岩谷宏さんが聴くレゲエとはどんなものだろう?
【PABLO MOSES / MUSIC IS MY DESIRE LP「A SONG ('80)」収録】
岩谷宏さんが稀にレゲエについて言及する時、よく想像したのがこのことだ。なんせ固い文章を書く彼のことだ。能天気なレゲエなどとうてい聴きそうもない。更に氏のセンスや音楽的嗜好を考慮し、いつも唯一思いつくのがこのPABLO MOSESだった。驚異的な体温の低さ、その冷めたボーカルと厳しい視線、淡々としていながら強い意志を感じるところは両者に共通する。
この「MUSIC IS MY DESIRE」という曲は、PABLO MOSESの楽曲の中では珍しく、ちょっと洒落たエレピ?が導入されているのが非常に大きな特徴だ。時折入るチープなオルガンの音も効果的。ミディアムテンポで流暢なリズムにのって歌われるのは、あくまでも体温の低い淡々としたPABLO MOSES節だ。これが見事にマッチして摩訶不思議で、かつ絶妙な音空間を作り出している。もちろん私の大好きな曲で、全レゲエのベスト20に必ず入る。(だけどこの曲を他の方が褒めてるのを見たことは皆無。なんで?)とりあえず私からこの曲に岩谷宏レゲエ賞を差し上げておくことにしよう。