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テーマ:日々自然観察(9907)
カテゴリ:昆虫(その他)
写真を撮っていてアレッと思ったのは、1種類だと思っていたアザミウマに3通りのタイプがあったことである。上に掲げた全身色が濃い褐色(頭部胸部がやや淡色の個体もある:下から2番目の写真)で大型のタイプが最も多く、下に示した色の薄く小型のものは全体の1/5かそれ以下である。他に中ぐらいの大きさで全体的に色が少し薄い個体(5番目の写真)も居たが数は少ない。
以前掲載したアザミウマの写真は、顕微鏡写真の様な感じで平面的な像になっているが、新システムでは普通の写真の様に立体感が出ている。触角の1つひとつの節や、毛の生え方もかなり良く分かる。残念ながら、毛の生え方は、掲載した写真では倍率が不足でやや不明瞭だが、原画をピクセル等倍に拡大するともう少しはっきり見える。
これだけ詳細が分かると、巧く行けば、このアザミウマの種類が判別出来るかも知れない、と言う気になる。すっかり忘れていたが、1年ほど前に「農作物のアザミウマ」と言う本を買ってあった。これには26種のアザミウマ(クダアザミウマ科7種、アザミウマ科19種)についての詳細な記述がある。この本に拠ると、クチナシに寄生するアザミウマとして、クロトンアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ハナアザミウマ、ヒラズハナアザミウマの4種が挙げられている。この内、前2者は全く異なる外観をしており、明らかに写真のアザミウマとは異なる。残るは、ハナアザミウマとヒラズハナアザミウマの2種である。
この2種は、外見的には非常によく似ている。しかし、ヒラズハナは単眼域に長い刺毛が一対、前胸背板の前縁と後縁の双方に長い刺毛を持つのに対し、ハナでは単眼域に2対、前胸背板の後縁のみに長刺毛を持つ。横から見た写真(上)を見ると、単眼域には2対の長刺毛があり、また、前胸背板の前縁には長い刺毛は認められない。これは、ハナアザミウマの特徴と一致している。 九州大学の「日本産昆虫目録データベース」には、アザミウマ科だけで176種が登録されている。これに対し、「農作物のアザミウマ」に載っているアザミウマ科はたったの19種。しかし、このクチナシに毎年集るアザミウマは極く普通種であろうし、濃色型と淡色型(下から2番目の写真:頭部胸部が淡色)の2型あること、「本種(ハナアザミウマ)は各種の花卉からも発見されるが、その被害の実態については不詳である」と書かれていることなどから、少なくとも色の濃い大型の雌は、ハナアザミウマとして良いのではないだろうか。
しかし、上に示したやや小さく色も少し淡色の個体は、横から撮った写真がないので、何だか良く分からない。ヒラズハナアザミウマかも知れないが、文献に拠ればヒラズハナの方が一般に大きいとされている。 小型の色の薄い個体は、アザミウマの雄である。アザミウマの雄は常に雌よりも淡色で小型の様である。雄の形態については詳しい記述がないので何とも言えないが、多分ハナアザミウマの雄であろう。しかし、2枚の写真を較べると、大きさや触角の色に差異がある。或いは、ヒラズハナその他の雄が混じっているのかも知れない。
ところで、このアザミウマの雌は、時々妙な踊りをする。腹部をくねらせてフラダンスの様な踊りをするのである。忙しく歩き回って居たかと思うと、突然止まって踊り始める。暫くすると、また走り回る。この繰り返しである。 雄が求愛行動として踊るのなら分かるが、雌が何故この様な行動をとるのか全く不可解である。
今日の写真は、真っ白に近いクチナシの花を背景にしているので、カブリを生じてやや鮮鋭度が落ちている感じがする。被写体によっては、もう少しカチッとした写真が撮れるのではないだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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