桜井ジャーナル：マスコミが報道しない事実　　　　―見えない「帝国」の闇 【非公式情報】 　　　

アメリカの次期大統領を決める選挙戦が続いているが、この戦いで勝利したのはイスラエル・ロビーだとする声が早くも聞こえてきた。共和党の候補に決まっているジョン・マケインだけでなく、民主党のヒラリー・クリントンもイスラエルに対する絶対的な支援を約束してきた。残りのバラク・オバマも「反イスラエル批判」を払拭しようとしているのか、最近ではイスラエルに対する支援は不動のものだと発言している。

4月のことだ。アメリカのネットワーク局、ABCのニュース番組で「イランがイスラエルを核攻撃した場合」の対応を問われたヒラリーは「イランを消滅させる」と断言したのだが、この設問は奇妙である。イスラエルが世界有数の核兵器保有国なのに対し、イランはまだ保有していない。

アメリカとロシアは別格として、その他の国が保有している核弾頭の状況を見ると、フランスは多くても350発、イギリスが200発、中国は160発以下、インドは70から350発、パキスタンは30から80発、日本で大騒ぎしている朝鮮が最大でも10発と言われている。それに対してイスラエルが持っている核弾頭の数は75から200発、ジミー・カーター元米大統領によると150発だ。しかも、イスラエルは1973年に中東戦争で実際に核兵器を使おうとしたと言われている。

つまり、イランがイスラエルを核攻撃する可能性よりも、イスラエルがイランを核攻撃する可能性の方がはるかに大きい。ヒラリーが大統領に当選したならば、イスラエルがイランを核攻撃したときに彼女はどのように行動するのだろうか？ABCはそう聞くべきだった。イランを消滅させると言い切った以上、ヒラリーには当然、この質問に答える義務がある。

5月になってから、アメリカの政治家は相次いでイスラエルを特別視、つまりイスラム教徒を軽視／敵視する発言をしている。例えば、ジョージ・ブッシュ大統領はイスラエルを訪問した際、同国の国会で、アメリカが「イスラエルと最も近い同盟国」であり、「世界の中で最高の友人」であることを誇りに思うと発言しただけでなく、イスラエルは神に選ばれた民の母国だと言ってのけた。勿論、イスラエルの「テロ」で故郷を追われて難民となったパレスチナ人、イスラエルが占領地で行っているアラブ系住民に対する弾圧に触れることはなかった。イランに関し、マケインとブッシュの主張に大差はない。

6月に入り、マケインとオバマは相次いでイスラエルのロビー団体のAIPACで講演、イスラエルとの同盟関係を強調する一方、イランに対しては敵意をむき出しにした発言を行っている。その直後にオバマもAIPACで講演、イスラエルを守ると誓った。しかもエルサレムはイスラエルの首都であり続けると発言したため、イスラム教徒から反発の声がでている。

一時期、アメリカのニュース番組の出演者やヒラリーは、1968年6月に暗殺されたロバート・ケネディの話を持ち出し、物議をかもした。オバマが暗殺されることを願っているかのようにも聞こえたからである。そうした事件が起こらなければ、アメリカの大統領選挙は事実上、オバマとマケインの戦いになる。