★かなしきしょうぢょぢごく 『岡崎里美・17歳の遺書 愛なんて知らない』れびゆ★
以前にも掲載しましたが、ネット上で見つけた「★かなしきしょうぢょぢごく 『岡崎里美・17歳の遺書 愛なんて知らない』れびゆ★」です。名文です。 たくさんのものがみちあふれていながら、とても退屈でなにもないぢだい。 まいにちたくさんのひとたちと出会いながら、なぜか孤独なぢだい。 そんなぢだいを、あなたはどう生きていますか? ここに掲げられている写真は、かつてあるひとりのしょうぢょが、みずから命を絶つ前に、 ぢぶんのゆうぢんたちに送るために作った、わずか30部の、手づくり詩集の1ぺいぢです。 しょうぢょの名は岡崎里美(おかざきりみ)。1971年7月30日、わずか17歳にしてかのぢょは、ビートルズの曲につつまれて、ガスの栓をひねりました。 そう。かのぢょは、この虚しきぢだいの、そのはぢまりの時にすでにこの世を儚み、独り命を絶ったのです……。 かのぢょの遺品の中には、膨大な量の詩のノート、そして多くの手紙がありました。 14歳から17歳までの4年間の間にかのじょは約30冊のノートに詩を書き記し、死の直前にはたくさんの手紙を書きました。 『ある、とうひ』 それは、タバコのけむりのかいだんであり なんでもない人間と、きすをすることであり いつわりのもんくを ごたごた友にいうことであり 一万円さつをもって、町へでることである それは、ゲバ棒をにぎって人をぶんなぐることであり gogoをおどることであり 音楽に身をおくことである この詩は、かのぢょの14歳の時のさくひんです。 今から30年前。人々は今よりもはるかに賢かったとはいえ、その中でもこのかのぢょの視 線は、あまりにもそうぢゅくであり、そして、絶望的でした。 かのぢょは果たして、どのようにしてこのような眼を持つにいたったのでしょう? かのぢょは、死の直前に、原稿用紙9枚にわたる『自殺への序曲』という名の遺書を書き、 そこで自らの生い立ちを語っています。 13歳の時に、かのぢょはおとこを知りました。 それからかずかずのおとこを遍歴し、高校を中退し、スナックで働きました。 両親は離婚し、かのぢょは母親とふたりで暮らしますが、母親は離婚のストレスで分裂病を患ってしまいます。 あまりにも類型的な不幸。 そんなできすぎた不幸の中で、かのぢょが唯一愛したもの。それがビートルズでした。 いつか、黄色い潜水艦に乗って、あこがれのペパーランドへ。 それが、かのぢょの夢。 しあわせって ありがね全部はたいて たくさんたくさん 花をかいこんでしまう こと なのかもしれない 15歳の時の詩です。 かのぢょはすでに、この世の幸福が、げんそうにすぎないことを知ってしまっていました。 かのぢょは、心の空白を満たすために、たくさんの詩を書き続け、愛を探すために、たく さんのおとこと出会いました。 しかし、そうすればそうするほどに、かのぢょの孤独と絶望は深まってゆき、詩を書くこ とも少なくなってゆきます。 そのかわりに、かのぢょはたくさんの手紙を書くようになりました。 ある手紙は、投函され、またある手紙は、そのまま手元に残されました。 遺書の中で、かのぢょは、母親に宛てて、出し損なった手紙を、すべて投函して欲しいと 書いています。 死後、かのぢょの詩は、ある作家の目にとまり、その作家の手によって、1972年槙出版と いうところから『愛なんて知らない』というタイトルで出版されました。 わたしがかのぢょの詩集に出会ったのは、とある古本屋です。 その本は、槙出版のものではなく、a企画という聞いたこともない出版社から出た復刻版 でした。 表紙は真っ黒で上に挙げたぺいぢの絵が、たくさんの花の横に載せられてあり、わたしは この哀しい絵に惹かれて、この本を手にしたのです。 家に戻り、わたしは永らく聴いていなかったビートルズのアルバム『イエロー・サブマリン』をかけながら、かのぢょの詩を読みました。 希望に満ちた華やかなオーケストラに乗って、黄色い潜水艦は、ペパーランドを救いに旅立ちます。 かのぢょは、果たしてこの希望の黄色い潜水艦に乗ることができたのでしょうか? いちにちに80人が、みずからの命を絶つというぢだいに、わたしたちは生きています。 死んではいけない。生きていれば、いつか幸せになれる。 そんな言葉が叫ばれてもいますが、わたしにはそれは、ひどく虚しく、かえって人々の心 を不安に陥れる、こどもだましな言葉のようにも聞こえます。 肉欲でもなく、金でもなく、ただぢぶんの居場所を探すために生き、そして疲れ果ててし まったしょうぢょ。かのぢょにとっては、そんな彼らの言葉よりも、冷たい風の音のほうが、 まだ心に安らぎを与えたことでしょう。 枯木の上の 星のように 私は 生きていたい ものです ただ祈ることと 待つことと 夢とLoveしか知らないで 私は生きて いたいものです 15歳のときの詩です。 今、この世界にみちあふれているたくさんのもの。そして、札束。 それらは、かのぢょの絶望の前には、まるで無価値でした。 そして、かつてかのぢょが夢見た幸福の国ペパーランドも、 もはやこの世にはありません……。