「絡合(らくごう)力」から結婚制度を考察する
「絡合(らくごう)力」から結婚制度を考察する「絡合」という言葉があります。『絡合力』(ビオ・マガジン)という本を2022年に出版するなどして、私が今たいへん興味を持って研究を重ねているテーマです。「絡合」とは「互いに絡んでもつれ合う」という意味です。「絡合力」とは、本来「素粒子から生物に至るまで、宇宙にあるすべてのものにはつながり合おうとする力がある」という意味です。私はこの「絡合力」こそ、これからの世界が注目していかなければならない力だと考えています。元々人間は、「個」で生活することはできません。ですから、夫婦が基本です。人間以外の動物の生活の最小単位も「個」ではなく、オスとメスのつがいです。地球が誕生してから約46憶年、生命が誕生してから約37億年、そして約12億年前にオスとメスができました。オスとメスができる以前、生物は単純な分裂を繰り返して自己増殖していました。オスとメスに分かれたことで、生物は、オスないしメスが持つ遺伝子の良いところを取り込み、あるいは足りないところを補い合って、新しい生命体を生み出すようになりました。オスとメスに分かれたからこそ、劇的に変化していく環境に適合することができる生命体をつくり上げる遺伝子の組み立てが可能になったのです。より強い遺伝子を生み出すためには、オスとメスが互いに力を合わせなければなりません。生命の基本は、オスとメスがそこにいる、ということにあります。「人は結婚して一人前」という、今でこそ古めかしくて反感さえ買いそうな言い方の本当の意味はここにあるのです。「なぜ結婚するのか?」という問題は、一見とても難しく、そう簡単に結論が出るようなものではないように思われがちです。科学の視点を少し離れて、筆者が生きてきた、その経験則からお話をしてみましょう――――。『かけがえのない国――誇り高き日本文明』 武田邦彦 ((株)MND令和5年発行)よりR0512331 44