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桜井ジャーナル:マスコミが報道しない事実    ―見えない「帝国」の闇 【非公式情報】    

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2006/06/09
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イスラム武装勢力、アル・カイダのイラクにおける指導者とされるアブ・ムサブ・アル-ザルカウィを空爆で「除去した」とイラク政府は6月8日に発表した。これでイラクは安定に向かう・・・とは思えない。イラクで抵抗運動が激しくなった直後、アメリカ政府などはサダム・フセインが拘束されるか殺害されれば治安が回復するかのごとく宣伝していたが、実際は違った。今回のケースも同じ事だと予想している人は多い。

フセインやアル-ザルカウィが武装闘争の原因だと宣伝するのは、「一般イラク人による占領軍に対する抵抗運動」という事実を認めたくないからであろう。フセイン拘束後は、アルザルカウィのような外国人(彼はヨルダン出身)に率いられた外国人グループが爆弾闘争を行っているのであり、イラク人は反米でないということにしたいに違いない。ファルージャでの掃討作戦(事実上の住民皆殺し作戦)を正当化するためにアルザルカウィの名前が利用されていたことを思い出す。

CIAとの関係が深いことで有名なシンクタンク、CSISが2005年に公表したレポートでさえ、イラクで活動している外国人は抵抗運動を行っている人間の10%以下だと推測している。イラク人の支持がなければ外国人がイラクで活動することは困難だと考えるのが常識的だろう。

ともかく、アメリカ軍による「掃討作戦」で非武装のイラク市民が多数、殺戮されてきた事実は隠しようがない。正確な人数は不明だが、数万人から十数万人が犠牲になっていると言われている。こうした犠牲者を出しているアメリカの占領政策を批判する人は少なくない。

アル-ザルカウィの殺害を含むアメリカ軍の「掃討作戦」でイラク人にアメリカに対する恐怖心を植えつけ、占領に逆らわない従順な人間を作り上げられると信じているアメリカ人はまだいるようだ。が、ベトナム戦争でもラテン・アメリカの軍事政権を使った支配でも失敗したことを思い出すべきだ。同じような占領政策を採用しているイスラエルでも思惑通りに事態は進んでいない。「恐怖政治」は支配者に対する憎しみを生み出すだけのことである。

このところ、アメリカに対する風当たりは強まっている。CIAによる非合法の拉致/拷問工作は欧州評議会(民主主義と法の支配、人権保護などを目的とする国際機関)の報告書で厳しく批判され、アフガニスタンでも市民を殺害するアメリカ軍に対する怒りは高まり、ソマリアでの秘密活動にも批判の目が注がれている。

国際的に苦しい立場にあったアメリカにとって、今回のアル-ザルカウィ殺害発表は絶妙のタイミング。ひとまずアメリカ政府に対する逆風を弱めることはできるだろうが、これで反米武装闘争の原因を彼に押しつけることはできなくなったことも事実。フセインに続き、アル-ザルカウィという「切り札」を使ってしまい、アメリカの手札はますます悪くなったとも言えるだろう。後はオサマ・ビン・ラディンを引っ張りだすか、イランかシリアあたりにでも責任を押しつけるつもりなのだろうか?

アル-ザルカウィはシーア派とスンニ派の対立を煽っていたとする話も伝わっている。アル-ザルカウィが死ねば、両派の対立は緩和して情勢は安定化すると期待する向きもいるようだが、アメリカ政府にとって最も恐ろしい展開は両派の共闘である。両派が手を組んだらアメリカの手には負えなくなる。アル-ザルカウィの死はアメリカ政府にとって「良い知らせ」だと言うことはできないかもしれない。





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Last updated  2006/06/12 11:37:13 AM
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