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テーマ:海外生活(7788)
カテゴリ:読書
古代から人間はこの世界、この宇宙とはなんで、そして私たち自身が何者か、ということについて多くの思索が行なわれてきた。 時間と空間の理解から、この世の中の仕組みまで、ありとあらゆることを考えてきた人間の営みは、近代になって、ヨーロッパを中心とした「還元主義」に引っ張られてきた、と言っても過言ではないだろう。 「還元主義」というのは、言ってみれば「物事の本質は、どんどん突き詰めていくと、その要素に分解され(還元され)、そこに見つかる基本的な法則(真理」が、すべての事象を統べている」という考え方だったと思う。(この辺は、ど素人なので、間違っているかもしれませんが) しかし、現代物理学が、あるいは数学を含めた「科学」が、この「還元主義」の限界を私たちに示し始めたのは20世紀初頭に始まった量子力学を走りとする一連の科学上の成果だった。 そして1900年代の後半には、宇宙そのものに関する多くの新しい発見やそれにも増して新しい謎の出現が次々に立ち現れてきた。 日記でも書いてきたが、残念ながら私たちの「常識」はこれらの科学の進展に全く付いていっていないので、未だに19世紀の物理学とそれによる宇宙観に留まっているし、その後の相対性理論の華々しい成功にも関わらず、それが「常識」の中に入るまでにも至っていないのが現実だろう。 その上、その相対性理論とはまったく両立しない量子力学の発展は、実際に多くのテクノロジーを私たちに提供することにより、その「正しさ」を証明してきたにも関わらず、同じく「正しさ」を証明された相対性理論との矛盾は、未だにそのままに置かれている。 20世紀後半から立ち上がった「ひも理論」その第一次革命とその後の第二の革命を経て、現在の21世紀の物理学は、この相対性理論と量子力学の矛盾を解決し、さらに、重力をも含めた「大統一理論」の構築に向けて日々前進している。 そのことは、逆に言うと、私たちの「常識」は、この最先端の宇宙像からはどんどん置いていかれている、ということを意味している。 2000年に発表されたブライアン・グリーンの「エレガントな宇宙 -超ひも理論がすべてを解明する」は、その先端の超ひも理論の当代切っての現役物理学者によって書かれ、その平易な内容と思想的な厚みでずば抜けた評価を得、アメリカでもベストセラーになった本であり、上に書いた「常識」と「科学の先端」を埋めるための本としては、最高の本の一つとされている。 先日からこの本を読んでいるが、「平易な内容」とは言え、それは数式や専門用語を出来るだけ使わずに書かれた、ということは意味しても、その内容を理解するのが平易だ、とはお世辞にも言えない。 しかし、読むに従って、私たち人間とは何者か、私たちはどこから来たのか、そもそも宇宙とは何で、どうして出来たのか、ということについて考える上で非常に多くの示唆を与えてくれる。 一方で、著者も言うように、「どのようにして」物質が、そして宇宙が誕生し、今日に至っているか、ということはどんどん解明されてきているが、だからと言って「なぜ」という疑問には一切答えられない、という科学の限界をも正直に提示している。 その「なぜ」を巡っては、今の科学はほとんど無力であり、せいぜい「仮定」「思考実験」の域を出ない。 ではあるけれども、ここに書かれていることは考えるだけでも壮大な気分にさせてくれるし、じゃあ、その中の自分って一体なにものだ?ということを考えさせてくれる。 しかし、この本にしても、書かれたのはもう10年も前の話。 これ以降の10年、21世紀初頭の10年で、一体どれだけの知見が新たに得られたのだろうか・・・ 少なくとも、巷にあふれる「現代物理学が教える宇宙の姿」みたいな教養書は、この「エレガントな宇宙」の要約版か、その解説版みたいな趣で、内容的には一歩も出ていないように感じる。 だれか、それ「以降」の発展を、私のような「素人」「一般人」を対象にした、いい本を紹介してもらえないだろうか。 <追記> そんなもん、人に聞くな!と言う声が聞こえたので(笑)、ちょっとアマゾンで調べたら、同じグリーンの著書で、2009年、そして今年2011年に、その後の発展を踏まえた本が出されていますね。ただ、この「エレガントな宇宙」ほど包括的には書かれていないようですが、それでも「多宇宙」「並行宇宙」「時間と空間の関係」などについての、最先端からの報告を聞ける、というだけで意味があるんでしょう。 今度日本に行ったら購入してこようと思います(英語は苦手なんで・・・笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.08.01 05:48:15
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