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テーマ:日々自然観察(9876)
カテゴリ:植物(草本)
実を言うと、閉鎖花の時期はもう過ぎていて、今は狂咲きの開放花の方がずっと多い。しかし、この開放花、キチンと開かないので観賞には堪えない。何とも中途半端な代物である。
閉鎖花と言うのは、花を開かず、と言うか、花弁が無く、開く前に自家受粉で受精して、開いたときには成熟した種子だけが出て来る「花」である。始めは、上の写真の様に下を向いているが、やがて上を向き、果実は3つに開裂する(下)。
上を向いたときには、成熟した種子はもう休眠に入っているのが普通である。休眠に入った種子は、播いても一定期間の低温を経ないと発芽しない。しかし、上を向く前のまだ白っぽい種子はまだ休眠に入っておらず、これを播くと、直ぐに発芽する。今はもう秋なので意味はないが、スミレを増やすときには、この白い種子を使うと、年内に充分成長し、翌年にはシッカリ花を咲かせることが出来る。
個々の種子はどの様な顔をしているのか、超接写システムで撮影してみた(下)。種子の長さは約1.5mm、直径は1.2mm前後である。種子の上側にヘソの様なものが見える。一体何であろうか?
こう言う構造を見ると、これは種子に栄養を供給した組織(胎座)が付着していた跡ではないかと思ってしまう。しかし、このヘソは果実の中心を向いている。閉鎖花が開いたときには、果実の中心には何もない。スミレの種子に栄養を供給する胎座は何処にあるのであろうか。
そこで、まだ若い閉鎖花を裂いて中を見てみることにした。何と、残っている若い閉鎖花は最初の2枚の写真に写っている閉鎖花、ただ1個だけであった。これを裂いて中を見たのが上の写真である。 果皮の内側に、何やらペラペラしたものが沢山付いている。恐らく、これが栄養を供給する組織(胎座)なのであろう。また、左下の種子には、何か半透明の組織がくっ付いているのが見える。これが剥がれたのが、そのペラペラした物と思われる。そこで、右側の2個の種子を除去して、反対側から撮影してみた。
この半透明の組織は、確かに種子にピッタリとくっ付いている。これが栄養を供給する組織(胎座)であるのは間違いないであろう。種子の無いところにあるペラペラした物の形を見ると、恐らく、写真では見えない裏側にも、この半透明の組織がくっ付いているものと思われる。 しかし、そうだとすると、種子の上側にあるヘソのような構造は一体何なのであろうか? 本当は、開放花にくっ付いた種子の写真だけを掲載して終わりにするつもりであった。しかし、何時もそうだが、細かい構造を見ると何やら疑問が湧いてきて、更に何かをせねばならなくなる。その何かをすると、また更に疑問が湧いて来て・・・となり、結局のところ???で終わるしかないことと相成る。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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スミレの閉鎖花というものがあるということは知っていましたが、この緑色のものは閉鎖花とは知りませんでした。これは花が咲いたあとにできる未成熟の種の袋だと思ってました。
また、閉鎖花からできる種は休眠しているということも知りませんでした。庭にたくさんはえているスミレ。知らないことばかりでした。 いろいろと教えていただいてありがとうございます。勉強になります。 (2008.11.17 18:08:55)
>結局のところ???で終わるしかないことと相成る。
それでもとても面白く、 この先どうなるんだろう???と、 胸をわくわくさせながら、拝読しています☆^^☆ 分解してみるあたりが、さすがアーチャーンさんですね♪ 中の仕組みなど拝見しておりますと、 人間の赤ちゃんが、お母さんのおなかの中で育っていくのと、 とても似ているような気がしました。 『次の命を残そう』という、 深い深い愛情のもとに、守られながら育っている気がします☆^^☆ (2008.11.17 20:51:34)
いつもながら勉強になります!
閉鎖花は知っててもここまでの映像は見れませんし その「白い種」を植えればって話も「!」でした。 普通の?種は寒さを経なければ発芽しない、、 なるほど~です。 三菱のマークのような実のはじけ方。 開いてゆく様子を何枚か連続で撮ったことはありますが でも全くマクロ度合い?が違いましたし (比べる方が間違ってる!) ここまでクリアになるからこその「謎」が次々にですね。 好奇心こそ発見の母!(父かも?) 宿題としておくといずれ何か解る日が!と思いますv (2008.11.17 21:48:25)
ukon6624さん
>閉鎖花・・初めて知りました。。 >すみれ特有のものなんですか? ----- 他にツユクサに出来ると聞いていますが、調べるとこんなサイトがありました。野草の閉鎖花: http://homepage.mac.com/n_yoshiyuki/yasou/heisahana.html >ミクロの探究心がアーチャーン先生の元気の源ですね ----- 常に好奇心の固りです。同じことをするのが大嫌いで、一時会社に居たとき、「同じことをさせるな」と社長に文句を言ったことがあります。 (2008.11.18 07:41:22)
閉鎖花は、突然に種になっていること多いです。白い種を蒔くと発芽を早めることができるのですねー
今春 購入した珍しいスミレは、閉鎖花のみでした・・・閉鎖花って 目立たないです^^; 種は、たくさんつけたようですのに 植えた環境でしょうか? (2008.11.18 07:44:17)
クーン43さん
>スミレの閉鎖花というものがあるということは知っていましたが、この緑色のものは閉鎖花とは知りませんでした。これは花が咲いたあとにできる未成熟の種の袋だと思ってました。 ----- スミレの開放花は結実しません。 >また、閉鎖花からできる種は休眠しているということも知りませんでした。庭にたくさんはえているスミレ。知らないことばかりでした。 ----- 光周期に依存する植物の種子は一般に休眠して居ると思いますが・・・。そうでないと、結実する前に冬になって、子孫を残す前に枯れてしまう羽目に陥る危険が大です。 (2008.11.18 07:46:54)
夢のはしさん
>>結局のところ???で終わるしかないことと相成る。 >それでもとても面白く、 >この先どうなるんだろう???と、 >胸をわくわくさせながら、拝読しています☆^^☆ ----- そう言っていただけると安心します。 >分解してみるあたりが、さすがアーチャーンさんですね♪ ----- 面倒ですが、成り行き上しないと「物語」になりません。 >中の仕組みなど拝見しておりますと、 >人間の赤ちゃんが、お母さんのおなかの中で育っていくのと、 >とても似ているような気がしました。 ----- 子孫を残すためには母体から栄養を補給しなければならないので、基本的に同じだと思います。 >『次の命を残そう』という、 >深い深い愛情のもとに、守られながら育っている気がします☆^^☆ ----- そうしないと、簡単に絶滅してしまいます。 (2008.11.18 07:50:29)
snowrun29さん
>閉鎖花は知っててもここまでの映像は見れませんし >その「白い種」を植えればって話も「!」でした。 >普通の?種は寒さを経なければ発芽しない、、 >なるほど~です。 ----- 他でも書きましたが、光周期に依存する植物では、そうでないと、結実する前に冬になって、子孫を残す前に枯れてしまう羽目に陥る危険が大です。 >ここまでクリアになるからこその「謎」が次々にですね。 ----- 何時も記事は出来るだけ簡単に済ませようと思うのですが、成り行き上解決が必要な「謎」が出て来て、面倒なことになります。 >好奇心こそ発見の母!(父かも?) >宿題としておくといずれ何か解る日が!と思いますv ----- 宿題だらけで、何が宿題だったか忘れてしまいそうです。 (2008.11.18 07:55:25)
るる555さん
>白い種を蒔くと発芽を早めることができるのですねー ----- スミレの場合、直ぐに発芽します。しかし、やはり低温処理を必要とするクリスマスローズの種子を、白い内に蒔いてみましたが、全然発芽せず、死んでしまいました。 >今春 購入した珍しいスミレは、閉鎖花のみでした・・・閉鎖花って 目立たないです^^; >種は、たくさんつけたようですのに >植えた環境でしょうか? ----- 緯度の低い土地で育った植物は、緯度の高い北海道では、開花の時期がずれることがあります。 農作物ではこれが非常に重要で、光周期の異なる土地へ作物をそのまま持ち込んでも、収穫できる様になる前に冬となり枯れてしまうことがあります。結構難しい問題なのです。 (2008.11.18 08:02:19)
はじめまして。いつも超拡大画像を感心して覗かせてもらってますが、書き込みは初めてです。
スミレの種子の半透明な物質。。。。 エライオソームと言うそうですよ。 アリがこれを好み、種子を運ぶので、このような植物をアリ散布植物というそうです。 (2008.11.19 23:34:22)
Aclerisさん
>はじめまして。いつも超拡大画像を感心して覗かせてもらってますが、書き込みは初めてです。 ----- 「いもむしの・・・」を始め、「一寸の・・・」や「カメムシBBS」で御高名のAclerisさんとお見受けします。最近は大学や農林省からの参照も多く、専門家も含めて色々お詳しい方々がこのサイトを参照されておられる様で、全く冷や汗ものです。 >スミレの種子の半透明な物質。。。。 >エライオソームと言うそうですよ。 >アリがこれを好み、種子を運ぶので、このような植物をアリ散布植物というそうです。 ----- 私もアリがスミレの種子を運ぶと言う話は存じております。しかし、我が家のスミレ(V. mandshurica)とヒゴスミレの場合、どれだけアリが関与しているのか常々疑問に感じております。アリは我が家にも何種か居ますが、スミレの閉鎖花が開いていても、その周囲にアリを見たことは一度も有りません。また、我が家の庭で発芽するスミレの実生の分布を見ると、風で飛ばされたとしか思えないのです。 「Elaiosome Viola」で検索してみると、専門誌の論文も沢山出て来ます。スミレ属に関してその様なことがあるのは確かと思いますが、スミレの種によってかなり違うのではないでしょうか。 それでは実際に、と言う訳で、スミレの種子を見に行きました。しかし、残念ながらもう種子の残っている閉鎖花は一つもありませんでした。来年の春に、スミレの種子の反対側(本当のヘソのある方)を写してみたいと思います。elaiosomeが、何処にどの程度の大きさで付いているか、興味のあるところです。 (2008.11.20 12:00:43)
閉鎖花としてアップされている画像はすでに、受精し膨らんでいる果実です。
閉鎖花はこの果実についている蕚の部分だけが閉じている形で、後のタネの鞘になる部分は全く見えない状態です。 誤解が広まってしまうことを防ぎたいのでお知らせします。🙇 (2022.04.28 01:18:11)
閉鎖花としてアップされている画像はすでに、受精し膨らんでいる果実です。
閉鎖花はこの果実についている蕚の部分だけが閉じている形で、後のタネの鞘になる部分は全く見えない状態です。 誤解が広まってしまうことを防ぎたいのでお知らせします。🙇 (2022.04.28 01:18:59) |