令和元年7月1日兵庫県姫路市長記者会見内容(抜粋)、〜夏季25℃設定試行の取り組み
【メモの要約】 本日10月8日(火)に神戸新聞が報じた兵庫県姫路市長・清元秀泰(きよもと・ひでやす;姫路市による略歴はこちら)氏の記者会見は、2019年(令和元年)7月1日に行われたものである。夏季空調設備の設定温度を25℃とする医学的根拠は、大阪市立大学大学院特任教授・梶本修身(かじもと・おさみ;医学研究科・疲労医学講座;同大学院による略歴はこちら)先生によるものであるらしい。【記者会見の内容を報じるニュース】神戸新聞NEXT|総合|室温設定25度で 職員の8割強「効率上がった」、2019年10月8日 6:00 https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201910/0012770228.shtml【姫路市長記者会見】令和元年7月1日市長記者会見内容 | 姫路市公開日:2019年8月23日;更新日:2019年9月26日;ID:8689https://www.city.himeji.lg.jp/shisei/0000008689.html(引用始め)◯市長会見内容市長:お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。(中略)さて、それぞれの副市長から後ほど今後の抱負を述べてもらいますが、その前にもう1点だけ、私から発表事項がございます。今日から7月ということで、これから日増しに暑さが厳しくなってまいります。昨年も全国で熱中症の児童があって、滋賀県の大津では課外活動の途中に小学1年生が亡くなるという痛ましい出来事がありました。我々が想像している以上に夏の酷暑というものが進行しております。現在、市役所本庁舎におきましては、適正冷房ということで、執務室内の温度を28度に設定しております。しかしながら、職務を行う環境としては少々暑すぎるのではないか、暑さのために職務能率が低下しているのではないか、と私の医療系の仲間、友人からも実際にいろいろな場で話し合うことがありまして、私自身も自分の研究室であったりとか以前の職場でも「28℃は本当に効率がいいのだろうか。」と疑問を感じておりました。今春成立いたしました、働き方改革関連法ということもあって、「少しでも残業時間を減らしていきましょう。」とか国民の重要な政策・施策として国から出ているわけですけれども、執務室内の温度が仕事の効率に及ぼす影響について、酷暑が厳しくなる今月16日から8月30日までの間、市役所本庁舎の執務室内の温度を25度に設定して、職務能率がどのように変化するのかについて、姫路市役所の中ではございますが検証を行うこととしました。なお、試行に当たりましては、国にも相談し、了承を得ております。具体的に医学的なことについては、私の友人である大阪市立大学の梶本教授が5月頃に健康のセミナーをした時に、彼がシンガポールやドバイなど熱帯に属する国の経済発展はエアコンによってもたらされたという事例を紹介し、また医学的にも22℃から28℃までの温度設定を変えることによって、作業効率が変わってくるという論文を紹介していただき、場合によっては今、酷暑の中で作業効率が落ちて残業が延びていくというようなことであれば、総量としてのエネルギーは、残業代でエアコンを使ってしまうこともある。エネルギーに関してはピーク時電力という言葉が出てきます。やはり一番温度が高い時に電力消費量は上がっていて、経済活動に支障をきたすかもしれないという考えもありますが、もう一つは働き方改革で早く仕事を終えて残業を少なくしていく方向性もあるんじゃないかと。これは難しい天秤の話なんですけれども、今回、私自身も色んな有識者であったりとか市の職員とお話をして働き方改革の一助になるのであれば、今年はトライアルという形で25℃設定でやってみようと、それで職務能率の維持・向上と適正な執務室内の温度管理について、研究というかアンケート等で検証してみると、場合によっては残業時間が変化するのかとか、職務の内容によって変わるのかとかも踏まえて、今年、働き方改革元年ということでありますので、まず「人をたいせつにして人に寄り添う行政」という中で、どれぐらいエネルギーと働き方のバランスのトレードオフになっていくのかという、今まではクールビズをやってきたんですけれども、人によって暑さ・寒さの感じ方は違うのですが、実は補足しますと、少子化対策の一つの中で「早く家に帰る」「家事を手伝ってもらう」という少子化対策になるという論文もあるんですね。残業を減らして早く帰してあげたいということです。夏休み中ですし、できれば市職員自らが働き方改革を進めていくのに、「25℃プログラム」という形でやっていきたいと思います。医学的なこと、科学的なことについては、大阪市立大学の梶本教授、よく「ほんまでっかTV」などによく出ている、私と大学時代同じグループで実習していた仲なので、取材されるのであればご連絡していただければと思います。彼の書いた論文がありまして、具体的には温度を変えた時の作業効率とか、彼の論文の中を引用すると1日の就業時間を8時間とすると、平均室温が25℃から28℃に上昇すると、作業効率が6%下がって、29分間残業が増えると。別の論文によると温度設定を3℃上げることによって15%の省エネとなる。およそ1平方メートルあたり72円の節電になるということだそうです。ところが作業効率で見ると、1平方メートルあたり13,000円の損失になるということで、お金で見合うとどちらがいいのか分からないということ。それと近年経済発展が著しいシンガポール、ドバイなどの酷暑の都市がエアコン導入後急速な発展を遂げたと。シンガポール建国の父、李首相も「シンガポールの発展は私の力だけではなくエアコンのおかげだ。エアコンがなければこの蒸し暑い国で誰が真面目に働くだろうか。」ということをサマリーしていて、既に一人当たりの名目GDPが、2018年度、日本は26位になりましたが、シンガポールは8位になっている。近年は労働科学の観点から労働者が健康かつ最小の時間で最高のパフォーマンスを発揮できるようにすることが社会全体の生産性を上げていくということであるというような論文が多くなってきていると、今回、働き方改革の中で医師としても25℃設定にして一度この夏検証してみようということになりました。私は医者であり科学者でありますから、科学的なエビデンスを一度検証して、それが本当に良ければ、エネルギー的なことは電力会社さんとの相談になると思いますが、行政の方から試してみたいと思っております。(後略)◯質疑応答要旨・夏季25℃設定思考の取り組みについて記者:夏季25℃設定について簡単な資料があれば提供してほしい。市長:我々が参考にした梶本さんの論文を見てほしい。これも結論があるわけではない。環境省はエネルギー効率、脱炭素社会に向けての取り組みをされている。クールビズの取り組みをしてもやはり28℃はきつい。特に温度だけではなく、湿度も大事。実は湿度が50%以下の場合は、温度が多少高くなっても平気だが、日本のように高温多湿では、湿度が60%以上になってくると28℃ではしんどい。梶本教授の講演を聞いたら、人間というのはセットポイントセオリーというものがあって、常に一定の心拍であったり呼吸であったり体温を維持する、そのために周りからの温度変化が厳しければ厳しいほど中枢の方でいろいろと操作する必要があり、汗かいたり血管広げたり、というのに疲れてしまうから仕事に集中できない。環境問題とのトレードオフの絡みもあるので、とりあえず電力消費量がどうなっていくのか、それで残業時間がどうなるのか、今年一年それでやってみて、職員さん達の希望も聞いてみる。そこであまり変わらないとか、悪かったなら、また元に戻すかもしれない。記者:今回、3℃下げることによる電気のプラス料金はどれくらいか。市長:試算はないが若干増えると思う。過去の論文から言えば、省エネとしては1平方メートルあたり72円あがる形になるが、何千万円になるということは絶対ありえない。一方、温度が上がると1平方メートルあたり13,000円の損失が生じると。ということは、温度下げたら、13,000円の生産性があがるのかどうか分からないが、希望的観測で、数十万円の投資で数百万円以上のメリットがあるんじゃないかと考えている。具体的にはやってみないとわからない。記者:環境省にも連絡したということだが、28℃設定を推奨している環境省として姫路市の姿勢をどう受け止めたのか。全国的にも同じことをやっている所があるのか。市長:環境省としては、28℃でクールビズにすれば25℃の時と変わらないというものをWEB上で公開されている。しかしクールビズをしながら28℃から25℃に下げることについては検証はない。自治体としてこの取り組みは全国で初めて。人をだいじにする市政をやっていく中でまずは市の職員の方々からどんな反応がでるのかということを確認してみたい。記者:「25℃」に対する明確な根拠があるのか。市長:1966年の厚労省の「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」および「労働安全衛生法」の「事務所衛生基準規則」で定められた室温の範囲が17℃から28℃であったと。さらに1966年の厚生科学研究「ビルディングの環境衛生基準に関する研究」(小林陽太郎博士)の中で「許容限度の上限」が28℃と設定されたと。記者:私は暑がりで25℃くらいにしたくても家族は26℃くらいに上げたがる、そういったものも科学的なものに基づいているのか。市長:筋肉量の相違により快適と感じる至適温度については、女性が男性に比べて2℃ほど高いということが科学的に報告されている。同じオフィスの中でも男性が多い職場とか、風の吹き出し口に近い場所とか、随分と違ってくると思う。一応、その部局やエリアの中で、場合によっては女性とか服装で調整してもらうということはあると思う。寒すぎれば席替えを考慮したりする必要はあると思う。これをやる趣旨は、省エネに逆行しようということではなく、まず労働環境を整えることによって、働き方改革をポジティブに進めたいということが前提にあるということを間違えないでいただきたい。「健康で働いてもらいたい」という強い希望があって、今年やってみようかなということだ。記者:残業時間がどの程度減少したら成果があったと言えるか。市長:29分残業が減ったら論文どおりということになりますね。成功か失敗かはかかる電気代にもよると思う。また湿度と温度の兼ね合いにもよるので、一概には言えないと思う。働き方改革をやることによってもう少し少子化対策にもつながるのなら、ぜひそっちの方にいきたい。ですからかかる費用と残業代金を時間比較するのは難しいけれども、もしエネルギー消費量がそれほど上がったわけでもないのに、残業代が減ったら、それは大成功だと。9月の時点で職員アンケートをとって、最終的には電力使用量や残業時間を兼ねて解析したいと。その解析にあたっては第三者的に梶本さんに相談したりと、科学的な見地で評価があってもいいかなと思う。記者:良い結果が出た場合、市内の民間企業への呼びかけも考えておられるのか。市長:結果を示したうえで、単なるエネルギー総量だけではなく、ピーク時電力にもそれほど影響を与えないということであれば、商工会議所であったり、地域でも考えて見られてはどうですかという提案はしてもいいかなと思う。姫路の全体の生産性を上げることに繋がるという判断があれば、積極的に働きかけはあるかもしれない。記者:民間の企業のみならず、結果よければ市立の小学校や施設で導入されるというお考えは。市長:教育効率に繋がることであれば。やはり学校本来は学び舎で、今年度エアコンを導入して来年度末には終わるから、フィードバックするのは当然だと思っている。特に病院などにも積極的にデータとして渡していきたいと思っている。職種、目的別なので、一つの側面かなと思う。(後略)(引用終わり)