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カテゴリ:詩
仰向けになったおまえが
大きく口を開けると 喉の宇宙に三日月が浮かんでいる 私の口からこぼれた涎は 長く糸を引いて 井戸の奥に吸い込まれていく 三日月の影の部分 欠けた円形を潜りぬけて 九つの惑星を超え 果てしなき暗闇をどこまでも垂れていく 虚空に落ちていく涎が 生と死の彼岸に届くまで 私は涎を垂らしつづけ おまえを見下ろしつづける おまえは 恵みものがただただ落ちていく穴 口を閉じて舌を使い味わうことは 許されない おまえは私を味わえない おまえは私を受け入れるだけ 私はおまえを見下ろしたまま おまえの喉を落下しつづける不可思議世界のアリス 言葉も 音符も 夢も 嘘も ひっくり返された宝石箱のように おまえの喉を落ちていく 私と一緒に 底のない宇宙井戸を どこまでも 何に辿り着くこともなく 何にすがることもできず ただ落ちていく それは 重力の仕業なのか 無重力の無限なのか それすらもうわからなくなる 浮かんでいるのか 落ちているのか 光速なのか 静止画なのか 何ひとつわからないまま 口を開けつづけ 涙を流して 恵みものを受け取りつづける 醜い豚野郎 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.01.29 17:24:52
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