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テーマ:がんとつきあう(104)
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『最凶の乳がん患者』に批判の対象として出てくる柳原和子氏。
もちろん知らない人だが、初発の卵管がんが大腸や肝臓に転移して書いた「100万回の永訣」は、がんの恐さ、しつこさ、すさまじさなどを全部あわせたがんのありのままを浮き彫りにする。 柳原氏は、がんを何とかからだから駆逐しようと、多くの医師に相談し、さまざまな意見を聞き、医師が提示した選択肢の中から自分で確信を持てるものを選んでがんとの戦いを続けるのだが、局地戦で勝利しても、またしばらくすると勢いを盛り返してあらたな局地戦をしなければならない。 戦場となる体は、がんに痛めつけられ、そのがんに対抗する手術や抗がん剤やラジオ波にも痛めつけられて次第に衰弱してゆく。 57歳という若さでなくなるのだが、がんを治療しようとして講じたいろいろな手段は、結局柳原氏の命を数年延ばしただけである。 延びた数年も24時間がんとの戦いに費やされており、ひとつのことに集中すると言う意味では充実していたかもしれないが、健康ならばその時間を別のことに使えたのだと思うと、一体何のための延命だったのかと考えさせられる。 しかし、本人はここで少しでも命が永らえば、万が一逆転ホームランが打てるかもしれないと考えてその延命措置にすがってゆく。 これは、ギャンブルで負けが込んできても、人は最後まで大逆転をあきらめていないことや、サラリーマンがやめる瞬間までひそかに出世を夢見ていることなどと同じ感覚だろうと思う。 治療が奏功して状態が改善されて短時間だが希望が出てくる様子や、悔しさを隠してあくまでも冷静に医師と話し合う場面など、いずれ僕自身がそうなったとき、こんな風にしっかりできるだろうかと思わせる。 たしかに『最凶』夫人が言うように、医師が多少は特別扱いしたとしても、特別扱いでもなんでもいいから命を救ってくれる人を求めて必死になって彷徨する姿を見ると、がん患者のストレートな願いが胸にずしんと伝わってくる。 おそらく健康な方が読んでもあまりぴんとこないところが多いと思う。しかしがん患者にとってこの本はこたえる。 これだけのことが自分にできるかどうかを思うとちょっと絶望的だし、これだけやってもがんは再発し転移して命を奪うという厳然たる事実を突きつけられて、呆然とするばかりだ。 減胃庵では、がんに関する情報を集めたホームページ「cancerwatch」を開設しています。ご関心のある方は一度ご覧ください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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