カテゴリ:碧翼のレステ
「ハウゼン=リプル卿にお会いするのは、5年ぶりでございますかな」
コリートの言葉に、レステはうなずいた。 「ええ」 「なんでも、山岳の地下に地底城を築いているとか」 「地底城……?」 エリオは首をかしげた。 「そんな話、初めて聞くぜ」 「人間の手の届かぬ場所に魔族の楽園を築いておられるのです」 「何か詐欺臭いな、その表現」 「いえ、これはあくまで私の表現でございます」 コリートは意地の悪い笑みを漏らした。 「ただ……」 レステは少し顔をしかめた。 「いかがなさいました?」 「大した事じゃないわ、フィプ。ちょっとイヤな奴が居てね」 「イヤな奴?」 「おっ、その声は、レステちゃんかい?」 「!?」 一同に緊張が走る。 何の前触れもなく、その眉目秀麗な青年はレステたちの前に立っていた。 「我々に気配すら感じさせんとは……」 ケファロがうなった。 「あんた、一体……」 エリオが言い終わる前に、レステの肩に青年の手が置かれていた。 「僕のかわいいレステちゃん、元気だったかい?」 「クレッド……」 あまりに非友好的なレステの声音に、青年-クレッド=リプルは悲しげに言った。 「悲しいなあレステちゃん。『クレッドお兄ちゃん、会いたかった』と嬉し涙を流してくれると思ってたんだけど」 「……」 「どうしたんだい?僕としゃべるのが恥ずかしい?」 「……人のおしりを触りながら言うセリフかぁーっ!!」 渾身の拳が炸裂した。 景気良くふっとんだクレッドは、ばたりと地面に沈んだ。 「あれ、愛情表現がお気に召さなかったかい?」 「どこが愛情表現よ、このドスケベ!!」 容赦なくレステは蹴りの嵐を見舞った。 周囲の者達は制止しない。いや、止めようが無いのかもしれない。 「相変わらず怒った顔もかわいいね。うん、それにしてもいい眺めだ」 余計な事を言ったクレッドの顔にレステはとどめを刺した。 「これで満足?『お兄ちゃん』?」 「あいたたたた……」 まったくこたえていない様子で、クレッドは立ち上がった。 「幼馴染の心温まるふれあいをしたかっただけなんだけどなあ」 「どこがよ!?」 「みなさんはそう思いません?」 あいにく、クレッドの味方は皆無だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年11月10日 00時09分20秒
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