カテゴリ:諸事一般
一般向け「緊急地震速報」の問題点ががまた明らかになった。【緊急地震速報は今回も機能しなかった。8日未明に水戸市と栃木県茂木(もてぎ)町で震度5弱を観測した地震。強い揺れが来る前に地震の発生を知らせるはずが、速報が出たのは水戸は揺れの40秒後、茂木でも38秒後で、運用に課題を残した。】(【】内は記事から一部引用、Google ニュース/読売新聞:2008年5月8日)
記事には「運用に課題を残した。」とあるが、「課題を抱えたまま運用に踏み切られた。」と言い換えるほうが事実を正確に反映しているだろう。そのあたりのところを気象庁のHPから関係記事を次に引用しておく。 【緊急地震速報の限界 (時間) ・情報を発表してから大きな揺れが到達するまでの時間は長い場合でも十数秒~数十秒 ・震源に近いところでは、情報の提供が主要動の到達に間に合わない (誤報) ・1観訓点のデータを使っている段階ではノイズにより情報を発表する可能性がある(事故、落雷、機器の障害) (地震の規模等の推定の課題) ・特に大規模な地震に対しての推定精度の眼界━地下の断層の破壊の途中に情報を発表(断層の大きさと位置が未確定) ・複数の地震が時間的・空間的に近接して発生した場合に、地震を適切に分離できず、的確な情報を発表できないことがある (震度推定の課題〉 ・統計的な距離減衰式による震度推計の精度の限界 ・表層地盤における増幅予測の眼界】(【】内は気象庁HPから一部引用/ページ「気象庁 | 緊急地震速報とは」) 上記の内容を見て驚かれたと思うが、これほどの限界点があったにも拘らず、一般向け運用を開始した事に、最初の二回の「緊急地震速報」が機能しなかった原因があるのは当然のことだろう。いま巷では、この「緊急地震速報」をめぐって便乗商法がはびこり、詐欺行為まで横行している事を考えると、気象庁及び政府が進めた一般向け「緊急地震速報」の早すぎる運用開始の功罪は少なくない。 前記の根本的に問題点のある「緊急地震速報」の開始前に、さまざまなメディアを通じて、さも「地震の大きな揺れが来ることが確実にわかる」かのような幻想を国民は与えられてしまったのだ。もちろん、「緊急地震速報」の問題点を指摘する少なくない意見もあったが、結果としてその事が隠れてしまほど、一般運用の誇大評価があいついだ。 そもそも、地震観測網の整備や、基礎的な地質や地下構造の調査が、正確な「緊急地震速報」を十分に可能にする程度までは進展していないように思われる。道路特定財源問題が世をにぎわしているが、正確な「緊急地震速報」のための財源を大幅に増やす事をもっと急ぐ必要があるだろう。 それでも、おそらく人的に大きな被害を引き起こす震度6強以上の大きな「揺れの到達予想」は、間に合わない確率も低くは無いだろう。だから、「緊急地震速報」の精度を高めることもさることながら、耐震住宅の整備に力を注ぐべきだろう。特に、自力ではそうした耐震住宅に改築できない弱者家庭への手厚い援助が重要だ。 エッセイは、次のページでいろいろ掲載しています。 遊邑エッセイ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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