serious
今日は両親のたってのお願いである男性と会う約束になっていた。
両親も親戚中みんながもろ手を挙げて推薦するその男性は・・・ 確かに堅実で実直でま四角を絵に描いたような人物。 私の両親など 「この人を逃したらもう後は何も無いからね。この歳になって一人身なんて」 と、まるでお一人様を悪く言うような口ぶり。 でもね、私にも好みって言うものがあるんだけど。 はあとため息を大きくついて身仕度をのらりくらりとしていると、どこからともなく囁くような小さな声がした。 「そんなに嫌ならいやってはっきりと言えばいいのに」 え? だれ? 周りを見回しても自分の部屋の中には誰も居らず、なんだ空耳かと苦笑いした。 階下から母親の電話で喋る声がしたのでこれと勘違いしたのかも。 時間に遅れるのは失礼だから少し早めに家を出た。 何時もの電車で最寄りの駅に降り立ち、約束された小料理やへのんびりと歩くと、 今まで余り気がつかなったことが目に付く様になった。 ああ この家はこんな外回りだったんだとか、こんなこ洒落たお店も入ってみたいなとか、 なんだかそれが楽しくてウキウキとした気分になってきた。 でも、これからの事を考えると気が重くなる。 どうやって断わろうかなんて事ばかり頭の中でぐるぐると考えてしまい、 今日会う男性がどんな人だったかなんて思いだせなくなった。 ま いいや どうせ断わるんだし。 そんな事を考えて小料理屋に入ると約束されていた小部屋に通された。 すでに男性がきちんと正座して背筋を伸ばして待っていた。 ちょっと気おくれした私は挨拶をしながら頭を下げて 「あの 遅れて済みませんでした」 「いいえ いいです。噂には聞いていましたが大変お綺麗なかたですね」 は? 一生懸命になって御世辞を言おうとしているのは分かるけど・・・ 「あ えっと 遅れたのはそこの角で何かが付いて来ちゃったんで・・」 え?? 「それを払おうとして頑張ったんですが・・・」 ・・・・・・・ 「連れてきちゃいました」 ・・・ ・・ 「まあ 一人か二人なので・・」 「あああああああああああああ 僕 駄目なんです!!!!! 失礼します」 慌てて部屋を飛び出した男性の後姿を見て、 くすっと笑い、これって断るのはいい方法かもね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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