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名無し人の観察日記

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名無し人の観察日記 [全442件]

2012.05.02楽天プロフィール Add to Google XML

がれきの広域処理に見る阿呆どものラインダンス 

 震災がれきの広域処理に関して、徳島県が出した見解が広域処理反対派によって「神見解」と宣伝されているようです。実際「徳島県の見解」で検索すると

「核心を突いている」
「受け入れ派を完全に論破した」
「徳島県の態度は素晴らしい」


 と言った具合に徳島県を賞賛する意見が多く見られます。しかし、この徳島県の広域処理に関する見解は本当に素晴らしいものなのでしょうか? 実際に検証してみると、必ずしもそうとは言えない……というか明らかにおかしい主張が多々見られますので、ここにツッコミを入れようと思います。
 
 まず、実際に件の見解に関するリンクを貼ります。
 
 徳島県公式HP とくしま目安箱(2012年3月15日)

 この中で明らかにおかしい部分をピックアップして解説します。
 
>放射性物質については、封じ込め、拡散させないことが原則であり、その観点から、東日本大震災前は、IAEAの国際的な基準に基づき、放射性セシウム濃度が1kgあたり100ベクレルを超える場合は、特別な管理下に置かれ、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めてきました。(クリアランス制度)

>ところが、国においては、東日本大震災後、当初、福島県内限定の基準として出された8,000ベクレル(従来の基準の80倍)を、その十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理の基準にも転用いたしました。

(強調部分:引用者)


 放射性廃棄物に関するクリアランス制度と言うのは、「これ未満の廃棄物に関しては、放射性廃棄物と看做さず一般廃棄物として処理しても良い」と言う基準です。つまり、放射性物質の量が100bq/kgに満たないものに関しては、一般のゴミとして焼却したり、リサイクルしても差し支えないと言う意味です。
 
 クリアランス制度
 
>「クリアランス制度」とは、原子力発電所の解体などで発生する資材等のうち、放射能濃度が極めて低いものは、法定された国の認可・確認を経て、普通の産業廃棄物として再利用、または処分することができるようにするための制度です。
(原子力安全・保安委員会HP)
 
 上記HPでも、クリアランス基準を満たした廃棄鋼材がベンチにリサイクルされている例が紹介されていますが、これを見てもわかるようにクリアランス制度は原子力関連施設から出る廃棄物を「一般」と「放射性」に分別するための基準であり、放射性廃棄物を封じ込めるための制度ではありません
 重要なのはこの100bq/kgと言うクリアランス制度の基準は、今も変更されていないと言うことです。そもそも国際基準に基づいて決められたものなので、日本が勝手に変える事はできません。
 
 徳島県の見解では、基準自体が従来の80倍に引き上げられたような書き方をしていますが、この8000bq/kgと言う基準は今回の広域処理のために決められたものであって、これ以下の廃棄物がリサイクルされ、身近なところに拡散するとか言うような話ではありません。そもそも目的がまったく違う二つの基準を同列に並べて、80倍になった! などと主張すること自体が完全な誤りです。
 
 また、徳島県はこの8000bq/kgと言う基準を設定するに当たって、十分な説明も根拠の明示もないと主張していますが、これも明らかに間違っています。この基準が決定された根拠、経過に関しては環境省の広域処理に関するHPでしっかり公開されています。
 
 よくあるご質問
(環境省:広域処理情報サイト)
 
>8,000ベクレル/kgという基準は審議会等により認められているのですか?

>指定基準8,000ベクレル/kgは、原子力安全委員会及び放射線審議会の諮問・答申を経て策定されたものです。


 この決定に関する答申は文部科学省のHPから参照できます。
 
 放射線審議会(第116回) 議事録


>8,000ベクレル/kgという基準の根拠を教えて下さい。

>処理に伴って周辺住民の受ける追加的な線量が1mSv/年を超えないようにする
>処理を行う作業者が受ける追加的な線量が可能な限り1mSv/年を超えないことが望ましい。比較的高い放射能濃度の物を取り扱う工程では、電離放射線障害防止規則を遵守する等により、適切に作業者の受ける放射線の量の管理を行う。
>埋立処分場の管理期間終了後に周辺住民が受ける追加的な線量が0.01mSv/年を超えないようにする


 この基準に関しては、「自然被曝以外の追加被曝が年間1ミリシーベルト以内に収まること」と言う前提で計算されており、詳しい議論は上記議事録にて見ることが可能です。
 具体的には、廃棄物の処理に従事する作業者は「1日8時間・年間250日の労働時間のうち半分の時間を廃棄物のそばで作業する」と言う想定で計算されており、8000bq/kgの廃棄物を処理した場合、年間0.78ミリシーベルトの被曝を受けるとされています。
 そして、周辺住民に関しては、処分場から8メートルの距離をとった場合に、追加被爆が年間1msvになると言う想定ですが、そんな至近距離に住んでいる人がいるとは思われません。また、「追加的な線量が0.01mSv/年を超えないようにする」とありますが、これはクリアランスレベルと同じ基準です。上記クリアランス制度のHPにはこうあります。
 
>年間0.01ミリシーベルト(10マイクロシーベルト)は、人の健康への影響を無視することができると国際的にも認められています。
>これを踏まえ、「放射性廃棄物として扱う物」と「放射性廃棄物として扱う必要のない物」を区分する放射能レベルをクリアランスレベルとし、人の健康への影響が1年間あたり0.01ミリシーベルトを超えないよう定められています。


 つまり、8000bq/kgの基準であっても、一般市民に与える影響はクリアランス制度を満たした廃棄物が与えるのと同じに納まる様に、基準設計されているわけです。実際、IAEA(国際原子力機関)はこの基準に関して
 
「既存の国際的な方法論と完全に整合性がとれている」

 と言う評価を下しています。国の捏造だとか言われないために、リンクを貼ります。
 
 福島第一原子力発電所外の広範囲に汚染された地域の除染に関するIAEAミッション(2011年10月7日~15日)の最終報告書
 
>For example, incinerator ash having activity levels of 8000 Bq/kg or less is to be disposed of at conventional controlled type landfills without any further conditioning. The Team finds this approach to be fully aligned with established international practices.
(8000bq/kg以下の焼却灰に関しては、それ以上の調整を行う事無く従来型の埋立地で処分されるべきである。本チームはこのアプローチを既存の国際的な方法論と完全に整合性がとれているものと評価する)

 
 
 徳島県は「IAEAの国際的な基準に基づき」広域処理に反対すると言っているようですが、肝心のIAEAの意見がご覧の通りなので、この点から見ても徳島県の見解は明らかに誤っています
 
 と言うより、徳島県は広域処理受け入れ拒否のために、国が法制度を蔑ろにしているという印象操作を図っているとしか思えないのですが。素人の私でも、検索を駆使すればこの程度の情報は集まるのですから、法や環境問題の専門家である県環境課の人間がこれらの情報を知らないとは到底思われません。もし本当に知らないのだとすれば、それはそれで大問題です。

 徳島名物と言えば「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損々」の阿波踊りですが、この見解に関しては徳島県が躍らせる阿呆、見解に賛同して広域処理に反対する連中が踊る阿呆、どっちも同じ阿呆であると言う以外に言うべき事はありません。



Last updated 2012.05.02 11:14:05
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2012.01.09

大河ドラマと時代考証  (4) 

 昨年の「江」が見事なまでに黒歴史だったため、今年の「平清盛」には期待してたわけですが、一回目はなかなか期待の持てる内容。今後も視聴しようと思います。
 でも清盛御落胤説を採るのか……大胆だな。

 そして語りの頼朝。事情通過ぎでしょう。まだ生まれる前の話なのにどういう伝で平家の内部事情を聞いているのでしょうか(笑)。

 さて、今回「王家」と言う言葉が使われてることについて国士サマがブチ切れたようで、皇室と言いなおせ、と主張している模様。
 韓国では天皇の事を「日王」と言うことから、韓流に支配された売国奴NHKがその意を汲んで王家と言う用語を使っているんだ、とか言う陰謀論に発展しているようで、まぁ正直

「お前ら馬鹿じゃねぇの」

 以外の感想が思い浮かびません。

「王家」ってのは、平安末期の院政期に、天皇ではなく上皇/法皇を家長とする天皇家を指す用語で、この時代の一次資料には頻出します。そもそもこの時代には「王」「皇」はあまり厳密に区別されていません。

 つうか、ドラマ見てればわかりますが、鳥羽天皇の事は「帝」と呼ばれています。天皇ではないんですが国士の皆さんは怒らなくて良いんですかね(笑)。

 個人的には、院の御前で舞子を射殺したとか、忠盛が「陰陽師の戯言を」とか言う事のほうが、よっぽど歴史的にNGだと思うのですが。宮中を血で汚すなんてとてつもないタブーですし、当時の人はもっと迷信深くて、陰陽師の言うことは普通に信憑性あったはずですしね。

 ともあれ、ちょっとなじみのない用語が気に食わんと言うだけで、調べもせんとキレた挙句無知と妄想をさらしまくるあたり、右も左もイデオロギーをこじらせたヤツにロクなのはいないと言う非常にわかりやすい例でしたとさ。




Last updated 2012.01.09 23:54:47
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2011.12.18

反原子力ムラ  (1) 

「原子力ムラ」と言う言葉があります。原子力に関わる業界、学会などの利権構造、排他性、閉鎖性を村社会になぞらえて語るときに使われる言葉で、反原発派によって原子力を批判する際に良く使われます。

 しかし、私は反原発派こそムラ的な閉鎖的で他の批判を許さない、排他的な構造を持っていると思っています。それを象徴するような事件と記事があったので、紹介してみようと思います。
 
 群馬大学に早川由紀夫という教授がいます。この人は火山学が専門ですが、福島第一原発事故後に火山灰の飛散をシミュレートするモデルを応用して、放射性物質の飛散状況をシミュレートすると言う試みを行いました。
 なかなか面白い試みだとは思いますが、そもそも火山灰と放射性物質では全く物理的特性が違うはずですし、加えて飛散のエネルギー源となる爆発も、火山の方が原発の水素爆発より数桁上のパワーを持っているはずなので、本当にそのシミュレートで放射性物質の飛散を予測できるのだろうか? と言う疑問がいろいろ湧いてくるのですが、まぁそれはおいておきます。
 ここまでなら、純粋に学術的な試みとして評価できますが、問題はこの後の早川教授が、福島県をはじめとする原発事故の被災地に対し、どうみても差別を煽る発言やヘイトスピーチとしか思えないものを、ツイッターに投稿し続けた事です。
 例えば、福島の女性を結婚相手に選んではいけない、とか、福島の農家はオウム信者と同じで毒物を撒き散らそうとしている、と言ったような発言で、他にも急性白血病で亡くなった方の病因を放射性物質と決め付け、友人の死を政治利用されたくない故人の関係者が抗議すると、その相手を原子力ムラの住人と決め付けるかのような発言をしています。
 
 こうした早川教授の言動には、怒りを覚えた各所からの抗議が群馬大学に寄せられていたそうで、その度に群馬大学では早川教授を口頭注意はしていたそうです。しかし、あまりにも当人に反省がなく、むしろ言動がエスカレートする一方だった事から、ついに群馬大学は早川教授を訓告処分としました
 
 こうした大学の処分は妥当なものであり、個人的にはもっと重い処分でも構わないくらいだと思いますが、その後も早川教授の言動は改善していないようですので、より重い処分が下されるのも時間の問題でしょう。
 
 ここまでなら、アホな教授が反原発有理と調子に乗りすぎて自爆しただけの話です。しかし、この早川教授を全面的に擁護するアホ新聞が出現しました。それが東京新聞です。
 
12/10「こちら特報部」
1210東京新聞

 もともと東京新聞は反権力志向で有名な朝日新聞をも凌駕する反権力・左派志向を明確にしている新聞で、それはまぁ別に構いません。会社としてどんな意見を持とうと、それは東京新聞の自由です。しかし、この早川教授擁護の記事は、表現の自由と言う言葉で許されていいものとは思えませんでした。
 
 まず、東京新聞は早川教授が訓告処分を下されるまでに行っていたツイッターでの発言の数々を明確にせず、

「発言は被災農家に対する中傷ととられかねない内容だったが、その是非はおいておく」

 と一行で片付けています。発言の内容を知らなければ、この処分が妥当であったかどうか読者にはわからないのに、東京新聞は何を考えているのでしょうか。
 もちろん、同じく反原発を訴えている早川教授を擁護し、「原子力ムラ」を批判する事がその目的です。記事の最後にはこういう一文があります。
 
>原子力機構と連携協定締結
>群馬大は日本原子力研究開発機構(原子力機構)と連携協定を結んでおり、原子力ムラ批判の言論封じと疑う向きも。


 これを見たら、詳しい事情を知らない読者は、群馬大学も原子力研究を行っていると考えるでしょう。しかし、群馬大学には原子力関連の学科はありません。この連携協定は、群馬大学が行っている放射線を応用した医学・生物学等の分野に関する研究を促進する趣旨のもとで締結されました。
 
 
国立大学法人群馬大学と独立行政法人日本原子力研究開発機構との連携協力に係る協定概要

>協定の目的
>群馬大学及び日本原子力研究開発機構双方の有する研究施設、研究成果、人材等を連携活用し、相互の研究及び人材育成の充実を図ることを目的とする。
>連携の具体的な内容
>具体的には、(1)共同研究等の推進、(2)技術交流を含む研究者の相互交流、(3)人材育成の推進及び相互支援、(4)研究施設・設備の相互利用、(5)その他、本協定の目的遂行上必要な事項の連携協力活動を行う。

>協定の締結に至る経緯等
>群馬大学と日本原子力研究開発機構とは、平成13年より工学研究科において「先端機能材料」、「環境保全科学」、平成15年から医学系研究科において「生体機能解析学」分野での連携大学院方式による教育研究を実施してきた。
>平成16年度から平成20年度まで、文部科学省21世紀COEプログラム「加速器テクノロジーによる医学・生物学研究」等の共同研究を行っており、イオンビームを用いた医学・生物学分野での数多くの研究成果を上げてきた。
>このような共同研究による研究成果は、重粒子線照射施設の設置に大きく貢献されることとなり、本年3月からの稼働に至ったところである。
>これまでの研究成果のさらなる発展を目指すとともに、地域性の特性を活かし、双方が有する研究施設、研究成果及び人材等を活用した研究及び人材育成の充実を図ることについて合意に至ったことから、協定締結の運びとなった。
>連携協力に関する協定を締結することにより、組織的、継続的な連携交流が可能になり、情報の共有化が図られ、即時性が向上し、今後の研究活動等の継続性が確保される。
>この度の組織的連携により、地域社会の発展には大きく貢献することができるものと双方とも確信している。
>なお、本協定は、他の団体・機関等との連携を排除するものではない。



 この協定のどこを見れば、群馬大学が「原子力ムラ」に支配され早川教授を迫害しているなどと言う妄想を抱く事ができるのでしょうか。私には理解しかねます。
 
 原子力というのは、必ずしも原発に関わるものだけではなく、こうした医療分野や非破壊検査などの建築分野など、幅広い応用がなされるものであり、一見原子力に関係ない大学でも広く締結しています。一例として、被災地福島でも、福島大学が放射性物質の除染に関して支援を受ける目的で、原子力機構と連携協定を締結しました。
 
「国立大学法人福島大学と独立行政法人日本原子力研究開発機構との連携協力に関する協定書」の締結について
 
 しかし、反原発派はこの福島大学の連携協定にも反発し、原発推進派が福島大学を支配して被災地を黙らせ、原発の建設を推進するための陰謀だと批判しています。もうアホかとバカかと。ここまで来ると、反原発派は原子力関連の機関や個人自体を放射能にまみれた穢れだと認識し、それをお祓いして遠ざける事が正義だと思い込んでるようにしか見えません。
 
 ともあれ、この東京新聞の記事の問題点は以下に集約されます。
 
・処分の原因となった早川教授の暴言について明確にしていない。
・群馬大学が「原子力ムラ」の一員であるかのように読者に錯覚させている。
・「原子力ムラ」が言論弾圧を行っていると言う陰謀論を証拠も無しに展開している。


 これは、意見(反原発)を同じくする早川教授を、故意に彼の問題点を隠蔽する事で擁護すると共に、彼を処分した群馬大学を「悪の秘密結社原子力ムラ」の手先であるかのようにミスリードし、読者に原子力への反感を抱かせようとするものです。
 自分と同じ意見の持ち主なら問題があっても擁護し、対立する意見の持ち主なら、証拠も無しに批判し貶める。これは反原発派が「原子力ムラ」の体質であると主張し、批判している態度そのものだと、なぜ気づかないのでしょうか。
 
 別に東京新聞が反原発の意見を持っても構いませんが、このように嘘、大袈裟、紛らわしい内容でそれを行うのは、報道の手法として誤っていると私は思います。はっきり言えば、これでは東京新聞は電力各社が行っていた、原発容認への世論誘導(いわゆるやらせ問題)を批判できません。
 
 東京新聞の行為は報道機関として自殺行為であり、報道の価値を大きく貶めるものです。同紙には猛省と共に、早川教授の言動を明確にし、群馬大学に謝罪するよう求めます。





Last updated 2011.12.18 15:14:43
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2011.06.07

原口議員の「衝撃の告発(?)」を検証する  (6) 

 

民主党の原口一博衆院議員が福島第一原発について行った「告発」が話題になっているようです。その告発と言うのは、福島第一原発の安全装置が取り外されていた、と言うもの。
 
「福島第一原発の安全装置は8年前に外されていた」原口氏が衝撃の告発

>政治団体「日本維新の会」を設立した民主党の原口一博・衆議院議員が2日、福島原発事故に関する記者会見を行った。主催は自由報道協会。原口氏は福島原発について、8年前の自民党政権の時代に、福島第一原発の安全冷却システムが外されていたという衝撃の事実を発表した。
(BLOGOS:11年6月2日)

 驚くべき話です――本当なら。しかし、あまりにも有り得ない話なので到底信じる事ができません。と言う事で、記事を見ながら原口議員の「告発」とやらについて検証してみようと思います。
 
 まず、核心と言うべき「外された安全装置」の事はこう書いてあります。
 
>原子力安全委員会の議事録を読むと、平成15年の自民党政権の時代に、ECCS(非常用炉心冷却装置)の中の冷却系の蒸発システムが取り外されていたんです。

「冷却系の蒸発システム? なんじゃそら」と思ったのですが、原口議員のfacebookではさらに突っ込んだ主張がなされていたので、そちらで答えを見つけることが出来ました。
 
福島第一原発 削除されていた蒸気系凝縮機能

>発災直後から佐賀大学元学長の上原春男先生と「蒸気凝縮系機能」があるのにどうして炉心溶解に至るまでの深刻な事故になるのか理解できないと首を傾げていました。

 タイトルにもある「蒸気凝縮系機能」と言うのが「冷却系の蒸発システム」の事のようです。この「蒸気凝縮系機能」と言うのは、原子炉の冷却システムの中では「残留熱除去系」と言うシステム群に属しています。
 
残留熱除去系

>残留熱除去系は、原子炉が停止した後に、炉心より発生する崩壊熱及び残留熱を除去・冷却するための系統(主として沸騰水型原子炉(BWR)での用語)である。
(中略)
>原子炉隔離時に原子炉圧力を制御または減少させる蒸気凝縮モード


 原子炉隔離というのは、何かトラブルがあった時に原子炉と電気を起こすタービンとを切り離した状態にする事で、蒸気凝縮系機能はこの状態で、炉内の残留熱によって発生する蒸気を冷却し、水に戻す(凝縮する)事により、炉内の圧力を制御・減少させる役目を持っています。
 こう書くと緊急時に原子炉を冷却するのに不可欠の機能のように見えますが、実はそうではありません。そもそも蒸気凝縮系を取り外すきっかけとなったのは、2001年11月7日に起きた浜岡原発一号機の配管破断事故です。この時事故が起きたのが、まさにこの蒸気凝縮系だったのです。
 
 実はこの事は原口議員のfacebook自体に書いてあります。
 
>「当時、浜岡原発で事故があり、それを受けて取り外した。」との証言を得ました。

 事故の報告書は原子力安全委員会のサイトで公開されていますが、その中にこうあります。

中部電力株式会社浜岡原子力発電所1号機における配管破断事故について(最終報告書)

>蒸気凝縮系は、余熱除去系を構成するいくつかの系統の一つであり、原子炉停止時に、タービンからの熱除去が行われない状態において、高温待機状態から速やかに運転に復帰するまでの間の残留熱の除去を目的として設置されており、従って、余熱除去系を構成する原子炉非常用炉心冷却装置とは異なり、原子炉の安全性の観点から必須な設備ではない
(7ページ)

 高温待機状態と言うのは、今被災地の原発がなっているか、そうなる事を目指している「冷温停止」とは異なり、すぐに運転を再開できるよう炉内の温度を維持する、エンジンで言えばアイドリングのような状態を指します。従って、この蒸気凝縮系の冷却能力と言うのは、実はさほど高いものではありません。

 原口議員は「なぜ原子力安全委員会は「最後の砦」を取ったのか」と言っていますが、これが「最後の砦」ではない事は原子力安全委員会のお墨付きです。しかし、この一文の後に続けてこう書かれています。
 
>本系統は非常用炉心冷却系の一部である高圧注入系配管から分岐していることから、今回の事故によって高圧注入系が使えなくなった

 どうやら、蒸気凝縮系が事故を起こした場合、本当の意味で「最後の砦」であるECCSの一部が使えなくなる設計であったらしく、これが福島第一をはじめとする各地の原子炉で、蒸気凝縮系機能が削除された理由です。
 
 浜岡原発の配管破断事故の原因は、蒸気凝縮系の配管に原子炉内で放射線の水分解によって生じた水素が溜まり、爆発した事でした。この事故が起きたときは原子炉は非常停止して冷温停止状態になっており、そもそも安全性を重視する原子炉では、事故発生時に早期運転再開を目指して原子炉を高温のまま維持する事自体が考えられておらず、言ってみればこの蒸気凝縮系と言うのはあまり使われない事が運命付けられているようなシステムでした。
 浜岡事故の調査書にもこうあります。
 
>事業者からの報告によると、当該機においては、これまで試運転時を除き、余熱除去系蒸気凝縮系による運転を行った実績は無い。また、他プラントにおいても、同様に運転を行った実績は無い。
(11ページ)

 原子炉には他にも冷却系のシステムが多数あり、蒸気凝縮系以上にそれを果たす能力を持っています。実際に福島第一の蒸気凝縮系を撤去した東電の原子炉設置変更許可申請にもこう書いてあります。
 
平成15年原子力安全委員会第10回定例会議(原子力安全委員会)
(2-3) 東京電力株式会社福島第一原子力発電所原子炉設置変更許可申請(2号,3号,4号,5号及び6号原子炉施設の変更)の概要について


>2号、3号、4号、5号及び6号炉の残留熱除去系の機能の一つである蒸気凝縮系は、原子炉隔離時に炉心の崩壊熱等を除去する機能を有しており、その凝縮水は原子炉隔離時冷却系の水源としても利用可能である。しかし、原子炉隔離時の炉心の崩壊熱等の除去については、通常の運転方法として主蒸気を逃がし安全弁によってサプレッションプール水中へ放出すると共に、原子炉隔離時冷却系の補給水により原子炉の水位維持を行う事が可能であり蒸気凝縮系を用いる必要はないため、蒸気凝縮系の機能を削除することとした。

 まとめると、
 
・そもそも蒸気凝縮系は原子炉を冷却するためのシステムではない。
・また、浜岡事故のような配管破断事故のリスクがある機能である。
・しかも事故が起きると原子炉の非常冷却システムに不具合を起こす。
・従って、万が一のリスクを考えてこの機能を削除したのは妥当な判断である。

 
 と言う事になります。原口議員は東電職員を問い詰めてこの証言を引き出したそうですが、そもそもこの人は本当に東電の説明を聞いて理解していたのでしょうか? また、ちゃんと過去の原子力安全委員会の報告書に目を通していたのでしょうか?
 
 実は、今原口議員がこの「告発」を行った理由は、極めて政治的なものである可能性が高いと思います。それは、告発やfacebookの中で「これが自民党政権時代に起きたことだ」と言う趣旨の事を再三述べている点にあります。
 
>平成15年の自民党政権の時代に、ECCS(非常用炉心冷却装置)の中の冷却系の蒸発システムが取り外されていたんです。

>この時の総理大臣は、小泉さん。そして経済産業大臣は平沼さんでした。

>この当時の内閣には、現在の自民党の幹部がほとんど入閣しています。
>大島代議士、石破代議士、谷垣代議士、石原代議士。全て大臣です。

 
 つまり、世間の原発に関する批判を、政府から自民党に逸らす狙いがあるのではないか、と言う事です。それを強調するため、本来安全性に与える影響が少ない、むしろリスク要因でさえある蒸気凝縮系をECCSの一部であるかのように主張する事までしています。
 
 原口議員が原子炉の事を良く理解していない、あるいは出来ない程度の知性の持ち主で、勘違いして今回のような「告発」を行っているのなら、まだマシなのですが、責任逸らしと民主党の延命を狙ってデマを流しているのであれば、極めて悪質な行為であり、許し難い愚行です
 
 前者であったとしても、既に今回の告発を受けてネット上では小泉政権や東電の責任を声高に問う言説が溢れかえっています。これらは原口議員の蒸気凝縮系に対する誤った認識から出たものであり、原口議員はデマを流した元凶としての責任を免れる事はできないでしょう。
 
 原口議員に対し、この告発が誤った物であることを認め、即座に撤回し関係者に謝罪する事を求めます。




Last updated 2011.06.08 00:58:23
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2011.05.08

反原発派の知的不誠実  (10) 

 ここ最近、反原発派を批判する日記を書いていたので、たぶん私の事を原発推進派だと思う方は多いと思います。
 まぁ、実際に推進賛成派なのですが。ただ、推進派と言っても「次世代のもっと安全なエネルギーが開発されるまでは、繋ぎとして原子力を利用する事に賛同する」と言った感じです。
 実際の所、世間で原発推進派と言われている人々や、それに賛同する私みたいな人間の多くは、太陽光や風力等の自然エネルギーや、核融合などの次世代エネルギーによって需要を賄う事ができるようになるまで、まだまだ時間がかかる事を認識しており、現行の主要なエネルギー源である火力や原子力は、それまでの役割だと言う考えでいる人が大半で、反原発派が妄想しているような、何もかも原発で賄うべきみたいな狂信的原発大好き人間と言うのは、まずいないと思います。と言うかいたら、私はその人のいう事には絶対に賛同しません。
 
 あとは、私はただ単に無茶苦茶な理屈にもならない理屈をつけて相手を攻撃するバカが大嫌いで、そんな感じのバカがあまりにも反原発派の中に多いので、そう言った連中の言う事は批判しておかなければならない、と思っています。
 
 
 と言う事で、今日も反原発派の無茶な主張を批判しておきたいと思います。
 
 京都大学原子炉実験所に小出裕章と言う学者がいます。見ての通り、原子力の専門家ですが、この人は反原発派で、原発を廃止するための研究を日々行っているそうです。そのための講演や著書も多く出しているので、共産党の吉井議員(大学時代に原子力を研究)に並ぶ、反原発派主張を技術面から支える専門家(笑)と言えるでしょう。
 
 ここで「専門家」と言う単語に「(笑)」を付けたのを見てわかると思いますが、私はこの人の主張を端から信じておりません。原子力に関してはまぁ知識があることを否定はしませんが、どっちかと言うとこの人は専門家の肩書きを悪用して、理屈にならない理屈をつけて原発やその推進派を攻撃するだけのデマゴギストだと考えています。
 
 何故そう思うのか。それは、反原発派が良く主張する「地球温暖化の原因は実は原発だ」と言う主張の元ネタがこの人だからです。
 小出氏の著書「隠される原子力・核の真実」に記載があり、良く反原発派に引用されるのがこの説です。
 
・原子力発電所は巨大な「海温め装置」である。原子炉の熱は3分の1が電力に転換されるだけで、残り3分の2は冷却水を通じて海に放出され、海水温を上昇させている。
・100万kw級の原子炉は1秒間に70トンの海水の温度を7度上昇させる。年間では1000億トンもの水が7度温められた状態で海に放出される。
・この膨大な温排水から放出される熱が、温暖化に寄与している事は間違いない。
・さらに、海水の温度が上昇すれば、海水に溶け込んでいた二酸化炭素が大気中に放出され、温暖化を加速させる。
・このように原発が温暖化に対応したクリーンエネルギーと言うのは嘘であり、むしろ温暖化の主犯である。


 原子炉は冷却水を循環させて常時冷却する必要がある装置ですが、原子炉を直接冷却すると共に、タービンを回して熱を電力に転換する「一次冷却水」とは別に、海や川から取水して、その一次冷却水をさらに冷却するのに使用する「二次冷却水」の二系統があります。
 この二次冷却水のほうは冷却終了後に海や川に戻されますが、それが取水時より高温になっているのは事実で、だいたい7度くらい上がっていると言うのも事実です。年間1000億トンの二次冷却水が海に放出されているのもまた事実。この点に間違いはありません。
 
 しかし、それが温暖化の主犯であると言う結論部分は、はっきり言えばデタラメです。こじつけにすらなっていません。それをちゃんと数字で表したいと思います。
 
 まず、1000億トンの二次冷却水を7度温める熱の総量を計算します。
 水の比熱(1グラムの物質の温度を1度上昇させるのに必要な熱量)は約4200ジュール(以下J)になります。ここから計算していくと……
 
 1トン=100万グラムなので、1トンの水を7度上昇させる熱量は、4200×7×1000000=29400000000J(294億J=29.4ギガJ)
 これを1000億倍すると、2.94×10^11GJとなります。なるほど、ものすごい莫大な数字に見えますね。
 しかし、地球温暖化に最も決定的な影響を与える熱源は、太陽エネルギーです。太陽エネルギーは一年間に熱換算で5.5×10^17GJに及び、これは原発が一年間に海に放出するエネルギーの約200万倍に達します。
 
 要するに、仮に原発から放出された熱が全て大気中に逃げたとしても、気温に与える影響は太陽の影響の200万分の1しかありません。普通はこんなものは誤差の範囲として無視されるレベルです。
 太陽エネルギーは周期的に0.1%程度変動する事が知られていますが、この0.1%の変動によって地球の気温が0.1~0.2度程度変動する事が確認されています。この0.1パーセントの変動分でさえ、原発の放出する余熱の2000倍に達するので、原発の余熱が気温に明確な影響を与え始めるには、あと10000基ほど原発を増設しなければならないでしょう。なお、日本に原発は今のところ55基しかありません。
 
 そもそも、原発がなかったとしても火力発電所だって余熱を冷却水と言う形で海に放出している事に変わりはありません。現在火力発電は全電力供給の6割を占めていますが、平均熱効率を50%と仮定しても、3割分の原発と同じだけの余熱を海に放出している計算になるはずです。
 しかし、「原発は海温め装置」だと批判する反原発派が火力発電を同じ理由で批判したと言う話は聞きません。結局、反原発と言うイデオロギーありきでものを語るから、こういうダブルスタンダードがまかり通るのでしょう。
 
 
 同じような理由から、海水に溶け込んでいる二酸化炭素が云々~と言う主張もデタラメです。
 まず、気象庁が定点観測している海水中の二酸化炭素濃度を確認してみましょう。
 
 二酸化炭素濃度の長期変化傾向(北西太平洋)
(気象庁 地球環境・海洋部)
 
 このサイトの表によると、海水中の二酸化炭素は年々増加傾向にあります。もし原発排水の影響で二酸化炭素が海水から放出されているなら、この数値は下がらなければならないはずです。しかし、現実は逆
 これだけでも十分小出氏の主張を粉砕するに十分ですが、念には念を入れて、1000億トンの原発排水から放出される二酸化炭素量を計算してみましょう。最も厳しい条件を設定して、温められた排水からは全ての二酸化炭素が大気中に逃げると仮定します。
 2010年には海水中の二酸化濃度は約340ppmとなっています。つまり、1リットルの海水中には0.034グラムの二酸化炭素が含まれているという事になります。
 二酸化炭素濃度340ppmの海水を1000億トン取水して、そこから全ての二酸化炭素が放出されたとすると、その総量は3億4000万トンになります。
 一方、日本の排出する二酸化炭素は年間12~13億トンなので、原発排水から放出される二酸化炭素量の最大値ならば25%分はあります。お、結構な量ですね。これなら気候変動の原因と……
 
 言えるわけがありませんね。そもそも「全ての二酸化炭素が逃げて、しかも再び海水中に戻らない」と言う想定自体、気象庁の観測データと矛盾するので正しくないことはわかりきってますし……結局、それくらい無理のある想定をしない限り、原発排水によって二酸化炭素が海から放出されて温暖化の原因(それも主犯格)になると言う説そのものが無理筋であると言う事にしかなりません。
 
 
 こうして数字で見てみるとわかるのですが、小出氏は「原子炉が温暖化に影響を与えている」とは言うのですが、それが具体的にどれだけの影響を地球にもたらしているのかについては全く触れていません。おそらく、小出氏は大きな数字を出してインパクトさえ与えれば、それを聞いた人が具体的な影響がどの程度か、考えたりはしないと思っているのでしょう。
 これは知的活動としては極めて不誠実な態度であるとしか言い様がありませんし、あまりにも聞き手の知性を馬鹿にしています。私が小出氏を「専門家(笑)」と書いて信じるに値しないと判断した理由が、これでわかっていただけるのではないかと思います。
 
 原子炉は確かに制御に失敗すれば危険です。しかし、嘘をつきデタラメを持って批判する事が許されるわけではありません。小出氏のような態度は、結局自分が批判している原発推進派よりも遥かにいい加減なものでしかなく、最終的には自分の身を滅ぼす事になりかねません。自分が批判される側に立った時、嘘やデタラメで中傷されて平気でいられるのでしょうか。
 そう言う想像力のない人間にものを語る資格があるとは私には思えません。


 


Last updated 2011.05.08 18:56:55
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2011.04.10

これをデマと言わずして何と……戯言かな?  (18) 

 前回の日記では広瀬隆と言う自称ジャーナリスト(笑)が反原発推進のために無茶な陰謀論を展開していたことを紹介しましたが、世の中にはもっと非常識な陰謀論を天災に乗じて広めようとするキ○ガイが存在していたりします。それが地震兵器の話。
 大災害がアメリカの兵器によって引き起こされていると言う陰謀論は結構昔から存在していて、楽天でもアレな事で有名な「ぼたんの花」がスマトラ島沖地震の津波はアメリカの開発した津波爆弾によって引き起こされたなどと主張していましたが、これはそれとは別口で、HAARP(ハープ)と言うアメリカの施設が実は地震兵器だと主張するものです。
 
 実際に「HAARP」でグーグル先生に聞いてみると、まぁ出るわ出るわの地震平気陰謀説のオンパレード。この説を提唱している人間の名前はと見てみると、ベンジャミン・フルフォードやリチャード・コシミズ、副島隆彦……911陰謀論でもおなじみの面々ですね。こいつら全員地震で死ねばよかったのに(本音)。
 
 とはいえ、911と違ってHAARP陰謀論に対してはツッコミを入れている人は少ないようです。まぁ、気持ちは分からないでもありません。あまりにも馬鹿馬鹿しくて相手する気にすらならないからでしょう。でも、私は物好きなのでHAARP陰謀論にツッコミを入れて見たいと思います。
 
 まず、HAARPとは何ぞや? と言う話から。これは「高周波活性オーロラ調査プログラム」の略で、アメリカがアラスカ州に建設、運用中の科学実験施設です。アラスカ大学、アメリカ海空軍、DARPA(国防高等研究計画局)の四者による共同開発・運用が行われており、大気圏の上層にある電波を反射する性質のある層、電離層に高出力で電波を当てて、電離層の挙動自体やそれは通信に与える影響を探る事を目的としています。

 まず、ここで軍やその関連組織が研究に参加している事が妄想を掻き立てる要因の一つなのでしょう。そのためか、HAARPは強力なビーム兵器だとか、マインドコントロール兵器だとか、とにかく陰謀論者は兵器扱いをせずにはいられないようです。
 しかも、米軍施設であるにも関わらず、何故かこのHAARPの運用の黒幕はロックフェラーやロスチャイルドなどの国際金融資本(笑)やユダヤ人脈だったりするとか……もはや意味がわかりません。自分たちの嫌いな組織をごたまぜに放り込んでいるだけみたいですね。

 ともあれ、今日の軍隊では通信は何よりも重視されるものの一つです。何しろ通信が出来なければ組織的に部隊を運用する事ができません。実際DARPAはインターネットの原型を作った組織だったりもします。軍が通信に関わる研究に参与しているのは、別におかしい事でもなんでもないのですけどね。
 
 実際、高層大気に地上から電波を当てるくらいでは大した事は起きないでしょう。太陽から放射される電磁波の方がよほど強度があり、人間の活動に影響を与える事があります。
 代表格としては、太陽からの紫外線やX線の影響で電離層が擾乱され、長距離通信が不可能となるデリンジャー現象。逆に電離層が普段は反射できない波長の電波を反射するようになり、突然遠くの電波が受信できるスポラディックE層現象なんてのもあります。
 
 しかし、陰謀論者はそう言う風には考えず、HAARPは兵器だと主張します。というか……反射衛星砲ばりのビーム兵器だとか、地震兵器だとか、気象兵器だとか、なんでもありの超兵器扱いする事で、自分たちの唱える陰謀論に対する信憑性が駄々下がりしているだけだと思うんですが、その辺を気にしないあたりは流石です。そのくらい知的に鈍感でなければ陰謀論者などやっていられません。
 
 とは言え、一応根拠らしきものを用意してくる程度には彼らも頭が回るようで、HAARPが何故地震兵器なのか、と言う主張の根拠として使われるのが、ロザリー・バーテル博士なる人物の著書「戦争は如何に地球を破壊するか――最新兵器と生命の惑星」の一節です。
 このロザリー・バーテルと言う人は反核運動家・平和運動家として高名な人物だそうで……の割に経歴がいまいち良くわからないのですが、計量生物学者で放射線が健康に与える影響についての研究家であるようです。その肩書きや経歴としては、トロント(カナダ)の公衆衛生問題国際研究所所長である事、五つの権威ある国際的な賞の受賞者である事などが紹介されています。で、HAARP陰謀説を唱える人たちはこう書きます。
 
「このバーテル博士は、ライト・ライブリフッド賞、世界連邦運動平和賞、国連環境計画グローバル賞を受賞している方ですので、「トンデモ科学者」ではありません」
 
 特にライト・ライブリフッド賞は「第二のノーベル賞」と言われるほど名誉ある賞だそうで、なるほどバーテル女史が優れた科学者である事は確かなのでしょう――計量生物学者としては。

 バーテル女史は電磁波の専門家でもなければ地球物理学の専門家でもありません。優れた科学者であっても、専門外の事ではとんでもないデンパを発信するなど良くあることです。と言う事で、バーテル女史の著書においてHAARPがどのように紹介されているのか、と言う部分を陰謀論者がどのように取り上げているか、見てみる事にします。
 
 
バーテル女史の著書の一説だと主張されている文章

「HAARPのような電離層ヒーターは、極超長波(ELF:extremely low frequency)を引き起こし、その極超長波は”電離層で反射される”形で、地上に跳ね返ってくる。この極超長波を、深層地中断層撮影法という方法 で、大地を貫通するように、向けることが可能である(引用者註――この極超長波は、性質として、大地や水中を通り抜ける。そのため現在では、鉱山での通信 の他、潜水艦との交信にも利用されています――)。

 この極超長波は確かに、火山や構造プレートを揺るがす能力を有しており、さらに気象にも影響をもたらす事ができる。たとえば地震は、電離層と相互作用する ことが、知られている。
深層地中探査(技術)は、自然作用のプロセスをコントロールし、操作しようとする軍の目的にとって、不可欠な一部であるように思われる。

(電離層などを操作することで)珍しい気象をつくりだす事のできる極超長波の可能性が、(我々に)恐怖心を起こさせる一方で、さらにまた、(HAARPに よる)ELF生成および(生成されたELFの地中への)伝達の際に見受けられる、大地と電離層との間の相互作用が、より直接的な気象効果を誘発する可能性 があることも、明らかとなっている」


 で、陰謀論者の皆さんが言うには、この極超長波が地面を透過する、と言う性質を利用して、電子レンジの原理で地下を加熱変性させて、地震を引き起こすのだそうです。

……すみません、笑い過ぎで頭痛がして来たので寝ていいですか?

 と言う冗談はさておき、これが何故笑えるのか、と言う理由を説明するために、電波の種類について書きましょう。
 電波は周波数によって幾つかの種類に分けられ、極超長波は周波数が3ヘルツから3キロヘルツの間の電波です。特にELF(極極極超長波)は3ヘルツから30ヘルツの間の領域の電波の事を指します。
 電波はその名の通り波動として伝達していく性質があり、その波長は電波の速度である、秒速約30万kmを周波数で割る事で求められます。つまり、3ヘルツから30ヘルツのELFの波長は、10万kmから1万kmと言う計算になります。
 で、この電波を地震の震源域に照射して地震を起こそうと……波長が地球の直径に匹敵するか凌駕するほどの電波なのですが、それで何故ピンポイントに震源を狙う事ができるのでしょうか? 
 
 また、電子レンジの原理云々に至ってはお茶を吹くレベルの話ではありません。
 電子レンジの加熱原理は「誘電加熱」と言いますが、単純に言うと電波で過熱する物体を分子レベルで揺さぶり、摩擦を発生させて熱を起こす、と言う感じです。本当はもうちょっと複雑なプロセスですが、わかりやすさを重視します。
 摩擦による加熱なので、揺さぶる回数が多いほど……電波の振動数自体が早ければ早いほど、熱を起こしやすくなります。つまり、極超長波のような振動数の少ない電波ではなく、マイクロ波帯などの秒間数万回以上も振動するような周波数の電波を使うほうが加熱には有利です。極超長波の電波では熱が起こせなくはないでしょうが、効率が悪すぎて熱は起きたそばから発散していきます。

 つまり、HAARP=地震兵器だと言い張る人たちは、極超長波とマイクロ波の違いが理解できず、電波だから性質等も一緒だろうと思っているのです。流石のアホっぷりですね。
 まぁ、元の文章であるバーテル女史の著書からして、明らかに極超長波の事を誤解しているようですが……そもそも地中通信や潜水艦との通信に使っているのは、極超長波でももう少し波長の短いULF帯(300~3000hz:波長1000~100km)ですし。一応ELF帯での通信施設がアメリカやロシアにはあるそうなのですが、長さ数十キロに及ぶアンテナが必要となり、しかも猛烈に電気を食います。数ワットの電波出力を得るために、百万ワット以上の電気を必要とするそうです。地中深く浸透して岩盤を過熱できるほどの極超長波を発生させようとしたら、果たして全世界の電気を全て使っても可能かどうか。
 仮に出来たとして、極超長波は震源域よりも遥かに波長が長く、その気になれば地球を覆えるくらいの波長がありますので、映画「2012」ばりに全世界で地震や火山噴火が発生して、地球は滅亡するでしょう。
 
 冗談はさておき、あの映画くらいトンデモな説……しかも電波の性質の不理解と言う唯一つの反論で吹っ飛ぶレベルの稚拙さな訳で、何故こんな説がそれなりに広まっているかと言うと、結局科学に対する無理解と、それ以上にアメリカや国際金融資本(笑)に対する無意味な悪意があるからでしょうね。
 
 実際「何故HAARPで日本を攻撃したのか」と言う理由付けについても……
 
・国際金融資本が金儲けをするため。
・アメリカが反米的な小沢一郎を攻撃するため。
・闇の支配者(誰だよ)が原発をテロで破壊し、その証拠を隠滅するため。
・逆に原発の破壊は地震兵器を使った証拠を隠すため。

 など、諸説入り乱れてカオス状態。結局、HAARPという小道具を知った連中が、好き勝手に自分が嫌いな相手にシャドーボクシングを繰り広げているだけです。
 この説が広まる事で地震への理解が阻害される……ほど出来のいい陰謀論ではないんですが、それでも何故日記を書いたかといえば、まぁ物好きだからと言うのもあるんですが、本音を言えば
 
「被災者の不幸をダシにして金儲けを企むクズは死ね」
 
 と言う事でお察しください。




Last updated 2011.04.10 23:17:54
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2011.03.27

これをデマと言わずして何と言う2  (8) 

 前回の日記で「本当に今回の地震は想定外の出来事だったのか」と言う考察をしましたが、その時に見つけたトンデモ記事について、見過ごしに出来ない愚劣極まりない事ばかり書いてあるので、ここにツッコミを書いておきます。
 
 広瀬隆と言う人がいます。「東京に原発を」などの著書で知られる、反原発を主な論調とするジャーナリストだそうですが、私に言わせればジャーナリスト(笑)ですね。先日の広河隆一氏といい、反原発を掲げるジャーナリストはこのようなロクデナシばかりなのでしょうか。
 と、思わず思ってしまったその酷い記事というのがこちら。
 
破局は避けられるか――福島原発事故の真相
(ダイヤモンド・オンライン:11年3月16日)

>2011年3月11日14時46分頃、北緯38.0度、東経142.9度の三陸沖、牡鹿半島東南東130km付近、震源深さ24kmで、マグニチュード 9.0の巨大地震が発生した。マグニチュードが当初8.4→次に8.8→最後に9.0に修正されてきたことが、疑わしい。原発事故が進んだために、「史上最大の地震」にしなければならない人間たちが数値を引き上げたのだと思う

……初っ端から陰謀論ですか。何か良くない事がおきると、すぐ誰かの陰謀だと主張する人間は、知性と理性の両方が足りてないと思いますが、こいつもそのクチですか。
 マグニチュードが修正されるなどごく普通にあることです。特に、マグニチュード8.5以上の超巨大地震の場合、解析に時間がかかるため、速報値と確定値が変わることはザラです。
 
 例えば、2004年のスマトラ島沖地震では、アメリカ地質調査所(UGSG)がまず速報値としてマグニチュード8.1と報じましたが、その後8.5、8.9、9.0と三回に渡って修正され、最終的に別の大学合同チームの計算によって9.3とされていたりします。が、今でもUGSGでは9.1を最終値として発表しています。計算した機関によってさえ、結果は異なり並列で公表されているのです。
 2010年に日本でも津波を観測したチリ地震も同様で、現在はマグニチュード8.8とされていますが、こちらも速報値は8.5で、その後8.6、8.8と何度かの修正が行われています
 
 今回の東北地方太平洋沖地震でも同じことです。特に今回の大地震では日本国内の震源に近い観測ネットワークが破壊されて正確なデータが集められず、計算により時間がかかりました。それを陰謀だと言ってしまう広瀬隆は、科学と言うものを全く理解していません
 
 
>地震による揺れは、宮城県栗原市築館(つきだて)で2933ガルを観測し、重力加速度の3倍である。しかし2008年の岩手・宮城内陸地震では、マグニチュード7.2で、岩手県一関市内の観測地点で上下動3866ガルを記録している。今回より大きい。

 どうやら、震度とマグニチュードの関係を全く理解していないようです。
 震度は文字通り地震の揺れの大きさ。マグニチュードは地震のエネルギーの大きさを指します。震度は震源からの距離、地質によっても大きく変動するため、ある地震のある地点の揺れが、別の地震の別の地点での揺れより大きかった、と言うような比較をしたところで、地震の大きさを捉える役には全く立ちません。
 この一文であげられている二つの地震と観測地点ですが、築館は宮城県の内陸部にあり、今回の地震の震源から200km近く離れています。一方、宮城・岩手内陸地震の際の一関市は、震源のほぼ直上にあり、例え地震の規模が小さくても大きく揺れるのは当然です。
 これも地震のイロハであり、小中学生が読む地震学の入門書にも書いてあります。こんな煽り文を書くのがジャーナリストの仕事なのでしょうか。だとすれば随分ボロい商売であると言わざるを得ませんね
 
 
>では、津波の脅威は、誰にも予測できなかったものなのか。日本の沿岸地震では、ほんの100年前ほどの1896年(明治29年)の明治三陸地震津波で、岩手県沿岸の綾里(りょうり)では38.2m、吉浜(よしはま)24.4m、田老(たろう)14.6mの津波高さが記録されている。

 明治三陸地震での津波記録は、波のエネルギーが集中し増幅されやすいリアス式海岸特有のものです。凹凸が少なく遠浅の海底が広がる仙台湾岸との地形の違いを無視して語るのは乱暴極まりない主張です。
 例えて言うなら、野球のピッチャーが投げたボールと4トントラック、どっちも時速100kmだから受け止められるはずだ、と言うくらいのアホな意見です。
 

>事故後に、「想定できなかった」ということは、専門家ではない、ということだ。

 専門家でもないのに上記のような暴論を吐くジャーナリスト(笑)の吐いて良い言葉ではありませんね。
「想定外」と「想定できなかった」は似て非なる概念です。「想定するだけ」なら、それこそ100mの津波が押し寄せてくることも「想定」自体は出来るでしょう。しかし、そんなのは現実性のない、無意味な想定です。専門家は過去の地震や津波災害の調査をして、存在した最大の被害を「想定できる上限」として仕事をするのです。


>炉心溶融(メルトダウン)は2800℃どころか、わずか600℃で起こる

……はぁ? 何言ってんだこのバカ。
 確かに、核燃料のうちプルトニウムは640℃ほどで融解します。ですが、一般的なウランでは1200℃に熱しないと融解しませんし、被覆のジルコニウムは1800℃までは耐えます。しかも、この数字はあくまで「純粋な」それぞれの物質のもの。実際の核燃料はより高い温度に耐えるためにセラミックで焼き固めてあり、2000℃を越えても融解などしません。600℃などありえない数字です。プルトニウム単体の融点より低温なのですから
 広瀬隆はこの数字のソースをNHKで放送されたフランス製ドキュメント「核の警鐘~問われる原発の安全性」だと言っていますが、明らかに怪しい数字なのに問い合わせなどしなかったのでしょうか? とりあえず、ちゃんと問い合わせた方がいるので、その人(女川町議会議員:高野博氏)のブログの記事のURLを貼っておきます。
 
女川原発で プルサーマルを考える 4

 高野氏が問い合わせた結果、NHKの誤訳で、
「それまで理論的に計算されていた値よりおよそ600度も低い温度で」
 と訳すべき所を
「それまで予測されていたより、はるかに低いおよそ摂氏600度
 としていたことが判明しています。つまり、実際には2200℃でメルトダウンが起こるという結果が出ていたのを、間違って600℃と紹介していたわけですね。
 はた迷惑な誤訳もあったものですが、それを裏取りもせず、自分の主張(反原発)のために垂れ流す広瀬隆は、ジャーナリストの資格などないただの煽り屋です。こういう連中がデマを垂れ流すのはいい加減取り締まるべきだと思います。
 
 
>NHKなどは、御用学者を動員して「史上空前のマグニチュード9.0」を強調しているが、建物の崩壊状況を見て分る通り、実際の揺れは、兵庫県南部地震(阪神大震災)のほうがはるかに強烈だった。この地震被害の原因は、揺れではなく、ほとんどが津波であった。
 
 阪神大震災の被災地に原発はなかったので、この文章そのものに全く意味がありません。一体広瀬隆は何を書きたいのでしょうか。まだ新潟県中越地震と柏崎刈羽原発について触れるほうがマシです。反原発ではない私にだってそのくらいの事は思いつきます。
 
 それにしても酷い文章です。こんな駄文書きが反原発のカリスマ(笑)として信望を集めているのだとすれば、反対の立場に立っている私でさえ、日本の反原子力運動の先行きは暗いな、とぜつぼーてきな気分にならざるを得ません(棒読み)




Last updated 2011.03.28 00:22:53
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