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それから目線を紅茶に移す。紅茶、というよりもミルクで煮出したチャイのような淹れ方をしているようだ。黙礼だけで彼に断りをいれると、手にとったカップからチャイを一口含んだ。ほんのりと、甘い。香辛料は使っていないようだが、茶葉とミルクがお互いの香りを引き立てあっている。いい味だ。そうして口の中で香りを転がすかのようにお茶を味わっていると、彼女の頭は徐々にシャンとしてきた。ここでナミはようやく、何故彼が朝からここにいるのか、そしてその原因となった神矢老人の不在の理由に思い至った。
ナミの問いに、レイジの顔が深刻な表情を帯びる。電話の為に少し離れていった彼の身振りを契機にして立ち上がると、彼女は台所へと入った。昨晩の経緯を思い出している内に、残り物が大量に冷蔵庫の中へと押し込まれていることを、彼女は思い出したのだ。電話をかけているレイジが視界の隅に入る,狼一号。どうやら上手く相手を捕まえたようだ。一瞬だけそれを意識した後、目を手元に戻すと彼女は手早く朝食の準備を整えていく。冷蔵庫の中を簡単に点検し、すぐに食べられるものを中心に取り出していく。 食事を整えることに思ったよりも時間がかかったが、相手の電話の時間は更に長い。食卓の準備が全て整っても、彼はまだ携帯を持ったまま部屋の向こうで会話を続けていた。話の内容は聞こえないが、冷静なままで変化のない背中を見ている限りでは、大事は避けられているようだ。会話は終盤にさしかかっているらしい,巨人倍増。居間のソファではなく台所の傍、食卓としていつも使っている小さなテーブルを選び、食べものの皿を運んで、彼女は全てを整えて彼を待った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.09.01 10:27:38
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