「よい子」の研究 (2) 日本人の特徴と「よい子」製造の要因
「よい子」の研究 (2) 日本人の特徴と「よい子」製造の要因日本人には良いも悪いも、他国とは違う特徴があります。読者の方からもメールをいただき、日本人の特徴とよい子の関係をまとめたくなりました。「日本人は融通無碍」とか「曖昧な国、日本」などと言います。確かに、年末になると、12月24日にはクリスマスイブを祝い、イエス様に信仰を誓います。そして6日たつと大晦日に神宮にいって初詣をして八百万の神様に感謝し、ほどなく仏教の観音様にお参りに行ったり、仏様のお話を聞いたりします。「いったい、あなた、どうなっている?」と聞くのも失礼なぐらい、イエス様も、神様も、仏様も信じているのです。私はキリスト教でもない若い二人が、教会で「永遠の愛を誓いますか?」と言われてキリスト教の神の前で誓っている姿を見ると、どうも「愛していると言っているけれど、最初からウソかな?」と意地悪に思ってしまいます。でも、誓っている二人は真剣だというところが日本人のおもしろいところです。先日、国際学会で話をしたときに、「本音と建て前」について、英語でどのように言ったらよいかを専門家と話してみましたら、「日本語でhonne, tatemaeといって、その意味を説明する」ということになりました。「原発は安全」というのが建前、「原発を僻地に作る」というのが本音です。二枚看板といっても良いかも知れません。また、読者の方からは、日本人は「見て見ぬふり、聞いて聞かぬふり」ができるという指摘がありました。確かに、街に立っている電柱と絡み合った電線は日本人の目には入らないと言います。日本の伝統芸能であり人形浄瑠璃は黒子が舞台の上で人情を操りますが、日本人は黒子に存在を見ないで、人形の動きで涙を流します。「見ざる、聞かざる、言わざる」の3匹のサルも同じことなのかも知れません。・・・・・・・・・戦前には野球をやる子は悪い子、戦後は野球をやる子はよい子。終戦前まではアメリカは鬼、終戦の翌日にはアメリカは善意の国。高度成長期には大量生産が三種の神器、成長期が終わったら大量生産は悪い子。1970年までは寒冷化が悪い子、1990年からは温暖化が悪い子。前は害虫駆除がよい子、今は生物多様性がよい子。311までは被曝は悪い子、以後は被曝を避けるのが悪い子。融通無碍で何でもOK。首相が首相になる前には「公約を死守する」と言い、首相になったら「公約は破る」と言ってもさして問題にはならないということです。そういえば、あれほど自衛隊に反対していた社会党(旧)が政権を取ったらすぐ自衛隊の観艦式に社会党の党首が出席して敬礼したのを見てチョックを感じたことを思い出します。・・・・・・・・・どうやら、これまで日本人を信頼し、信じてきたのですが、ひょっとすると日本人は「得になれば神様は何人いても良い(魂よりお金)」、「本心を隠したいから建前を言う」、「都合の悪いことは見ないようにする」、「言うことはいつ変えても良い」という情けない民族なのかも知れません。「よい子」がぐるぐる代わり、それが一日にして変わって、前の日まで「よい子」だった人が、「悪い子」としてバッシングを受ける、そのことを朝日新聞は良く計算にいれて、いつも「よい子」側に就くか、もしくは自分で「よい子」を創作しているのではないかとも思います。それに加えて、どうも「ウソつき」という感じもします。ネットなどで「ウソをついて他人をバッシングする」という人が多いのも気になります。この前、東大で講演したときの質問の半分ぐらいが、私が言っていないことをネットで誰かがねつ造したものが多く、それを根拠に質問される。だから「私はそんなことを言っていません」というのを繰り返すことになりました。人を批判するときに、批判する人が本心から違うことを考えているのではなく、事実や考え方ではなく、ある特定の人間をつぶしたいという希望だけが先行しているようにも思えるのです。これも「よい子」はグループを作り、「悪い子」をいじめるという「事実や考え」ではなく「人」を的にするからでしょう。あるテレビで、私が石油や石炭の埋蔵量は多いから心配することはないと発言したら、朝日新聞の解説委員と紹介された人が「武田さんは論文をどのぐらい出していますか」と間髪を入れずに質問したのには驚きました。もちろん見当外れの質問だから答えませんでしたが、埋蔵量が多いという考えに異論があるなら、そのことを質問すれば良いのです。私も日本人ですから、日本人を批判するのは自分自身にムチを打っているようで気分はよくありませんが、今回の福島原発のようなことが起こった原因が、日本人の悪いところに原因があるなら、それを直す良い機会なのかも知れません。そしてそれは「よい子の生産」に大きく関係しているように感じられます。(平成24年1月18日)武田邦彦